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ウィーン編 第15話

長いです……何か7000文字近くありますが飽きずに読んでください。お願いします!


テーブルに料理を置き終え出迎えの準備ができ、外で待っていたアドルフとエーリカはあることについて話をしていた。


「ねぇ……アドルフ?」

「なんだエーリカ?」

「いつ、ドイツに住むの?」

「いつ……二年後ぐらいかな?」

「それじゃあ遅ーーい!来年にしよ?」

「それじゃあ早すぎるし……ベネディクトとヤーコブの意見も聞きたいし……」

「あれ?フォルカーは?」

「オレたちが行くならあいつも連れて行く」


フォルカーに意見を聞くという選択肢は無いらしい。


「それに………」


そう呟きアドルフは険しい顔になった。


「母さんに言ってない」

「えっ……言ってないの?」

「だから今日、母さんにこのことを言おうかな~……って考えてる」

「わかったわ!アタシもお母さんの説得に協力する!」


満面の笑みでエーリカは答えたがアドルフは首を横に振った。


「いやオレだけで説得するよ。あとエーリカ関係なくね?」

「アドルフがドイツに住むならアタシにも関係あるの!」

「そうなの?」

「そうなの!」


そう断言するエーリカにアドルフは少し疑問に思いつつ納得しながらベネディクトたちの帰りを待っていた。





数分後、駅の方向から手を振りながらやってくる一団が見えてきた。


「お~い!アドルフ~!連れてきたぞ~!」

「アロイスさん是非、殿に話ってやってください」

「アドルフは元気かしら~?」

「さっさとあの二人くっつけばいいのに……」


ベネディクトが手を振りながら、ヤーコブはアロイスと話しながら、クララとアンゲラが独り言を言いながら先頭を歩いておりその後ろにフォルカー、エドムント、パウラが歩いていた。


