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ミュンヘン編 第6話

こんなに長くする予定じゃなかったんだ……。なぜ予定の二倍になったのか……?


楽しんでいただけたら幸いです。

それでは、どうぞ!

 ソーフィヤとヒムラーに出会ってから一月が経った。


 あれから二人とはよく会うようになった。正確に言えばソーフィヤが会いに来て、ヒムラーに会いに行っている。


 ヒムラーは史実通りに身体が弱く、あまり外に出て遊ぶことは無い。しかしそれを良しとしない男たちがいた。ベネディクトとヤーコブである!

 ベネディクトは、実家が農家なので外での作業も遊びにも慣れているし、ヤーコブも同様であり、二人はヒムラーに「外に出ないから身体が弱くなるんだ!だから今日からお前は外で遊べ!俺たちが遊び相手だ!」などと言いほぼ毎日ヒムラーの家を訪れ外へと連れだしている。

 「病は気から」ということわざを知っているアドルフではあったが、精神論をごり押しするベネディクトたちはそんなことは知らずほぼ毎日ヒムラーをあちこちに連れ回している。


 そしてもう一人の人物であるソーフィヤはと言うと………






 いつもアドルフとエーリカが勉強をするために訪れている図書館のすぐ近くに公園がある。


「ここは、こう書くのよ!」

「なるほど!こうか!」


 いっつもベネディクトの隣りに居る!

 居るのはいいがべったりとくっついている!毎日!恋人のように!

 その光景をエーリカと共に見せつけられているアドルフは無性にイライラしている。理由は分からないが腹が立ち、大量の砂糖を水分を取らず食し胸焼けする気分になる!そして仏頂面となっている。

 エーリカも同様で、最初は「いいな~!羨ましいな~!」などと言ってはいたが最近はアドルフとそっくりな表情となり、凄く不機嫌なことは伝わってくる。


「なあ……エーリカ……」

「なあに……アドルフ……」

「あの二人を見ていると……何か………イライラしてくるんだけど………何でだろうか……?」

「私も………イライラしてくる………何でだろうね………」


 二人はベンチに座りながら、仲良くロシア語の勉強しているベネディクトとソーフィヤを見ていた。そして視線を外し、ヒムラーの居る方向を見た。



「ほら~待て待て~!」

「ヒイィィイ!?」


 無数の青年達に追われているヒムラーがいた。

 この青年達はこの一ヶ月の間に知り合った友人とその知り合いである。


「……何だか可哀想になってきた」

「あっ、こんにちは~ヒトラーさん、ハイゼンベルクさん」


 アドルフが一人呟くと後ろから二人を呼ぶ声が聞こえてきた。振り向くと、笑いながら一人の青年が歩み寄ってきた。


「こんにちはベッケンバウアーさん」

「フランツでいいですよ。毎回言ってますけどそんな畏まらなくても……」

「いいえ。うちのベネディクトがご迷惑をお掛けしましたから…」

「それも毎回言ってますよ………もうクルトもハンスもエドガーもクラウスも気にしてませんから大丈夫ですよ」


 苦笑いしながらアドルフの言葉を受ける青年は、フランツ・ベッケンバウアー。そう一ヶ月ほど前に初対面でいきなりソーフィヤから変態扱いされた可哀想な青年である。そしてアドルフが持っている日本刀とヤーコブが持っているククリナイフをお土産として持って帰ってきたアロイスが旅の時にお世話になった貿易商人の名前はフリッツ・ベッケンバウアー。

 つまりフランツは彼の息子である。

 そして今まさにヒムラーを追いかけ回している青年たちがベネディクトに殴られた、クルト・マイズナー、エドガー・ベルツ、クラウス・ヒンケルの三人だった。

 ハンス・ノイバートに関しては今はここにはいない。ちなみにヤーコブもここにはいない。似た者同士が揃っていないことは別に珍しくない光景になった。

 フォルカーもここにはいないが、彼はいつものように時計屋に行き修行をしているので気にしない。



 一体どうやって彼らと出会ったのか?

