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7. 卒業パーティーへのお誘い

(ロバート目線)

ガーディナー伯爵領の近くでの討伐を終え、王都に帰ろうとしたら、副団長のエバンが帰る前に団員達の慰労も含めて、領主館に寄って行こうと言ってきた。


ここの所遠征が続いて、王都に帰ってもとんぼ返りで次の遠征地へと行っていたので、みんなにも疲労が溜まっている。


ガーディナー伯爵領には温泉もあるというのが魅力だ。


エバンがに先ぶれの魔道メールを出し、領主館に着いた頃にはすっかり日が暮れていた。


こちらには騎士科時代から何度もお世話になっているので、管理人のアリスターに挨拶をしようと領主館に入ると、そこにいたのは私の愛しいアリシアだった。


アリシアに実際に会うのはほぼ1年ぶり、ますます美しさに磨きがかかっている。


いつも気が利いた言葉をアリシアにかけたいと思っているのに、実際に本人を目の前にすると話もできず、照れ隠しの為につい素っ気なく扱ってしまう。


それでも、いつも俺ににこやかに話しかけてくれるアリシアは天使だ。エバンの気持ちがよくわかる。


どうやらアリシアは卒業後の進路をガーディナー伯爵とエバンに相談をする為にみんなが集まれる機会を探していて、今回の遠征が領地から近い事から、第三騎士団の慰労も兼ねて領主館に招待してはどうかと、伯爵とエバンに話していたそうだ。そして、討伐終了予定の数日前から伯爵と領主館に来ていたそうだ。


卒業後は俺のところに嫁に来て欲しいとつい思ってしまい。結婚したらこんな風に出迎えてくれるのかと思うと、顔がにやけそうになってしまう。それを隠す為に顔に力を入れたら、人相がますます悪くなり、アリシアの近くにいたメイドの顔が青ざめていた。


アリシアはそんな事も気にせずに「お疲れでしょう、皆様をお部屋にご案内します」と笑顔で言ってくれた。

ここには薬草の収穫期に大勢の人が泊まれる別館があるので、部屋数には問題ない。団員達は別館へ、俺はエバンの部屋の隣の客室に泊まらせてもらうことになった。

ちなみに反対側の隣の部屋はアリシアの部屋でもある。もうそれだけで、鼻血が出そうだ。

慰労に来たはずが、精神的に疲れる。


夕食後、ガーディナー伯爵とエバン、アリシアの話し合いに俺も呼ばれた。家族以外の第三者の意見も聞きたいとのことだ。


彼女の希望は王宮薬剤師として、騎士団との遠征にも同行したいという事だ。


「アリシア、お兄様は反対だ。第二騎士団にはむさ苦しい男だらけで、可愛いアリシアがそんな奴らと野営するなんて考えたくもない」


相変わらずの妹推しだ。そしてこれは俺も同意見である。


「私は学院でも全然モテなかったし、大丈夫だよ」と照れながらいうが。


それは違う、この隣のにこやかに話を聞いているエバンがアリシアに気がある男子生徒を全て潰していったからだ。騎士団の仕事をしつつ、何故学院の情報も全て網羅しているのだろうか?

それどこか、弟のリアムが生まれる前にアリシアにお見合いの釣書が来始めたのを見て、伯爵夫婦をうまく誘導して、子作りさせるようにしていたし。


あまりの強かさに、エバンが次期伯爵になればいいのではと言ったら。


「嫌だよ、俺はアリシアの幸せの為に一生を捧げるから、領地経営なんか面倒だ。アリシアに似合う男は俺はじっくり選別するから」って笑顔で言われた。


俺は必死で真顔を作り聞いていたが、俺がアリシアの事を好きだとエバンに言ったら、秘密裏に消されるかもしれないと内心はビクビクしていた。


なので、エバンがお茶を飲みながらボソッと呟いた言葉は聞こえてなかった。


「あともう一歩だな」


アリシアが必死にモテないから大丈夫とエバンに言っているが、それでもエバンは納得しない。


結局、ガーディナー伯爵の元上司、筆頭魔法薬剤師のイアン・グリーン侯爵が補佐官を探しているというので、彼に推薦状を出すのはどうかという事になった。


話し合いも終わり、エバンはアリシアにお願いがあると言うので、俺は部屋に戻り、就寝の支度をしてるとドアがノックされた。


エバンかと思ってドアを開けると、薄手の部屋着にガウンを羽織ったアリシアが立っていた。


一瞬固まってしまったが、気を取り直して。

「遅い時間に、男性の部屋に訪ねて来るのは良くありませんよ」というと。


「すみません、ロバート様にお願いしたい事がありまして、少しお話しできませんか?」


まずい、まずい。エバンはきっと隣の部屋にいる。そしてこの状況に確実に気がついている。


エバンの部屋の方をチラリと見ると、ドアが少し開いていて、親指を立てた手が見えた。


エバンはこれからアリシアが言うことがわかっているようだ。


「疲れているので、手短にお願いできますか?」と言ってアリシアを客室に招き入れ、ドアはもちろん開けておいた。


「ロバート様、お恥ずかしい話ですが、私には婚約者も一緒に卒業パーティーに行ってくれる男性もいません。ロバート様にエスコートをお願いしてもいいでしょうか?もちろん、お父様とお兄様にも先程お話しました。」と頬を真っ赤に染めて、上目遣いでお願いしてきた。


まさかアリシアから誘って貰えるとは、頭が真っ白になって、なんと言ったかきちんと覚えていないが、エスコートする事を約束し、後日改めて話をする事にして、アリアナを部屋に帰した。


客室のドアを閉めた瞬間、俺はずるずると床に崩れ落ちた。


「上目遣いとか可愛すぎるだろう」


エバンはシスコンですが策士でもある。反対にロバートはどんどんヘタレになって来てしまった。

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