ウィーン編 第11話
今日はアドルフの誕生日です。
あの後何か妙な空気になりながらヤーコブとフォルカーが待っているアパートに向かった。
「………随分ぼろいのね」
「中は綺麗だよ……」
「そうなの……?」
エーリカが驚くのも無理はない……オレだって最初はここに住みたくないと思ったぐらいだからな……
「なあ……アドルフ?」
「どうしたベネディクト?そんな痛そうに頭を押さえて?」
「そうなんだよ、何かさっきから頭が痛くて……それに記憶も曖昧というか……なんというか……」
「ただ疲れているだけだよ♪きっとそうだよ♪暫くすれば治るよ♪」
「そうかな……?」
「そうだよ♪」
さっき殴ったせいで記憶が飛んだな……あんなこと言うからいけないんだよ……ベネディクト……!
そんな会話をしながら部屋に入った。
「ヤーコブ、フォルカー、帰ってきたぞ。」
「お帰り」
「お帰りなさい」
「お邪魔しまーす!」
「エーリカ殿!?」
「どうしてハイゼンベルクさんがここに?」
「遊びに来たのよ!」
二人とも驚いているな~
「ヤーコブ、今日はどうだった?」
「警察に追いかけられた」
「それから?」
「物を運んだ」
「どれぐらい貰った?」
「50ぐらい貰った」
「今日は少なかったんだな」
「殿の方はどうだった?」
「全部売れた、そのうちエーリカが15枚買ってくれた」
「……そんなに買ってどうするんだ?」
「……さあ?飾るんじゃない?」
あんなに買って飾るところあるのか?
「ミーナさん、お久しぶりです!」
「フォルカー様もお元気そうで何よりです」
相変わらずのフォルカーであった……
「ベネディクトはどうだった?」
「なにが?」
「今日の儲け、どうだった?」
「全然来なかったな……警察は来たけど」
「何しに来たんだよ……」
「ヤーコブを探してたみたいだけど……俺は知らないと答えた。あとはミーナさんと喧嘩したぐらいかな」
「そうか………しかしだいぶ貯まってきたな。今いくらぐらいあるんだ?」
「…………1500ぐらい貯まってる」
「もうそんなに貯まったのか……」
「この調子で頑張ろうぜ!」
「ベネディクト……お前が一番稼いでないだろ」
「だって客が来ないんだから仕方がないだろ」
「飯代と家賃、さっさと返せ」
「無いもんは無い!」
「今お前の借金25だからな」
「多くね!?」
「当たり前だ!利子つけてるからな!」
「うそだろ!?」
「ホントだよ!」
「ねえ、アドルフ。さっきから何の話してるの?お金の話っていうのはわかるんだけど………」
「ん?貯金の話だよ。大体1500クローネ貯まってる。」
「なんでそんなに貯めてるの?」
この時代の郵便局員の年収は700クローネぐらいでオレ達は二か月で1500クローネ貯めた。主にヤーコブのおかげです………
「なんで貯めているかというとそれはだね………」
「それは………?」
「ドイツに住むためだ」
「ドイツに……住むため?」
「そう、ドイツに住むため」
「アドルフがドイツ人に………」
「オレだけじゃなくてベネディクト、ヤーコブ、フォルカー、みんながいずれドイツに住むことになると思うぞ」
「…………ミーナ、お父様に連絡を」
「ハッ!!」
「アリーセ、国籍変更の手続きを」
「ハッ!!」
「・・・・・・エーリカ、まだドイツに住まないから混乱するようなことしないでくれ・・・・・」
「えっ・・・・・?」
「あと二年はウィーンに居るからな」
「なんだ………」
「そんなに落ち込むな」
そんなに落ち込むことはないだろ………
「そういえばアドルフ君、手紙が来てたよ」
「手紙?見せて」
え~となになに・・・・・・・・ウソん・・・
「帰ってきた・・・」
「帰ってきたって誰が?」
「アロイス兄さんが・・・・・帰ってきた!!」
忘れたころに帰ってきたアロイス兄さん
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