 それは今から二週間ほど前のことだった。












 アドルフとエーリカは二人で歩いていた。いつもならば勉強道具を手に持っているが今日はバスケットを持ち歩いていた。


「急に買い物がしたいなんてどうしたんだ?」


 アドルフがエーリカに問うと、少し頬を赤くしながら答えた。


「急に料理が作りたくなったんだから仕方がないじゃない」

「そ、そっか……」


 そんなエーリカを見てアドルフも頬を赤くしてぎこちなく答えた。


 そしてそんな二人を後ろから監視、もとい見守っている影があった。


「あれで付き合ってないの?」

「付き合ってないぞ」

「付き合ってないね」

「付き合っていないな」


 ソーフィヤの問いにベネディクトがフォルカーがヤーコブが同じ答えを出した。


「ウソでしょ……何?二人ともお互い好きって気づいてないの?」

「気づいていてああなってる」


 ベネディクトの答えを聞いたソーフィヤは呆れたような顔になった。


「どんだけ恥ずかしいのよ……」

「長く隣にいすぎたら、ああなるんじゃないか?」

「それか告白して断られたら今までの関係が壊れちゃうかもしてない……とか考えてるんじゃ?」

「まあ、はっきり分かっていることは……」


 そこで男三人は息をそろえて言った。


『見ててイラつくからさっさと告れ』


 そして何事もなかったかのように監視もとい観察に戻った。




「で、何作りたいんだ?」

「ん~~~やっぱりハンブルクステーキかな?もう一回作りたい!今度は焦がさないわよ!」

「じゃあ、まずは肉だな。あと別に焦がしてもいいんだぞ?二回目なんだから失敗したっていいさ」

「私はやだの!」


 二人はまず肉屋に向かった。ミュンヘン中心にある市場の肉屋へと。

 

 そしてそこで出会った。


「「すみません。ひき肉をください……えっ?」」


 俺は右を見ると、一人の青年が口を開けてポカンとした表情でこちらを見ていた。恐らく俺も口を開け同じ顔になっているだろう。全く同じ言葉を発したのだから、こんな偶然というか、息の合った行為を目の当たりにした肉屋の店主は大きな声で笑った。エーリカのクスクスと小さな笑い声も聞こえてくる。


「………お先にどうぞ」


 何か……すごく恥ずかしい……


「……はっ!いえいえお構いなく。どうぞお先に」

「いえいえ!そちらが……」

「いえいえ!そちらこそ……」


 ……ものすんごく恥ずかしい!


 その後、エーリカがさっさと店主に人数分頼んだことで、長い譲り合いは終わった。


 買い物が終了し、帰ろうとした時、再び青年と遭遇したアドルフ。そして青年もこちらを見つけたのか立ち止まる。


「何か……すみませんでした」

「いえいえ、こちらこそすみませんでした」


 何故か謝罪から二人の会話が始まった。立ち話は疲れるとエーリカが言ったので近くにあったベンチに三人は腰を下ろした。


「ええっと………俺はアドルフ・ヒトラーと言います」

「私はエーリカ・フォン・ハイゼンベルクよ。よろしく」

「僕はフランツ・ベッケンバウアーです。よろしくお願いしますヒトラーさん、ハイゼンベルクさん」


 お互い名前の自己紹介が終わったところで、意外にもフランツから二人に質問した。


「お二人は、旅行でミュンヘンに来たんですか?それとも最近になって引っ越しか何かでミュンヘンに来たんですか?」

「あれ?何で分かるんですか?俺たちがミュンヘン以外の所から来たこと?」


 アドルフは驚いていたがエーリカはそうでもないらしい。


「まずハイゼンベルクさんは、言葉にバイエルン特有の訛りが無いんですよ。ベルリンに言ったらよく聞く言葉なのでプロイセンの方ですか?」

「ええそうよ」

「で、ヒトラーさんは、言葉は非常に似ているんですけど、雰囲気がミュンヘンじゃないな~って思いまして……。どこだったかな…………あ、ウィーンに居ました?」

「何で分かった!?」

「いや、身体から出ている空気や雰囲気がウィーンの空気とそっくりだと思いまして。……すみません失礼なことを聞いて……」


 質問しておいて、何故か落ち込むフランツに困惑していると、アドルフはある事を思い出した。


「あの~、名字ベッケンバウアーですよね?」

「そうですけど……」

「貿易商のフリッツ・ベッケンバウアーという方をご存知ですか?

