ミュンヘン編 第4話
本当に大変長らくお待たせしました。
こんな長い期間待たせてしまい誠に申し訳ありません。
楽しんでいただけたら幸いです。
それでは、どうぞ!
アドルフたちは近くにあったカフェに入っていた。
入った理由はベネディクトとヤーコブからあの惨状がなぜ起きたのかを問いただすためだったが………
「なるほど……とりあえずベネディクトはその殴った相手に会ったら謝れよ」
「なんで!?」
アドルフの言葉に理解できていない顔をするベネディクト、その顔よ横で見ていたヤーコブは呆れていた。
「いきなり後ろから襲うのはどうかと思うぞ?それにちゃんと相手の話を聞け。お前は昔から話を聞かないからな~」
「そうなのかヤーコブ?」
ベネディクトの振りにヤーコブは黙って頷いた。
「マジかよ……」
「ま、そう言うことだ」
肩を落として落ち込むベネディクトにアドルフは肩にポンと手を置いて言った。
「それにしても……こんなことがあるんだな」
「こんなこと?あぁ、そうだなまさかエーリカとソーフィヤが知り合いなんてな」
「ほんとに驚いたよな!」
アドルフとベネディクト、ヤーコブが横を向くと和気あいあいとしているエーリカとソーフィヤがいた。
エーリカとソーフィヤの関係は、父親たちが知り合いで年に数回会っている。二人はお互いに娘の自慢話を毎回するため『自分の娘の方が可愛い!』というくだらない喧嘩の結果エーリカとソーフィヤが出会った。二人はすぐに仲良くなり少し年が離れた姉妹のようになっていた。
エーリカが9歳、ソーフィヤが3歳の時からの付き合いで今年で三年目になる。
ちなみにソーフィヤのフルネームは、ソーフィヤ・ヴォールギナという。
「それはそうと何でソーフィヤちゃんは一人だったんだろうな…?貴族なのに……」
「そう言えばそうだな……」
アドルフとヤーコブが考えている中、ベネディクトが言った。
「面倒だから本人に聞こうぜ!ソーフィヤ!一つ聞いていいか?」
「なに?ベネディクト?」
「何で一人でいたんだ?」
「えっ……えっと………その……耳貸して…」
「え?あ、こうか?」
ベネディクトが耳を近づけるとソーフィヤは顔を赤らめながらアドルフたちには聞き取れない小さな声で言った。
その答えを聞いたベネディクトは納得した表情で何度か頷き、アドルフの方へ顔を向けた。
「アドルフ、耳貸せ」
「ほい」
ベネディクトはアドルフの耳に向かってそっと言った。
「………迷子だってよ」
ベネディクトの言葉を聞いたアドルフは、ベネディクトから顔を離し、上を向き天井を見た。
「………そんなんだろうと思ったよ」
「………俺も何となくそんな気はしてた」
アドルフはチラリと横目でエーリカと楽しそうに会話をしているソーフィヤを見た。それに気が付いたベネディクトも、真似て横目でソーフィヤを見た。
「エーリカと初めて会った時も迷子だったよな」
「そうだな」
「………なんで貴族なのに迷子になるのかねぇ~?」
「俺が知るわけないだろ」
そこでこの話題の会話は終わり、次の話題に移った。
次の話題は、今日はどこで何をしていたのかと言う話だ。アドルフはエーリカと一緒に図書館へ行き勉強していたことを話すと、ベネディクトはニヤニヤとした顔で話を聞いていた。
この時、アドルフは無性にベネディクトの顔面を殴り飛ばしたい衝動に駆られたが、そこは我慢した。
次にベネディクトの話を聞いたが、要約すると『ヤーコブと一緒に色々見て、色々食べ歩きした』という話だった。
そして食べ歩きしているとソーフィヤが襲われているように見えて喧嘩になった……
「なぜ殴るんだよ……」
「だから襲われてるように見えたんだって……」
「とりあえず謝れよ。いいな?」
「わかったよ……」
アドルフに改めて謝るように言われると、口を尖らせながらも渋々謝る事を決めたベネディクトだった。
その後一行は、一緒に来ているというソーフィヤの父親を捜しに街に繰り出した。
ソーフィヤの話によれば、父親は相当目立つのですぐにわかるそうだ。
……どんな人なんだ?
