青年期第11話
少女はなにを思うのか?
―1903年7月28日―
エーリカがドイツ帝国に帰ります。何だろう?なんで帰る日の二日前に教えるの?普通はもっと前に教えてくれるんじゃないの?何でなんだよ!?なんで…なんで!?
「殿、顔に出ているぞ」
「え…」
「少し落ち着いてよアドルフくん」
「そうだな…少し落ちつ…けるかぁぁぁぁ!!エーリカが帰っちゃうんだよ!?なんでお前らそんなに落ち着いていられるの!?なんで何だよ!?」
「殿、落ち着け」
「それには理由があるんだよ」
「何だよ?理由って?」
「事前に知ってたからだよ」
「・・・は?」
「エーリカから事前に教わっていたのだ」
「……おっお前らァァァァァァァァァ!!!!!!」
オレはとりあえずフォルカーを投げ飛ばした。
「うわぁぁぁぁ!?」
「ヤーコブ、お前もだぁぁぁぁ!!!!」
ヤーコブを投げようと振り向くと走っていた。それはもうすごい速さで。オレも走った!!オレ頑張った!!頑張って走って追いついた!!
「とっ殿、落ち着け!」
「まてェェェェ!!」
すると急にヤーコブが止まった。オレはそのままヤーコブにぶつかった。
「グオォ!?」
「フガァ!?」
痛い……
「ヤーコブ、急に止まるな!!」
ヤーコブは気絶している。
「何なんだよ……」
「アドルフ……」
「え……」
振り返るとそこにいたのは……
「エーリカ……」
と
「ミーナさん!?」
「お久しぶりです。アドルフ様」
「こ、此方こそお久しぶりです。ミーナさん」
なんでミーナさんがここにいるんだよ!?
「アドルフ様、エーリカお嬢様がお話をしたいそうです」
「お話をしたい?」
エーリカを見ると……元気ね~なオイ!?なんでそんな暗い顔してるの!?
「いいですけど……」
「では此方でお話の相手をしてあげてください。」
とりあえず付いていった。
―どっかの部屋―
部屋の中にはイスが二脚だけある。ただそれだけしかない。「では、私は部屋の外にいるので」そう言ってミーナさんは部屋を出ていった。
「…………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
何だこの沈黙は!?なんかしゃべってよ!エーリカァァァ!?
「ご………」
「ご?」
「ごめんなさい!!!!」
「ええェェェェ!?」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「オイ!?落ち着け!?落ち着くんだ!!エーリカ!!」
10分後ぐらい
「落ち着いたか?」
「……うん」
エーリカはなんであんなに混乱していたんだろう?
「ごめんなさい……」
「何がだよ?」
「帰るの黙ってて……」
なるほど…それであんなに謝っていたのか…
「なぁ……エーリカ、なんでオレに帰ることを黙っていたんだ?」
「……恥ずかしいから……」
「なにが?」
「帰る時……きっと泣いちゃうもん……」
エーリカにこんな可愛いとこがあるなんて!!………女の子だもんな……
「泣くことなんてないよ。」
「え……?」
「また会える。」
「本当……?」
「本当だって!手紙も書くよ!」
「本当に本当よね?」
「ほんと、ほんと♪」
「約束よ……」
「ああ、約束する。」
―1903年7月30日―
「じゃあ…行くね…」
「ああ、元気でな…」
エーリカとミーナさんが汽車に乗り込んだ。そして汽車が動き出した。自然に足が動き出した。
「元気でなー!!手紙、送るからなー!!」
そう叫びながらオレは走った。ヤーコブやフォルカーも手を振りながら走った。エーリカも何か叫んでいるが汽車の音で聞こえない。
「・・・・・!!元気でね!!」
それしかオレたちには聞こえなかった。
―汽車の中―
「ありがとう!!」
あたしはそう叫び続けた。そして見えなくなると涙が溢れてきた。
「お嬢様、涙をお拭きください。」
「泣いてない!目にゴミが入っただけよ!」
「そうですか。」
あたし、エーリカ・ハイゼンベルクは好きな人がいる。その人は貴族でもなければ大商人の息子でもない、ただの平民だ。だけどあたしはその人に引かれた3年前に助けられた時から、一緒に遊び、ご飯を食べ、色んなことをした3年間…かけがえのないのない時間だった。あの人と出会ってからは楽しいことばかりだった。だから離れたくなかった。けどあの人は『また会える』と言ってくれた。とても嬉しかった。ドイツに戻っても頑張れる気がする。全部あの人のおかげ……だから改めてあたしは言いたい。
「ありがとう、あたしの大切な人」と…………
エーリカはまだ9歳です・・・・大切な人って誰なんだろうか……?