「たしかに父の仕事は貿易業ですし、その名前は僕の父の名前ですけど……それが何か?」


 その答えにアドルフは驚き、立ち上がりフランツに礼をした。


「うちの兄が大変お世話になりました!」


 大声で、そして腰を九十度に綺麗に曲げる見事なお辞儀だった。






 ベネディクトたちは非常に不味い事になったと確信していた。

 アドルフとエーリカが和気あいあいと買い物をしているまでは良かった。だが、乱入者が現れ、面白い光景が、非常に不味い状況になった。

 主にベネディクトとソーフィヤにとって。


「へ、変態がなぜここに……!?」

「知っているのかソーフィヤ!?」

「あいつは私を襲おうとした変態たちのリーダーよ……!」

「と言うことは……あのバンダナ野郎の仲間か!?」


 ベネディクトは驚愕すると共に、周りを見渡し、バンダナ野郎ことクルトが居ないことを確認すると改めてアドルフ達を見た。

 こちらには気がついていない。

 そしてアドルフが見事なお辞儀をしていた。


「………き、今日は、この辺にして帰ろう!」

「そ、そうね!そうしましょう!」

「あれ?誰か近づいていくよ?」


 その光景を見た瞬間に回れ右をし、逃げようとする二人だったがフォルカーの声に立ち止まり振り向いた。

 三人の青年がアドルフ達に近づいて行っている。それだけなら良いが、残念なことに見覚えがある顔であった。 


「げぇ!?バンダナ!」






 フランツは最初、何故アドルフが頭を下げているのか分からなかったが、話を聞いて納得した。


「頭を上げて下さいヒトラーさん。僕は何もしていませんし、父も頭を下げられるほどのことはしていませんよ」

「いや……しかし……高価な物を頂いたわけですし……」

「父はいつもそういう人で、気に入った人間に色々お土産を持たるんですよ。貰う方の事を何も考えずに大量に持たせてしまうので、こちらが謝罪したいくらいですよ」

「はあ……」


 困り顔でそう話すフランツに対し、何を言っていいのか分からずにいるアドルフ、微妙な空気が漂い始めたが、そこに元気な声が響きわたった。


「おーい!フランツ何やってるんだ!!」


 アドルフ、エーリカ、フランツが声のした方を見ると、頭に赤いバンダナをした青年とその後ろに二人の青年がいた。


「あ、三人ともおはようー」

「おう、おはよう!……で、誰?この人ら?」

「この人たちはね―――」


 クルトの疑問にフランツが出会った経緯と現在の状況を説明すると、三人は笑った。


「なんだ!そんな事で頭下げてたのか!気にすることないって!俺たちも貰ってるから!な!?あと俺はクルト・マイズナーよろしく!」

「フランツの言う通りで、いっつも大量のお土産を持ってくるので正直困ってます。エドガー・ベルツですよろしく」

「クルトが言う様に毎回貰っているので、何かもう……いいかなって?クラウス・ヒンケルですよろしく」

「あ、こちらこそよろしく。アドルフ・ヒトラーです」


 そう言って三人から率先して差し出された手を握り返すアドルフだった。







「何か仲良くなってるし!?」

「どどどうしよ……!?」

「いや、そんなに慌てなくても……」


 アドルフとクルト達が握手をしている衝撃的な光景をまざまざと見せつけられたベネディクトとソーフィヤは、慌てていたがフォルカーにとってはなぜ二人が慌てているのかが疑問であり冷静であった。


