お前と俺
「先輩、先輩を理解しているのは私だけです」
いつも無口な後輩は突然そんなことを言った。
「何だよ突然。黙ってやる事やれよ」
俺は後輩の事を一切見ずに大量の宿題を消化していた。
「私は先輩と違って遅刻常習犯では無いのでやる事なんてありません」
「なら部活をしろ、部活を」
なぜか今日はよく喋る後輩。
「部活って言ったって本を読むだけじゃ無いですか。それはそうと話をそらそうとしないでください先輩」
「そんな気は一切ない」
「で、何?」
俺はようやく宿題を消化し、紅茶を飲みながら顔を上げた。
上げなければよかった。
「先輩、今日は告白されましたね」
「私を見てくれないのに」
目にハイライトの無い後輩がこちらを見ていた。
「き、今日はよく喋るな。それにいつも見てるだろ?」
「いえ、先輩はいつも本を読んでいて私を見ていません」
「私は先輩を見ているんですよ?」
「なのになんで先輩は私を見てくれないんですか?」
後輩は机にそって近寄ってきた。
俺の目を一切ない逸らさずにゆっくりと。
俺は動けずにいた。
「先輩、好きです。」
後輩は目と鼻の先でそういった。
「まずは会話のキャッチボールをしようぜ?会話になってねーから。な?」
「まずは俺からな。なんで告白されたの知ってんだよ」
俺は怖くなって話をそらす事にした。
「さっきも言ったように私は先輩を理解しているんですよ。大好きです」
「答えになってねーよ」
「俺が聞きたいのは方法だから。理由じゃないから」
「・・・休み時間のたびに先輩の後を付けてました」
「怖っ!」
え?何それ怖っ。
「今のは傷つきました」
「自分のプライベートは大切にな?」
後輩の将来が心配になってきた。
「先輩愛してます。好きです」
「今聞いた」
あれ?
「なのに先輩は私を見てくれません」
「そうらしいな」
頭がボーッとして、
「だから私決めたんです」
「何を・・・」
バタンッ!!
何が起きた?何で倒れてんだ俺?
「先輩に私を見てもらおうって」
「少しの間お休みなさい。先輩」
後輩は可愛い笑顔でそう言った
そして俺は気を失った。
ーーー
・・・ん?
「ここは」ジャラ
「何だこれ?」
俺の足には鎖が付いていた。
それを理解した時に部室での事を思い出し、周り見渡した
「ひっ」
そこは部屋だった。
女の子らしい部屋のはずだった。
だが部屋の隅々にまで俺の写真が貼ってある部屋。
「あ、起きたんですか。おはようございます先輩」
いつも無口な後輩は笑顔で挨拶してきた。
「おはよう。彩」
俺は考えるのを止めた。
「これからはずっと私を見ていてくださいねここから出られないんですから」
「迎えなんて来ませんよ。先輩の親御さんには了解を取ってあるんで」
「え?違いますよ。結婚したんですよ私たち」
「ずっと一緒ですよ。昭仁さん」