閑話 あの日の勇者一行 sideレオ
物語の都合上、レオの台詞を変えてしまいました。ご了承ください。
「お前、もうパーティー抜けろよ。」
ある日、俺はパーティーメンバーのユウにそう言った。
珍しいから連れて来たが、よく考えたら俺に付与魔術なんて必要ねえからな。そんなもんなくても魔王くらい俺にかかれば楽勝だ。
それに、今日新しく黒魔術師のエリーゼが加わる事もユウを抜けさせる原因だった。パーティーってのは、4人で組むもんだからだ。理由は、ユーリア曰く、回復魔術の効果が及ぶのが4人までだかららしい。
俺の言葉を聞いたユウは、意外にもそれをすんなりと承諾し、俺たちと別れた。余裕ぶったその態度が気に入らなかったが、まあ順調に行ったから良しとしよう。俺は寛大だからな。
その後、新メンバーのエリーゼらと共に宿を取り、明日の早朝にこの街を出ることを決めた。
◆◆
「レオ、もう朝だぞ。はやく朝食をとれ。」
早朝、聖騎士で俺の幼馴染のユーリアに起こされて目が覚めた。
「今日も綺麗だなユーリア。流石は俺の女だ。」
ユーリアは赤みがかった黒髪の、俺にふさわしい可憐な女だ。
「ななな、何を言ってるんだ!そんな事を言っている暇があったらさっさと支度しろ!」
そう言うと、顔を真っ赤にしたユーリアは足早に部屋を出て行った。毎晩裸を見せ合っているってのに、初心なやつだ。まあそこもまたいいんだが。
宿の一階の食堂に行くと、白魔術師でもう1人の幼馴染であるノーラと、新メンバーのエリーゼが朝食を食べ始めたところだった。
ノーラは金髪に黒目で、いつも間延びした様に話す。エリーゼは暗めの茶髪で、とんがり帽子をかぶった魔女ルックの少女だ。
「おはよーレオ。」
眠そうにノーラが言った。いつもの事だ。
対してエリーゼは、そっぽを向いた。昨晩無理に迫ったのを怒っているのだろう。まあいい。どうせそのうち俺に惚れて自分から抱いてくれとせがんで来るだろう。
俺はノーラとエリーゼと共に朝食をとった。ユーリアは俺たちより早く起きて先に朝食を済ませていた様だが、それもいつもの事だ。
全員が身支度を整えた後、俺たちはロートの街から出発した。
しばらく歩くと、ノーラが、
「そーいえばさー、エリーゼってどのくらい強いのー?」
と言った。
確かに、彼女をパーティーに加えたのはたまたま街で見かけて、気に入ったからだった。黒魔術師だってのは聞いてたが、どの程度の実力かはしらない。戦闘は俺がいれば十分だが、最低限自分の身が守れるくらいじゃねえとどうしようもない。
「そうだな。おい、エリーゼ。昨日の事は謝るからよ、なんか魔術やってみてくれよ。」
エリーゼは俺を睨むと、息を吐いていった。
「はあ……わかったわ。見てなさい、これが私の力よ!」
そう言うとエリーゼは詠唱を始めた。
「紅蓮の業火よ、相手を焼き尽くせ!"フレアキャノン"!!」
そうして放たれた上級魔術に分類される巨大な火球は、近くにあった森にあたり、その一帯を焦土と化した。
「……おい。」
「あああ!やばっ!天よ、大地を濡らせ!"マジックレイン"!」
更に燃え広がろうとした炎を、エリーゼは水の上級魔術で消火した。
ふう。
一安心すると、みんな一斉にジト目でエリーゼを見た。
「な、なによ!?ちゃんと消火したんだからいいじゃない!それよりどうだったのよ、私の魔術は!」
「まあ上級魔術を3節の詠唱で発動できるなら問題ないな。」
ため息をついた後、ユーリアが言った。
「ああ、やるじゃねえか。」
俺ほどじゃねえがな。
「でしょ!?私を誰だと思ってるの!」
「えー?エリーゼでしょー?」
「う……そ、そうよ!」
そんな馬鹿な会話を終えた後、何事もなく次の街へ向かおうとした俺たちは、走ってきたロートの街の門番に事情を聞かれ、魔術の試し打ちだと答えた。
勇者パーティーの手柄が「勇者が〜した」と伝わるのは良いが、悪い事まで俺のせいにされちゃたまったもんじゃない。
次回投稿は明日の0時です。