ドイツへ!!
今回はドイツへの繋ぎなので短いです。
1907年一月二十八日深夜 リンツ
母クララの葬儀も終わり少し落ち着いたころ……
「アドルフ、母さんが遺産の事なんだけど……」
「オレは要らないよ」
アドルフは大きな鞄に荷物を詰め込みながら、アロイス、アンゲラの三人で遺産についての話をしていた。
「本当に要らないの?」
「こんな時にドイツに行くんだ……これ以上迷惑かけれないよ」
「でも……いろいろとお金使うでしょ?」
「大丈夫さ……ウィーンで十分稼いだし、オレの分の遺産はエドムントとパウラの為に使ってくれ」
心配そうに見るアンゲラだったがアロイスが止めた。
「アンゲラ、もういいよ。アドルフ自身が決めたことなんだから………アドルフ、本当にいいんだね?」
アロイスが改めてアドルフに聞いた。
「いいよ。兄さんに姉さん………大丈夫だから」
アドルフの答えを聞いたアロイスは一瞬悲しげな顔になったがすぐに明るい口調で言った。
「そっか……手紙ぐらい書いてね」
「それくらい書くよ。余裕ができたら仕送りするから…………よし、これで全部入れたな」
アドルフは荷物をカバンに詰め終わると厚手の冬用コートを着て手袋をはき、外に出る準備をし始めた。
「エドとパウラは起こさなくていいの?」
「……起こしたら絶対オレのことを止めようとするから」
「そう……」
アドルフが準備を終えると家の外に出た。
外は雪が静かに降っており、一面銀世界となっていた。
「じゃあ……行ってきます」
そう告げてアドルフは歩きだした。
「「いってらっしゃい」」
アロイスとアンゲラはアドルフの無事を祈るように言った。
アドルフは待ち合わせ場所となっている駅へと向かった。
「遅かったなアドルフ?」
「お前が速いだけだよ……」
そこに居たのはベネディクトだけだった。
「ヤーコブとフォルカーは?」
「まだ来てないな」
「そっか……」
そこからしばらく沈黙が続いた。
「ベネディクト、本当にいいのか?いくら親父さんと仲が悪くたって親子だろ?」
「いいんだよ。これは俺の人生だ!親父が勘当しようが縁を切ろうが関係ないさ!『ドイツ人になったら親子の縁を切る』なんて言ってたがドイツ人になるのは俺の勝手だろ?何で親父が決めるんだよ!」
「それが親ってもんなんだよ……」
「親ねえ………そういうもんなのか?」
「そういうもんだよ……きっと親になれば分かるさ……」
そこからまた沈黙が続きヤーコブとフォルカーが来るまで続いた。
「遅れてしまって申し訳ない、殿、ベネディクト」
「二人とも遅れてごめんね……」
「そんなに待ってないからいいよ、二人とも。それより親の許可は下りたの?」
アドルフが質問すると二人は答えた。
「『頑張って来い』と言われた」
「僕の親は『いいよ』って言ってくれたよ」
「そうか……みんな準備は出来てるな!?」
アドルフが大きな声で三人に聞いた。
「できてるぞ!」
「忘れ物は無い!」
「大丈夫だよ」
その答えを聞いてアドルフはうなずき、言った。
「それじゃあ行くか……!」
「いざ!ドイツへ!!」
ウィーン編 完
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