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ばかって言う君が好き。  作者: 下駄
twoyear
17/38

Aug


「今年は一緒に祝おうって言ってたのにね……。」


「うーん、まあしょうがないよ。」

 私の絞り出すような声とは反対に、彼の声にはまだ余裕があるみたいだった。


今日も彼と寝る前にテレビ電話をしていた。

彼の誕生日だった。


「そりゃそうだけど――。」

 彼があまり気にしていないのは確かに助かる。

でもやっぱり、大好きな人の誕生日は直接祝いたいわけで……。


「ほら、笑って。倫子は笑顔の方が似合うよ。」

浮かない顔の私を励ます彼。


「……そうだね。」

彼の為に笑わなきゃと、私は笑った。



「次会った時で、本当にいいの?

プレゼント。」


「あーうん、いいよいいよ!送るのも大変だから。」


「そっか。」

ベッドに三角座りしていた私は、

薄い黄緑色の花模様の掛け布団で顔を少し隠した。


「あ、また倫子顔隠すー!」


「だって、恥ずかしいじゃん!」

 布団をもっとかけて、顔を隠す私。

目から下は布団で隠れて、私の目しか見えない。


「はあ~?じゃぁ俺も隠すよ、顔。」

 そう言って、彼はまだ布団の上ではなく、

パソコンラックの椅子に腰かけていたので、手で顔を隠す。


「もう!直人は別に隠さなくていいから。」


「だったら、倫子も顔隠さないで。」 

笑いながらそんなやりとり。



「もう結構テレビ電話してるのにね。

やっぱり恥ずかしくて顔隠しちゃうや」

私は布団をさげる。


「倫子はいつも隠すからなあ、



……すっぴん可愛いのに。」


意地悪な彼の表情。


「ばか。」

そういいながらも、少し喜んでしまう私。


そんな私を彼は笑って、かけていたメガネを外した。

彼も布団に入るらしい。



「…あ、直人。」


「ん……?」

 メガネをかけていない彼、何度か見たことはあるけれど、

画面を通してでは初めてのことで、ドキドキが増してしまう。


「ごめん、ちょっと忙しくなりそうだから、

連絡遅れるかもしれない。」


「うん、この時期は忙しいもんね、倫子。」

彼の眉が下がる。



「……ごめんね、お盆は実家に帰れそう?」


「頑張れば、、また弟にいじめられなきゃ。

兄貴も帰ってくるみたいだし。」

いつも弟を煙たがる彼だけれど、

なんだかんだで嬉しそうな彼を見るとやっぱり可愛い存在みたい。


「あれ?

直人、高校生と大学生の弟さんだけじゃなかったの?」


「弟2人と、兄貴1人だよ。言ってるとばかり思ってたわ、

倫子はお姉さんいるんだよね?」


「うん、似てないけどね。」

 私は幼い顔なのだが、老け顔の姉は20歳の時に30歳に見られたという経歴を持つ。


「プロポーズされたらしくて、結婚式挙げるんだって、今年。」

 私はふはぁとあくびを漏らす。


「え!そうなんだ……。

俺とお姉さん同い年だよね。」


「うん、そうだね、幸せそうだったよ。」

そういいながら、

私は先日姉が結婚の報告をしてきた電話を思い出し笑ってしまう。


「結婚式、直人も都合よければどうぞだって。」

お姉ちゃんにも直接会わせたことはないが、

直人のことを伝えていた。



「えー行きたいなあ。」


「また日程決まったら、早めに教えるね。」


「うん、よろしく。」




そこで一区切りついて、私達は少し黙る。

次は何話そうかなと考えながら、

画面の右上に出ている時計をふと見るともうすでに12時18分と示されていた。


まだ12時を回っていないと思っていた私は、

時間の速さに驚きつつも、今が楽しい時であることをそこで改めて確認してしまう。



まだしていたいテレビ電話。

沈黙でも辛くない。

むしろ、この沈黙が心地いい。

ずっとこうして、彼の顔を見ていたい。


でもそんな気持ちとは裏腹に

眠気は収まらなくて、もう一度あくびを漏らしてしまう。


彼も少しだけ目がトロン。



「直人、そろそろ寝る?」

彼の身を案じてそう聞いた私。


「…えー、まだ話そうよ。」


「そうだね」と言われると思っていたので、少しの驚き。


「ならもうちょっと話そっか。」

私ならそう返事するはずなのに、


彼の意地悪なところが少し似てきたのか、

「何?寂しいの?」



なんて……言ってみる。




「倫子にからかわれるなんて。」

彼のそんな声に思わず笑ってしまう。


「誰かさんのいつものお返し。」

彼の笑顔を見ながら、


どうやら眠気よりも彼への気持ちがまさってしまった様で、

私は彼ともう少し電話を続けるのだった。



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