「なんか……しばらく会っていないから懐かしいな……」

「そうね……」

「けどエーリカ……痩せたよな……母さん……」

「……そうね」


遠目からでも分かるぐらいにクララが痩せていることに気が付いた二人はクララのことが心配になった。

そう心配していたらいつの間にかベネディクトたちが目の前に迫ってきていたのでアドルフは気持ちを切り替えた。


「久しぶりだね母さん、少し痩せた?」

「久しぶりね、アドルフ、エーリカちゃんとの関係はどう?」


アドルフは少し心配そうな目をしながらも笑顔で尋ね、クララは口元は笑っているが目が笑っていないままその質問を無視しつつ質問し返した。


「エーリカとの関係……?う~ん……仲はいいと思うよ?今日だって一緒に料理作ったし……」

「そうなのエーリカちゃん?」


いきなり尋ねられたエーリカは少し慌てながらも答えた。


「は、はい!今日はアドルフと一緒に料理を作りました!」

「何を作ったの?」

「それは……」

「それは見てからのお楽しみだよ、母さん」

「あら♪それは楽しみね~♪」


クララはそう言うと改めてアドルフと目を会わせ笑いかけた。


「大きくなったわね……アドルフ……本当、子供の成長は早いわね……」

「まあ……成長期だから……」


少し恥ずかしそうに答えたアドルフだった。






アパートの中は狭いのでパーティーは外ですることになっていた。

テーブルには料理を乗せた皿が並べられていた。


「すご~い!!これ全部アドルフ兄ちゃんが作ったの?」

「いやエド、オレはハンバーグしか作ってないから他はベネディクトたちが作ったんだ。だからオレはすごくないよ」

「そうなの?じゃあこの黒焦げは何?」

「それはベネディクトが作ったものだからベネディクトに聞いてきなさい」

「わかった!パウラ行こ!」

「うん!」


エドムントはパウラを連れてヤーコブと話をしながら何故かひたすらザワークラウトを食べ続けているベネディクトのもとへ走っていった。


「すっかりお兄ちゃんになったね」

「そう言うアロイス兄さんはすっかり逞しくなったね……というか逞しくなりすぎ……」

「母さんにもそう言われたよ……」


少し困った顔をしながらアロイスは笑った。


アロイスの身長は180㎝ほどで体もガッチリとした体でラグビー選手のような身体となっていた。

さらに白かった肌も以前と比べて黒くなっており笑うと白い歯がとても目立っていた。


「でもアロイス兄さんがくれた刀はやっぱり日本刀だったんだね……本物を手に入れたなんて思わなかったな……ありがとうアロイス兄さん」

「喜んでもらえて嬉しいよ」

「でもどうやって手に入れたの?」

「う~ん……実は日本には行ってないんだ……」

「えっ……!?じゃあどうやって手に入れたの……?」

「話せば長くなるけど……」


アロイスは語りだした。

 旅に出てからの10年間で経験した出来事をザックリと話した。

まずバルカン半島にあるボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォに向かった。

 カトリック教徒であるアロイスは異教のことが知りたかったようでキリスト教、イスラム教、ギリシャ正教、ユダヤ教など多くの宗教と文化、人種が入り混じったサラエヴォを選んだ。(サラエヴォしか知らなかった)

 サラエヴォで異文化に触れ衝撃を受けたアロイスはその中でも特に印象に残ったイスラム教について詳しく知りたくなり中東へ向かうことにした。

 ちょうどオスマントルコ経由でインドに向かうドイツ出身のユダヤ人の実業家に出会い、荷物持ちとして雇ってもらい一緒に向かうことになった。


中東ではモスクなどのイスラム建築、イスラム教の教え、文化、人柄など多くのことを学んだ。

 本来はここでユダヤ人の実業家と別れる予定だったが実業家の方から『一緒にインドに行かないか?』というお誘いがあったのでインドに行くことになった。


 インドではヒンデゥー教徒とイスラム教徒の対立やカースト制度、何より植民地の実態を知ることになりこの出来事はアロイスに大きな印象を与えた。この時アロイスはふと思い出した。弟のアドルフが行ってみたいと何度も言っていた国……日本の存在を……!


 暫くして実業家に日本に行きたいことを伝えると実業家は『これから清に行くから一緒に来ないか?時間が出来たら日本にも行けるだろう』と言い再び実業家との旅が始まった。


 インドから船で清の山東半島にある青島に到着した。そこはヨーロッパのような街並みでアロイスに故郷に帰りたいという思いを芽生えさせた。しかし日本に行きたいという気持ちもあったので『故郷に帰るのは日本に行ってからにしよう』と決めた。


 ある時、実業家の仕事を手伝っているとその取引相手は日本人だった。その日本人は満洲で鉄道の仕事に携わってい居るらしく日本人としては金持ちらしい。

 取引の品を見るとそれは『刀』であった。それも三本。

 実業家はその日本人に刀の代金を支払うと取引はすぐに終了した。

 アロイスは日本人が帰ったのを確認するとすぐに実業家に聞いた。『もしかして日本のこと好きなんですか?』と……

 実業家は『好きじゃない……愛しているんだ!』と……

 そこからしばらく実業家の日本に対する思いを聞かされたアロイスは『弟も日本のことが好きなんです』と言うと実業家は大変喜び『日本のお土産として弟に渡しなさい』と言い刀を一本差し出した。

