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第5話 探索者登録

「おめでとう、アキ。今日から君は、私の『相棒パートナー』よ」

「ちょ、ちょっと待て……」

 俺が抗議する間もなく、受付の女性職員が駆け寄ってきた。

「綾田亜季様ですね? 会長がお呼びです。至急、最上階の執務室へお越しください」

「会長……」

「探索者協会のトップよ」

 アリスが囁いた。

計測不能オーバーフローなんて結果が出たら、当然ね」


 最上階への直通エレベーターは、まるで高級ホテルのように静かだった。扉が開くと、そこは一面ガラス張りの執務室。

 夜景を背にして、一人の男が立っていた。外見は四十代半ばに見える渋いイケオジ。グレーのスーツに身を包み、鋭い眼光を放っている。

「初めまして。私は探索者協会会長の神崎洋三かんざき ようぞうだ」

 低く、重みのある声。

「……綾田亜季と申します。」

 俺は緊張しながら頭を下げた。

 神崎会長は、俺とアリスをソファに促すと、自身も向かいに座った。

「さっそく本題に入ろう。君のステータスについてだが――」

 彼は手元のタブレットを操作する。

「測定器が『計測不能オーバーフロー』を示すケースは、過去に四例しかない。そのうち二名は、現在ランクS探索者として活動している。つまり――」

 鋭い視線を俺に向けた。

「君は、世界でも五指に入る可能性を秘めた逸材というわけだ」

「そんな……俺は、ただの……」

「引きこもりかい?」

 神崎会長は、資料に目を落とした。

「二年前の『侵略』で覚醒。その後、一度も探索者登録をせず、自宅に引きこもっていた。……だが今日、園前アリスくんに連れられて、ここに来たと……」

 俺の過去の経歴が載っている資料のようだ。燃やして帰りたいな。

「綾田くん、率直に聞こう。君は、探索者として活動する意思はあるか?」

「それは……」

 俺は言葉に詰まった。

 その時、アリスが口を挟んだ。

「会長。アキの意思は、私が保証します。彼は私の相棒パートナーとして、ダンジョン攻略に協力してくれます」

「園前くん……」

 神崎会長は、しばらくアリスを見つめていたが、やがて頷いた。

「分かった。では、こちらから提案がある」

 彼は新しい資料を取り出した。

「綾田くん。君が探索者になってくれたら、『第一種指定探索者』に登録しよう。これは、国が特に重要視する探索者に与えられる資格で、ランクA探索者に相当するものだ」

「第一種……?」

「具体的には、以下の通りだ」

 神崎会長は、資料を俺の前に置いた。

「一つ。月額基本支援金として、十万円を支給する」

「じゅ……!?」

「二つ。探索活動に必要な装備品の購入費用を、協会が全額負担する」

「ちょ、ちょっと待ってください……」

「三つ。専属の医療チームとカウンセラーを配置する。君が二年前のトラウマを抱えていることは、把握しているからね」

 神崎会長は、俺の目を真っ直ぐ見た。

「そして四つ。初回支援金として、一千万円を即座に振り込む」

「い、一千万……!?」

「ただし、条件がある」

 神崎会長は資料の最後のページを指差す。

「週に最低一回、ダンジョンへの探索任務に参加すること。そして、園前アリスくんのパーティーに所属し、彼女の指示に従うこと」

 アリスが、満面の笑みで俺を見ていた。

(こいつ……最初から全部仕組んでいたのか……!)

「どうする、綾田くん?」

 神崎会長が問いかける。

 一千万という金額は、母さんと響を養うには十分すぎる額だ。

「……一つ、質問していいですか?」

「何だ?」

「もし俺が、探索中に……戦えなくなったら?」

 神崎会長は、わずかに表情を緩めた。

「その時は、園前くんが君を守るだろう。彼女はランクA探索者だ。君一人を守りながら、ダンジョンを攻略できる実力がある」

「会長……」

 アリスが意外そうな顔をした。

「君は、彼女を信じられるか?」

 神崎会長の問いに、俺はアリスを見た。

 綺麗な碧い瞳が、真っ直ぐに俺を見つめている。

「……分かりました」


 俺は、資料にサインをした。

「探索者として、登録します」

「よろしい」

 神崎会長は満足げに頷いた。

「では、初回探索は明後日。まずは比較的難易度の低いとされる『デーモンダンジョン』で、君の実力を確認させてもらう」

「あ、明後日ですか……」

「それまでに、最低限の訓練を済ませておきなさい。園前くん、君が指導してくれるね?」

「もちろんです」

 アリスが立ち上がった。

「さあアキ、帰りましょう。君の新しい人生が、今日から始まるのよ」



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