ミュンヘン編 第2話
ハーメルンをやってました……すみません……
アドルフたちがドイツ人となって数十分たったが一行はある場所へ歩いて向かっていた。
ある場所とは、これからアドルフたちが生活する部屋の事だかアドルフはとても不安になっていた。
何故ならそこは、エーリカが選んだ部屋なのだから。
エーリカは少し……いや全く世間知らずではないがアドルフたちと金銭感覚が違う。まるで違う。最初に出会った頃に比べれば遥かにマシになってはいるが、それでも庶民と貴族の金銭感覚は違う。
もしすごく家賃が高い場所だったらどうしよう……
そんなことを考えながらアドルフは歩いていた。
「着いたわよ!ここがアドルフたちの住むところよ!」
アドルフが見上げた先には、ごく普通の鉄筋コンクリート造りのアパートが立っていた。
「あれ、普通?」
「普通だな……」
「普通に見えるな……」
「普通だね……」
『ホッ……』
アドルフ、ベネディクト、ヤーコブ、フォルカーの四人は、皆同じような反応をして安心したように息を吐いた。三人ともアドルフと同じことを心配していたらしい。
「えっ?どうしたの皆、ため息なんかついて?」
「いやぁ~……少し安心しただけだよ」
「?」
アドルフの答えに首を傾げるエーリカであった。
アパートの中に入り、借りる予定の部屋まで案内された。
「へぇ~~、案外広いな!」
ベネディクトが部屋の中に入り、見渡しながら言った。
部屋はアドルフ、ベネディクト、ヤーコブ、フォルカーの四人でクラスには十分な広さがあり、小さいながらもキッチンまで付いていた。
「四人で暮らすには十分な広さだな」
「そうだね。でも問題は……」
「……家賃の値段だ」
ベネディクトが一人ではしゃいでいるのを見ながらヤーコブ、フォルカー、アドルフがここに住むに当たって最も重要な問題について話していた。
「絶対高いよなここ」
「殿もそう思うか……」
「中心街に近い、四人でも暮らせる広さ、キッチン付き……どっからどう見ても高いって」
「僕もそう思うな……」
三人は部屋の隅で肩を組み小さな円陣になりながらエーリカには聞こえない大きさで話をしていた。
「どうする?家賃が高かったら借りれないぞ?」
「どうするって……エーリカさんには申し訳ないけど断るしかないよ」
「その場合、今から部屋を探すわけだな」
「場合によっては今日は野宿になるな」
「そこはホテルに泊まろうよ……」
その後、この部屋の家賃が払えないぐらい高かったら別の部屋を探すことと、その際今日はホテルに泊まることが決まった。
アドルフが意を決してエーリカに質問した。
「エーリカ、一つ聞いていいか?」
「なに?」
「この部屋の家賃ていくら?」
「えぇ~っと……この金額よ」
「………三人とも集合!」
エーリカから金額が書かれた紙を受け取り見たアドルフは、ベネディクト、ヤーコブ、フォルカーを集め、再び円陣を組んだ。
そして金額が書かれた紙を三人に見せた。
「これを見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく……安いね」
「この部屋でこの値段は安いだろ!俺でもわかるぞ!」
「……殿、俺はこの部屋を借りてもいいと思うがどうする?」
「オレもこの部屋で良いと思う、フォルカーとベネディクトはどう思う?」
「僕もこの部屋で良いと思うよ」
「俺はこの部屋が気に入ったぞ!だからここにしよう!」
「決まりだな!」
アドルフはそう言うと円陣から抜けてエーリカの前に立った。
「エーリカ!」
「な、なに?」
いきなり呼ばれたエーリカの顔は若干赤くなっているがそんなことには、気づかずアドルフはエーリカの目を見つめながら言った。
「この部屋、借りていい?」
「………いいわよ!」
大声で返事を返すエーリカだった。
こうしてアドルフたちの『ドイツ人』となって初めての一日は終わった。
翌日、四人はそれぞれ別行動をとった。
フォルカーは父親の知り合いの時計職人の元へ行き、ベネディクトはミュンヘンの街中を探検しに、ヤーコブはベネディクトに付き合い、
そしてアドルフは………
図書館へ向かっていた。
エーリカと一緒に。
アドルフとエーリカの二人は図書館へ向かって歩いていた。
ちなみにミーナさんたちも付いて着ているが二人の視界に入らないようにしながら付いて着ている、もしくは監視をしている。
「なあ、エーリカ」
「なにアドルフ」
「オレに付いて着ても暇なだけだぞ?」
「い、いいじゃない別に……!それともアドルフは私が居るのは嫌?」
「嫌じゃないけど……つまんないよ」
「それでもいいの!」
そんな会話をしながら二人は図書館へ向かっていた。
図書館に着くとアドルフはすぐに本を探し始めた。その姿をエーリカはじっと近くで見ていた。
しばらくしてアドルフは10冊ほどの歴史書とロシア語、英語、イタリア語の本を一冊ずつ選び読み始めた。
その光景をアドルフの隣に座り見つめているエーリカ。
「ねえアドルフ?」
「どうしたエーリカ?」
「アドルフは歴史が好きだから歴史の本を読むのはわかるけど、何でロシア語や英語、イタリア語の本を読んでるの?」
「いつか必要になると思ってね。今のうちに勉強してるんだよ」
「必要な時って?」
首を傾げながらエーリカは聞き、アドルフは本を読みながら答えた。
「エーリカには、オレの夢を言ってなかったね」
「アドルフの夢?どんな人になりたいの?」
「どんな人になりたいとかじゃないんだ………ただ変えたいだけなんだ」
「変えたいって……なにを変えたいの?」
アドルフは本を読むのをいったん止めて、エーリカに顔を向け言った。
「”世界”を変えたい。オレの自身の力で」
その答えを聞いてエーリカは固まってしまった。
それでもアドルフは話を続けた。
「オレはウィーンである光景を見た。ホームレスの人達を見た。その人たちは雨風も凌げないところに住んでいた。みんな肌が白くなかった。そう有色人種だったんだ。その時、オレは怒りがわき上がってきたんだ。あの人達だって同じ人間なのに何であんな仕打ちを受けなければならない?宗教が違うから?文化が違うから?肌の色が違うから?白人より劣る人種だから?………そんなくだらない理由で差別や迫害をしている。………肌が白かろうが白くなかろうが同じ人間なんだからそんなことしない方が良い。だがの多くの白人はそれをやらないし、やろうとも思わない。だからそんなことが当たり前に行われている世の中を………世界を変えたいんだ。……エーリカ聞いてる?」
「……えっ!?あ、うん!聞いてるわよ!アタシもアドルフの夢実現の為に協力するわ!」
「……そっか、ありがとう」
絶対聞いてなかったなっと思ったアドルフだった。
その後は本を棚に戻し、ミュンヘンの街中を回りながら帰ることになった。
何事もなく帰れるはずだった……
「何やってるんだよぉぉぉお!?」
「えぇ……」
アドルフは叫んだ。
エーリカは驚いた。
二人が目にした光景とは……
ベネディクトとヤーコブと小さな女の子の周りに20人ほどの青年たちが倒れているしている光景だった。
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