 アロイスはそんな高価なものは受け取れない何度も首を横に振ったがと言い断ったが実業家のごり押しについ縦に振ってしまった。


「それで日本刀を手に入れたと……」


エーリカの作ったハンバーグを食べながら聞いていたアドルフはふと口にした。


「そうなんだ……」

「その後はどうなったの?」

「その後は日本に行こうと思ったんだけど行けなかったんだ……」

「何で日本には行かなかったの?」

「いや~~お金なくて……」

「あれ、実業家の人が出してくれるんじゃなかったの?」


そうするとアロイスは苦笑いしながら答えた。


「僕もそう思っていたんだけど……『日本に行きたいならまず君の弟を連れてきなさい話はそれからだ!』て言って諦めざるを得なかったんだ……」

「変わった人だね……その人……」

「そうだね……」

「ちなみにその人の名前は?」

「フリッツさん。フリッツ・ベッケンバウアーさんだよ」

「今度会ったお礼言わないと」





「これがエーリカちゃんとアドルフが作ったハンバーグ?」


焦げ焦げに焼きあがったハンバーグを見ながらクララはエーリカに聞いた。


「そ、そうです……」


よわよわしく答えるエーリカだったがクララは気にも留めずハンバーグを口に運んだ。


「……ん~やっぱり焦げの匂いがあるわね……まあ最初はだれでもこんな感じよ?」

「そうなんですか……?」

「アドルフだって最初は焦げ焦げのハンバーグだったのよ?これから練習すればいいのよ」


クララは優しく語り掛けるようにエーリカに語りかけた。


「それにまた一緒にアドルフと練習できるじゃない♪しかも二人きりで♪」


クララがエーリカの耳元でそう言うとエーリカは顔を赤くして黙り込んでしまった。

それを見てクララはクスクスと笑うのであった。





「エーリカちゃん、いつアドルフに告白するのかしら?」

「お嬢様は、どちらかと言うと告白されたいと思っていますから」

「なるほどね……でもアドルフすごく鈍感だから難しいんじゃない?」


クララとエーリカのやり取りを見てアンゲラがそう言うといつの間にか現れたエーリカの専属メイドであるミーナが答えた。


「アドルフはいつ気づくのかしらね……」

「まだ先のことになるでしょう」

「何だかエーリカちゃんがかわいそうに思えてきたわ……」

「恋の道は茨の道とも言いますし、お嬢様とアドルフ様次第でしょう」

「……以外に厳しいのね……」

「すべてはお嬢様の為です」


そう言うとミーナはニッコリと笑いエーリカのもとへ歩いて行った。





太陽が真上にあるころから始まったパーティーは日が傾き始め夕日となっていた。

パーティーがもう終わりに近づいてきたころにアドルフはクララに呼び出された。


「どうしたの母さん、二人きりで話したいなんて……?」


クララの顔はさっきまで笑顔だったのと打って変わって真剣な顔となっておりアドルフは不安になっていた。


「あなた以外の家族はもうみんな知ってい居ることだけど、アドルフ……心して聞いてちょうだい」

「な、なに……?」

「アドルフは今日、母さんを見てどう思った?」

「どうって……痩せた……と思った」


まさか……!?いや待って今年は何年だ!?1906年だ!来年のはずだろ!?


「そう……実はね……母さん……“癌“なのよ」


歴史が……変わった……?


「お医者様が言うにはもって一年だそうよ……」

「そんな……!」

「アドルフ、あなたドイツに行きたいそうね?」

「どうしてそれを……?」

「エーリカちゃんが教えてくれたわ」

「そっか……」


アドルフは顔をうつむきながら力なく返事を返した。


「アドルフ、ドイツに行っていいわよ」

「………え……?」


アドルフは顔を上げクララの顔をじっと見た。


「あなたは自由でいいの。好きなことを好きなだけやりなさい」


この時やっとクララの顔が笑顔になりいつも通りの口調で話し始めた。


「母さんのことは大丈夫……アロイスとアンゲラ、エドムントにパウラがついてるし、それにね……お父さんからのお願いだから……アドルフには自由に生きてほしいの」

「親父のお願い……?」

「そう、あの人は『アドルフに好きなことをやらせてやれ』っていつも私に言っていたわ……母さんもそのつもりよ。だから好きなように生きなさい。これはあなたの人生何だから……」

「母さん……」


アドルフは涙を流し泣いていた。

そこにクララが近づき優しく抱きしめ耳元でこう言った。


「エーリカちゃんはね……アドルフのことが好きなのよ」

「・・・・・・はぁ!?」


クララの言葉にアドルフの涙は一瞬で引き、悲しみで溢れていた心が瞬く間に驚きに混乱する心となった。


「頑張ってね!見守ってるわ!エーリカちゃんを悲しませたらダメよ?わかった?」

「えっ……いや……その……」

「わかった?」

「は、はい……」


クララの目力に圧倒されたアドルフは思わず頷いてしまった。

アドルフの答えに満足したクララは抱きしめるのをやめて立ち上がった。


「みんな待ってるわ。行きましょうアドルフ」

「は、はい」


二人はパーティーの中へ戻っていった。





「何話してたんだアドルフ?」


心の整理をしようと少し風に当たりにアパートの屋上に来ていたアドルフは後ろを振り向いた。


「ベネディクトか……」

「珍しいなお前がそんな悩んだ顔をするなんて……」

「ちょっとな……」

「何なら相談に乗るぞ?」


ベネディクトはアドルフの隣に座りながら言う。


「……エーリカのことなんだ」

「母さんが言ったんだ……エーリカがオレのこと好きだって……どう思う?」

「そうだな、エーリカはお前のこと好きだな」

「お前、知ってたのか!?」

「というか何でお前は気づかなかったんだ?


