『長者の舟と積み荷のプレスマン』
掲載日:2026/06/08
瀬戸内海の海運で財をなした長者がいました。日の本で最も舟の往来の激しい瀬戸内海で、一番か二番に多くの舟を持っていると言われていましたが、長者自身も、何艘の舟を持っているか知らなかったので、数えてみたくなり、ある日のある時刻、全ての舟を並ばせ、自分の乗った舟で、すれ違うことで、数えてみることにしました。
堺の港を出発して西へ進み、九百九十九まで数えたところで、日が暮れかけました。長者が扇を開いて、お天道様を上にあおぎますと、お天道様が少し戻った気がしました。長者は、これ幸いと、残りの舟を数え、千二十四艘であることがわかりました。しかし、そのときです。海が急に荒れ始め、長者の舟は次々と沈んでいきました。長者の乗った舟は無事でしたが、堺の港に戻るまで、残った舟を数えたところ、百八艘に減っていました。沈んだ舟は、原文帳に使う半紙を積んだ舟で、水を吸って沈んだようでした。沈まなかった舟は、プレスマンを積んだ舟で、ひっくり返っても、プレスマンの浮力で沈まずに済んだのでした。
教訓:後で調べたところ、嵐に遭った場所は、壇ノ浦のあたりだったという。




