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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

通勤電車

作者: にのち

「お疲れ様ー」


座席に座りスマホに目を落としていた俺に隣からかけられた声。


電車の走行音にまぎれた声だけでは判断ができなかった人物を顔を上げることで把握。


「あぁ、お疲れー」


久しぶりに見た同期に軽く返事をして、再びスマホに目を落とす。


「えっ!?何、何??そんだけ??」


電車という騒々しい環境にも負けない大きな声と、グラグラと揺らされる肩に不快感。


「あぁ?なんだよ。何か用か?」


視点が定まらず揺れるスマホのディスプレイに酔いかけて、隣の同期にかけた声はオレの心情を顕著に表す不機嫌なものになった。


「えー?会うの久しぶりじゃん俺達?何か話そうぜー」


相変わらずの声のボリュームと、ニコニコとした顔。ぐにゃりと寄りかかってくる身体。


「お前、うるさい。ウザイ。重い」


寄りかかってくる身体を肩で押し戻し、暴言を投げつける。


「俺、話そうって言ったの!文句言ってって言ってないーー!!」


うるさいと注意したはずなのに落ちない声のボリュームに顔を顰める。


終電間近で人があまり乗っていない、乗っていても酔っ払いという状況に助けられてはいるが、素面のオレにとっては迷惑この上ない。


「うるさいって言ってるだろ。静かにしろよ、酔っ払い」


くっつけられている足を軽く蹴り、もう一度注意。一社会人として、同じ会社の同期として、この醜態を長く晒させるわけにもいかない。


「ちぇーっ。話してくれないんなら俺寝るー」


「あぁ、寝ろ、寝ろ」


不満気な声を出した同期は、オレの言葉を受けてあっさりと目を瞑る。


その頭をオレの肩に乗せて、小さくオレにだけ聞こえる声で「この間はゴメン」と呟いた。


その呟きに、少しだけ笑って「気持ちよく寝てろ」と返す。



喧嘩のあとの仲直り。


通勤電車の酔っ払いも悪くない。

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