かわいい。
近くの飲食店に入った俺たちは、早速話し合いを始めた。
「えっと、じゃあ早速話を始めるね。まず最初に、ハンナさんの職業は?」
「あたしは拳闘士だよ。こう見えて力には自信があるんだ!」
ハンナさんはそう言って拳を突き出して見せた。かわいい。
今まで機会が無かったから説明してなかったけど、実はこの世界、生まれた時既に職業が決まっている。
天職といって、天が定めた職業になるらしい。これは別に、剣士になったから冒険者にならなければならないとかそういう事でなく、あくまで身体能力や武器の適正などに関係するものだ。だから職業は剣士だけど料理人をしてるなんて事もある。ややこしいね。
ハンナさんが言った拳闘士と言うのは、その名の通り己の拳を武器に闘う、筋力と敏捷が上がりやすい職業だ。
「拳闘士って事は前衛だね。俺は魔術士だからバランスがいいね。」
「ユウくんって魔術師だったんだ!黒魔術師?白魔術師?」
まあ確かに、魔術師って言ったら普通はそのどっちかだと思うよね。俺の言い方が悪かった。
「いや、俺は付与魔術師だよ。」
「付与…魔術師?聞いたことあるような、ないような?」
あらら、もはや存在すら認知されてないみたいだ。俺一応、元勇者一行なんだけどなあ。
「付与魔術師って言うのは、味方の能力を上げたり、敵の能力を下げたりする魔術を使う職業だよ。結構珍しいらしいし、知らないのも無理ないかな。」
事実、俺がこの世界に来て一年、俺以外の付与魔術師を見たことも聞いたこともない。
「そうなんだ。なんか凄そうだね!」
まあ、彼女も理解してくれたみたいだし(?)、良しとしよう。
「じゃあ、パーティーになった事だし、俺のステータス見せておくね。」
説明してない事がもう一つ。この世界に住む人なら誰もが"ステータス"と念じる事でステータスウィンドを開く事ができる。しかも、自分の任意で見せる相手を選べるという便利機能つきだ。
因みに、俺のステータスはこんな感じ。
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ユウ・カンノ:18歳 付与魔術師
筋力:E 物理耐久:D
魔法耐久:C 魔力:S
敏捷:D 幸運:B
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ステータスはS、A、Bと始まって最低がG。
実は俺、魔力がめっちゃ高い。転生させてくれた神様も俺の魔力には驚いていた。
「ええっ!?ユウくん魔力えむぐっ!」
予想できた反応だったので落ち着いてハンナさんの口を塞いだ。
「しー。ハンナさん、これは秘密ね。」
ステータスはあまりおおっぴらに公表するものでもないから、周りの人に聞かれない方がいい。
「うん。ごめんね、驚いちゃって。あ、あたしも見せるね!」
そう言ってハンナさんもステータスを見せてくれた。
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ハンナ・プルーク:18歳 拳闘士
筋力:B 物理耐久:C
魔法耐久:D 魔力:F
敏捷:C 幸運:C
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え?この子ステータス高くない?
俺は結構戦闘経験を経た上でのあのステータスだ。それに対しハンナさんはまだほとんどまともな戦闘なんてした事もないだろう。なんてこった。
「ハ、ハンナさん、ステータス高いね。」
「そう?小さい頃から大工のお父さんを手伝ってたからかな?」
なるほど。ステータスは筋トレによって上がる。きっと重い木などを運んだりして上がったんだろう。まあそれにしたって高いけど。元々才能があるんだろうな。
と、そこでハンナさんが話しかけてきた。
「ていうかさユウくん。」
「なにかな?」
「パーティー組んだのにさん付けはよそよそしいよ。これからは呼び捨てにする事!」
呼び捨て…ですか。ちょっとDTの俺にはハードル高いっすね。でも、ちゃん付けもなんか違うよなあ。
「女の子を呼び捨ては慣れてないんだけど……分かったよハンナ。じゃあ俺の事もユウでよろしく。」
「うん!改めてよろしくね、ユウ!」
その後、早速明日ゴブリン討伐クエストに行く事になり、集合時間や用意するものを決めたり、雑談をしたりした。
今日は久々の休日を満喫出来たり、突然パーティーを組む事になった美少女と親睦を深めたり、有意義な1日だった。
明日はゴブリン討伐だ。頑張ろう!
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