アドルフは驚くがベネディクトは呆れたようにように言った。


「い、いつ頃からなんだ……?」

「なにが?」

「その……エーリカがオレのこと好きになったの……」


ベネディクトはニヤニヤしながら答えた。


「気になる?気になる?気になるよね~?いいだろう教えてやる!これはフォルカーから聞いた話だが……なんと!一目惚れらしいぞ!」

「ウソぉぉぉお!?」


アドルフは思わず叫んでしまった。


「聞いた話じゃあお前、初めて会ったとき迷子のエーリカを助けたらしいじゃねえか?」

「そうだけど……それでふつう好きになるか?」

「あれだ、きっと途方に暮れていた時に現れたお前が白馬に乗った王子様にでも見えたんだろう」


アドルフの質問にベネディクトは笑いながら答えた。


「で、お前はどうなんだ?」

「何が?」

「だからお前はエーリカのことが好きなのかって聞いてんだよ!」

「………えっ………と……何というか………き、嫌いでは……ない……」


アドルフの答えにベネディクトはニヤリと笑った。


「それは好きだということでいいんだよな?」

「………うん……………このことは秘密にしろよ?」

「なんでだよ?こんな面白いことみんなに言わなきゃ損だろ?」

「オレの気持ちになってくれよ………」

「………わかったよ……言わないよ。ここでの話は秘密にしておくよ」


そうアドルフが言うとすごく残念そうな顔になりながらも渋々引き下がったベネディクトだった。



「なあベネディクト……オレ、ドイツに行こうと思う」

「そういやだいぶ前にもそんなこと言ってたな……お前」

「……本当に一緒に来るのか?」


オレはベネディクトの顔を見ながら言った。

しかしベネディクトは笑いながら答えた。


「当たり前だ、俺がお前の夢を叶える力になってやる。邪魔する奴は全部叩き潰してやるさ!」

「……ありがとうベネディクト」

「いいさヤーコブも付いてくるし、フォルカーは引きずってでも連れて行くけどな」


何だろう……フォルカーのことが可哀想に思えてきた……


「そろそろ戻ろうぜ?」

「そうだな……」


エーリカのこと何とかしないとな……


…………母さん




パーティーから一日たちアドルフはクララたちの見送りにウィーン西駅に来ていた。


「もう少し居ればよかったのに……」

「ふふっ……ホテルに泊まるお金がないのよ」


他愛のない会話をしながらアドルフはこう思っていた。

『母さんとこうして会話できるのも最後なのだろう……』と………


「アドルフ……」

「なに母さん?」

「エーリカちゃんのことしっかりするのよ?」

「わかってるよ。母さん」

「約束よ?」

「約束するよ」


その時汽車の汽笛が鳴り響いき乗客たちが乗り込み始めた。


「じゃあ行くね」

「また遊びに来てね、母さん」

「その内にね」


もう来れないと知りながらもアドルフは言う。


「アロイス兄さん、アンゲラ姉さん……母さんのこと……頼んだよ」

「大丈夫だよそんなに心配しなくても」

「任せなさい!あんたもたまにはこっちに来るのよ?」


アロイスとアンゲラが汽車に乗り込み続いてエドムントとパウラが乗り込んだ。

最後にクララが乗り込み汽車がゆっくりと動き出した。


「母さん元気でね!!」

「アドルフの元気でね!」


お互い笑顔で別れを告げた。






それから三か月後の1906年12月21日


クララ・ヒトラー死去、享年46歳


史実より一年早い死であった。









明日から艦これの秋イベ開始です。やってる人は頑張りましょう。

今週の土曜日からガルパンの映画公開です。絶対に見に行きましょう。

拒否権は無いですよ?拒否したら『金髪の野獣』の部下たちがお迎えにあがりますからね?

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