「そう言えばフォルカーはどうした?」
「知り合いの時計屋に行くって言ってたろ」
「そんな事言ってたっけ?」
「お前は本当に人の話を聞いていないんだな……」
ベネディクトの言葉に呆れながら歩いていると、見覚えのある人影が見えてきた。
「噂をすればなんとやらだな」
そう呟いたアドルフの目にはフォルカーと一人の眼鏡を掛けた少年が写っていた。
しかし眼鏡を掛けた少年は歩いているのではなく、フォルカーにおんぶされていた。
「あいつ何やってるんだ?」
「とりあえず、本人に聞いてみるか。お~い!フォルカー!」
アドルフは手を振りながらフォルカーを呼ぶと、それに気づいたフォルカーがこちらに近づいてきた。
「どうしたの皆?こんなところで?」
「それはこっちの台詞だ。時計屋に行ったんじゃないのか?」
「今日は挨拶だけだから、早めに帰ってきたんだよ。アドルフ君たちは?」
「色々あったんだよ……特にベネディクトのせいで……」
そう少し遠い目になりながらも、アドルフは、ベネディクトが起こした出来事を話し、ソーフィヤについても話した。
それを聞いた後、フォルカーはアドルフに哀れみに満ちた表情になっていた。
「それは……ご愁傷さまだったね……」
「本当だよ………。ところでフォルカー、お前がおんぶしているその子は?」
アドルフは先程から気になっている、吐息を立てながらフォルカーの背中で寝ている少年について触れた。
「ああ、この子はね、僕が用事を終わらした後に帰り道で出会ったんだ。会ったときにはもう転んだらしくて足を痛めてたんだ」
「だからおんぶしてるのか…」
「そう言うこと。で今は病院に向かっている途中だよ」
「なるほど」
「あ、あの……」
アドルフとフォルカーが話していると、フォルカーの背中で寝ていた少年が動き出した。話し声がうるさくて目覚めてしまったのだろう。
「おはよう。よく寝れた?」
「は、はい。よく寝れました。ありがとうございますブンゲルトさん」
「もう少しで病院に着くからね」
「ご迷惑を申し訳ありません……」
フォルカーに対して、申し訳なさそうに答える少年を見て、歳の割にはしっかりしている子だな、とアドルフは思った。その後、少年がこちらを見ていたので自分の自己紹介を始めた。
「オレはフォルカーの友達のアドルフ・ヒトラーだ。よろしく少年」
「よろしくお願いしますヒトラーさん。僕は……」
少年が笑顔で自分の名を言った。
「ハインリヒ・ルイトポルト・ヒムラーです」
アドルフは少年が発した言葉に言葉を失った。
オレの目の前にいるこの眼鏡を掛けた少年が、あのハインリヒ・ルイトポルト・ヒムラーなのか?国家社会主義ドイツ労働者党の親衛隊全国指導者として親衛隊を率いて、ゲルマン民族とアーリア人種の優越性を信じ、それに敵対するユダヤ人などの民族を500万人以上の人間を大量虐殺するホロコーストを実行し、最後には青酸カリの入ったカプセルを砕き自決した………。
しかし史実ではその様なことを起こした人物だが、ここは史実では無く、自分も含めてまだ何も起こしていない………。そう心の中で言い聞かせていると、幸い顔に出ることはなく動揺は気づかれなかった。
「俺はベネディクト・アーノルト、よろしくなヒムラー!」
「ヤーコブ・ビーガー。よろしく」
「エーリカ・フォン・ハイゼンベルクよ。よろしくね!ヒムラーくん」
「ソーフィヤ・ヴォールギナ。よろしく」
他の四人もヒムラーに自己紹介をし終えたが四人の反応は様々で、ベネディクトは面白そうな玩具を見つけたかのような笑み、ヤーコブは表情は笑っていないが、雰囲気は固くない。エーリカは、万人受けするであろう満面の笑み、対してソーフィヤは無表情で明らかに警戒している目つきをしている。
そんな四人の反応を見ていたヒムラーは
「皆さん、よろしくお願いします」
と、真面目かつ丁寧な口調で言葉を返した。
(やっぱり真面目で礼儀正しいな……。歴史史料や戦後書かれた研究書にも、そう書かれてはいたけど……きっととても優しい子なんだろうな……)
「あ、お父様!」
アドルフはヒムラーを見ながらそう考えていたが、ソーフィヤの声によって中止させられた。
「お父様……と言うことは見つかったみたいだな」
「ソーフィヤ、どれがお前の親父なんだ?」
「あの大きくて背の高い人よ!」
ベネディクトの質問に笑顔で答えたソーフィヤは、父親のいる方向へ指を指した。ヒムラーを含めて全員が指が指された方へ顔を向けると………
白髪でオールバックの髪型、2メートル近くは有ろうかという巨体を包んでいる軍服、鷹のような鋭い目つき、そして顔に大きな傷跡がある人物がこちらに向かって歩みよってきていた。しかも笑顔で。
オレは知っている。あの笑顔が誰に向けられた物なのか、恐らくベネディクトもフォルカーもヤーコブも分かるだろう………。あの笑顔は、親バカが自分の娘を見つけたときの笑顔だ!
「我が愛しのソーフィヤよ!無事だったか!」
ソーフィヤの父親が現れた。
アドルフたちの一日は、まだ終わらない。
励みになるので、ご意見ご感想ご批判等を首を長くしてお待ちしております。
これからも鈍い更新ではありますが続けていくので、お暇があればまた読んでみてください。
読んで頂きありがとうございました!




