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ばかって言う君が好き。  作者: 下駄
oneyear
11/38

Feb


 その日、私は朝からケーキを作っていた。

ちょっと大人な味のチョコレートケーキ。


「お昼からの天気もこのまま夜にかけて、雪が続きそうです。


さて、今日はバレンタインですが、前川キャスター誰かに貰う予定はありますか?」


「いえ、残念ながら……」


 テレビの中もバレンタイン一色のようで、本当に残念そうな顔をしたキャスターの顔を見て、

もらえるといいですね、なんて思いつつ、テレビの電源を落とす。



部屋の電気を切って、カーテンを閉めて、

よし!

完璧にラッピングし終えたそれをもって、私は鍵を閉めた。



今から、直人のおうちへ行くよー


すぐに既読がつく。


は~い。待ってまーす!チョコレート♪


「ばーか」

私は笑いながらそうつぶやいた。



ピンポーン。

彼の家まで電車で2駅。


彼の家に何回か分からなくなるぐらい遊びに来たけれど、


やっぱり彼が出てくるまで、”あれ”をしてしまう。


「今日は、子供は遊んでますか?

倫子さん?」


「みんなチョコレートを貰いにいってるようです、直人さん♪」



二人で笑いながら、


「やっぱり今日も塀から下の公園覗いてるんだから。」

とからかわれた。



ローテーブルに座って、何も言わなくても、お茶を出してくれる彼。


「バレンタインを授けます。」

近くに寄ってきた彼に私はえっへんという口調で声をかける。


「ははー!」

わざとらしく、頭を垂れる直人。



「うわあ、うまそう!!包丁持ってくるわ!」

 すぐにラッピングを丁寧に開けた直人がうれしそうに、ケーキを切ってくれる。



「おいしいー!」

 そういって笑う彼を見て、

誰かに料理を作ることってこんなにも嬉しいものなんだと知った。


「うん、うまく焼けてる。よかったー。」

 直人も私もぺろっとケーキを食べてしまう。


「倫子……」

 直人がフォークをお皿に置く。


「ん?」

ちょっと真剣な顔の直人に、私も向かい合わせになって、フォークを置く。



「……これ、誕生日プレゼント。」

「え!?」

彼から手渡されたそれは、

両手で抱えるほどの大きさの赤い袋に入った、プレゼントだった。


「17日誕生日だよね?

当日会えるかわかんないからさ、今渡そうと思って……。」


「あ、あけていい!?」

コクコクとうなずく彼。


結ばれていた白いリボンをとくと、桃色のマフラーが出てきた。


「わあ!!ありがとう!!!

すっごく嬉しい!!」

 私はマフラーをさっそく首にまわしてみる。


「似合ってる!?」


「うん、似合ってる、可愛い。」

照れくさそうに笑う直人。


「え、でも誕生日教えてなかったのに……」


「LINEのID、

0217って入ってるから、誕生日かなあ~って鎌かけちゃった。」


「ありがとう……。

直人の誕生日、夜ご飯一緒に食べただけで、何も私しなかったのにごめんね。」


直人の誕生日は夏。

水族館へ出かけた数週間後、付き合うことになった私たち。


誕生日を彼に尋ねるほどの仲になった頃、

既に誕生日の数日前になってしまっていたのだった。


「いいよ、いいよ。

倫子が仕事で忙しい時期でもあったし。

男はあんま誕生日とか気にしないしね。ご飯でも十分嬉しかったよ、俺。」


「でも……」

私はプレゼントしてくれたマフラーを外して、丁寧にたたむ。


「……じゃぁ今年の夏は期待してますね。」


「ん?」

 私は顔をあげて、首をかしげる。


「今年の誕生日は一日中、一緒に過ごしてください」

 彼は笑って、私の頭をわしわしと撫でる。



彼がくれたプレゼント、桃色のマフラー。


それだけじゃなくって、

今年も彼と一緒なんだーって安心もプレゼントしてくれたようだった。




でも、……ここからが彼の意地悪なとこ。


「倫子がようやく24になってくれたし、

また2歳差ですね。

若者♪」

 さっきの笑顔と裏腹な意地悪な顔。


「……もうケーキあげない、残りは持って帰る。」

箱に残りのケーキをしまうと彼にとられないよう、腕一杯に持ち上げる。


「だー!

冗談だってば、ごめんってば!」


「26歳うるさいよ!」


「年寄りはまだ元気なんですー!」

 彼の小さな反抗。


でもそんな彼が可愛くて。

ケーキを机に再びおいて、私は直人の肩に体重を預ける。


「あ、ケーキ返してくれるの?」

急に近寄って肩にもたれかかった私に触れず、そう言う彼。


「もうそう言って、

照れくささ隠そうとしなくていいから。」


私は笑って彼の手を握る。



「ばれちゃった……。」

彼もぎゅっと私の手を握る。




「直人と付き合えて、本当私幸せ。

いつもありがとう。」


照れてるのか、何も言わない彼。



「ずっとこうしてたい……。」

彼の甘いにおいにますます溺れる私。





「…………うん。」

 彼はぎゅっと強く、また手を握り返した。




その時、もし彼の顔を見ていたら、何か変わっただろうか。

肩にもたれかかっていた私は見えなかった。


彼がどんな表情をしていたのかを。



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