「くそ!ソーフィヤ!ヤーコブ!逃げるぞ!」


 そう後ろに振り向きながらベネディクトは言ったがそこにはソーフィヤしかいなかった。


「あれ?ヤーコブは?」

「あれ?いつの間にかいなくなってる……」

「ヤーコブ君ならあそこにいるけど」


 フォルカーの視線をたどって見ると……


「………」

「………」


 無言で睨み合っているヤーコブとハンス・ノイバートが路上のど真ん中に立っていた。

 アドルフたちからばっちり見える位置に。


「何やってるんだァァァ!?あいつ何やてるんだよ!?何で?何で?喧嘩しようとしてるんだよ!?やるなら違う場所でやってくれよぉぉぉ!?」

「落ち着いて!ベネディクト!まだアドルフもエーリカも、ヤーコブには気づいてないわ!」





「あ、ヤーコブ。何やってるんだ?そんなところで?」




「あ、気づかれた」

「いやぁぁぁぁぁぁ!アドルフに怒られたくないぃぃぃぃぃぃ!部屋から追い出されて野宿になるぅぅぅ!お仕置きされるぅぅぅ!」


 現実はベネディクトにとって非常だった。

 ベネディクトが右往左往していたら、アドルフたちが近づいてきて、そしてクルト、エドガー、クラウスに気づかれた。借りを返してやる、と口にはしていないが笑顔がそう言っている。フランツもソーフィヤの事に気が付いたがこちらも笑顔だが、この笑顔は安心したという笑みで、変態と呼ばれながらも心配していたようだ。


「………何だこの状況」

「説明しようヒトラー!俺とこいつはこの前殴り合った仲なのだ!」

「俺はいきなり殴られた」

「俺は蹴り飛ばされた」

「なるほど…………」


 そうクルト、エドガー、クラウスの話を聞いた後、アドルフはベネディクトを見た。

 そしてベネディクトは、まるで動かなく、否、動けなくなった。まるで蛇に睨まれた蛙のように。

 それほど恐ろしい顔になっていた。ベネディクトは知らないだろうが、今のアドルフの顔は、般若の顔に非常に似ていた。


「………さてベネディクト」

「は、はひ!」

「オレが今言いたい事は、分かるな?」

「はい!分かります!」


 直立不動となりながら答えるベネディクトに、アドルフは言った。


「謝罪」

「すいませんでしたぁぁぁぁ!」

「オレにじゃない。マイズナーたちに向かって謝罪」


 そう言われたベネディクトは嫌々ながら、クルト達に向かって頭を下げた。


「すみませんでした」

「うちのベネディクトがご迷惑をおかけ致しました。本当に申し訳ありませんでした!」


 その隣で地面に頭を付けて謝罪の言葉を述べるアドルフがいた。











「あの時は驚いたよ……いきなり頭を地面に付けてるんだもん」

「いや、ベネディクトはオレの最初の友達ですし、あいつの性格をよく知っているのでオレが土に頭付けて謝らないといけないな~っと思いまして……」

「友達思いだね~、でもあんまりあの謝り方はどうかと思うよ?」

「でもそのおかげか、今はこうやって仲良く過ごせているので、オレとしてはやってよかったと思ってます」

「そうだね~」


 そう言うとアドルフとフランツの二人は、走り回る青年多数と少年一人に目を向けた。

 ヒムラーは泣き目になっているが、それ以外は笑顔なので良しとした。


「ヒムラー頑張れ!終われば何か食わせてやるぞ!」

「は、はいぃ……!」


 何とも力のない声に思わず二人は笑ってしまった。





 今日のミュンヘンも平和だった。









 しかし彼らを見つめる複数の視線が合った。


「フッフッフッ………フランツよ……そうやって笑っていられるのも今のうちだ!」


 複数の青年を代表して発言した青年はマイヤーと言う。




 そしてそれらを監視している二人がいた。


「何だ?あいつらは?」

「気にするな。あいつらは愛すべき馬鹿共さ」


 ヤーコブとハンスがパンをかじりながら見ていた。






 明日のミュンヘンも平和だろう。







艦これイベ……辛いなぁ……辛いよ……。


励みになるので、ご意見ご感想ご批判等を首を長くしてお待ちしております。お暇があればまた読んでみてください。

読んで頂きありがとうございました!

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