青年期第10話
テストが近づいてきた
―1903年3月22日 リンツ市内 ヒトラー家―
オヤジの突然の死から一週間たった。前世の記憶で知っていたけれど肉親が突然死んでしまうのは、辛い……家族みんなが泣いた、オレも泣いた……実に悲しいことだ……兄貴はまだ帰ってきていない……葬儀にはエーリカやヤーコブ、フォルカーなど地元の名主や親戚、学校の先生、たくさんの人が来てくれた。改めてオレのオヤジは愛されているのだなと思った。
「これからどうしよう……」
姉のアンゲラが呟く。アンゲラは今年で20歳になる。
「出稼ぎにでも行くか……」
オレことアドルフは今年で14歳になる。
「アドルフ兄ちゃんもどっか行っちゃうの?」
「パウラそんなのやだよ~……」
弟のエドムントは今年で9歳、妹のパウラは今年で7歳になる。エドムントは史実では1900年で亡くなるはずだったがオレが側に居たり手洗いうがいをしっかりさせていたので亡くなることは無かった。
「大丈夫。オレはどこにも行かないよ」
「ほんと?」
「本当だよ」
「よかった~」
しかしこれからどうしよう?史実では1906年ぐらいにオレはウィーンに行くはずだが……
「みんな、集まって」
母親のクララが呼んでいる。何だろう?
「みんな、集まった?」
「全員いるよ」
「みんなには話しておかないとがあるの。」
「話しておかないこと?」
「なにそれ?」
「実は……」
「実は……?」
「お父さんが遺産金を残しておいてくれたのよ。」
「遺産金……」
「それがどうしたの?」
「お父さんの遺言書ではみんなで分けろって書いてあるの」
「母さんに任せるよ」
「そう……」
こうして遺産のことは母親のクララに任せることになった。
そろそろウィーンに行きます




