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6. 8年後

おかしい。。もう私の卒業パーティーまで後半年。

ロバート様と出会ってから、8年が経ってしまった。


ロバート様はこのお話のヒーローだと私は思っている。

心に傷を抱えて、人間不信、それが1人の女性との出会いで全てなくなり、恋に堕ちる。鉄板の異世界恋愛話。


しかし、ヒロインが出てくる気配は全くなかった。


大体このアルピナ王国は平和すぎる。


島国のせいか、周辺国から攻め込まれることも無く、異世界にありがちな魔獣もいない。

それでも騎士団があるのは、たまーにやってくる海賊対応の為。

アルピナ王国は魔薬草を含む、自然資源も豊富で他国からの輸入品に頼るわけでも無い。

もちろん豊富な資源を狙って来る国はあるらしいが、まあ陸の孤島ってやつなんですかね?むっちゃ船だと遠すぎるので、国に辿り着くまで戦力が枯渇してしまうのか、攻め込まれる事はほぼ無い。


この世界に飛行機はないみたいだし。


他国に行くには友好条例に際に建てられた転移ゲートを使うのだが、こちらも一回の転移には人数制限がある。

なのでこの国には王族の警護を行う第一騎士団と、前世でいう警察と軍隊を合わせたような第二騎士団がある。第二騎士団の仕事は海賊の討伐がメインだが、滅多に海賊は来ないので、住民同士の諍いを収めることから冬祭りの雪像造りまでなんでもやる。(氷魔法持ちの団員がとても重宝されるイベントでもある)


そんな平和なアルピナ王国にも弱点はある。


島国であるという事で固有の動植物があり、外来種にとても弱いのだ。


転移ゲートができるまではあまり問題にはなってなかったが、他国からの人の往来が増えるに従い、今までこの国になかった魔獣が入ってくる様になり、アルピナ王国だけでとれる希少な薬草や固有種の動物がこれにより激減した。


国王はこの事態を重く見て、転移ゲートでの検疫の強化と外来の魔獣を討伐する第三騎士団を作った。


その団長に抜擢されたのがなんとロバート様である。騎士科を卒業後第二騎士団に無事入団。海賊討伐で実績を上げていた。


討伐遠征の多い第三騎士団はあまり人気はないので、ベテランは入団したがらず、もともと若手が多かった。

団長を決める時に、初めに白羽の矢が立ったのがお兄様だった。


元々、転移ゲートでの「外来魔獣の検疫強化」をお父様に勧めたのは私であり、それをお父様が上司である筆頭魔法薬剤師様に相談した事から

検疫所が設立され、お父様が責任者になった。

外来魔獣は貴重な魔薬草を絶滅する勢いで広がっていき、魔薬草栽培で生活をしているガーディナー伯爵領にとっても死活問題だったからである。


王立学校を卒業したお兄様は私が卒業するまでは王都にいるというので、暇なら家のために働けと、今回設立された第三騎士団に入れられた。


団長になったら会議などで忙しくなり、家に早く帰れない、可愛い妹との時間が減ると無駄に高いコミュニュケーション力を使い、ロバート様を団長に押し上げ、自分はちゃっかりと副団長の座についた。


魔獣討伐と言っても、外来種の魔獣はウサギが巨大化した様なもので、薬草を食べる草食性である。


こんな大きなもの何故、転移ゲートの検疫で見逃したと思ったが、元々はネズミサイズだったらしく。こちらの気候と薬草のおかげで巨大化してしまったそうだ。


繁殖力は高いが、攻撃力は低いので討伐自体は難しくないが、数が多いので時間がかかる。


しかしそこはお兄様の加圧水攻撃でほぼ一瞬で無力化させ、その後ロバート様を含む団員達が剣などの物理攻撃でトドメを刺す。


討伐遠征が多く、王都を離れる時間が長すぎるとお兄様は私不足になり、手加減をしなくなるから、大盤振る舞いで水魔法で魔獣に攻撃をする。


ロバート様の火炎攻撃も有効だが、ウサギ魔獣が炭になってしまい肉や毛皮などの素材が取れないのと、薬草畑に火がつくと困るので、畑から離れたエリアでしか魔法を発動させられない。


初めはうさちゃん(魔獣だけど)は食べれないと思ってたが、お肉のあまりの美味しさに可哀想という気持ちは吹っ飛び、ウサギ魔獣の遠征と聞くとお土産を楽しみにする様になった。美味しいは正義である。


ちなみにウサギ魔獣と一緒に他国から入ってきた、ネズミ魔獣もいるのだが。こちらは食料を食い荒らしたり、家の壁を齧ったりする。お兄様が人家から離れた場所に水魔法で誘導して、こちらはロバート様が容赦なく一瞬にして消し炭にしてしまう。まあ。。流石にネズミ肉はねえ。


さてこの8年の間に我が家には新しい家族が加わった。緑の眼と黒い髪を持つ弟のリアムが生まれたのだ。まだ6歳だが、とても頭が良く魔力も高い。


リアムが成人するまでは、一応お兄様が次期伯爵候補であるが、本人にその気は全くない。リアムが生まれた事により、私もお婿さんをもらって伯爵領を継ぐという事からは逃れられた。


しかし弊害もある。


リアムが生まれるまでは、それはたくさんのお見合いの釣書が来ていた。もちろんお兄様の査定にパスするものはいなく。全て処分されたが。


今はリアムが次期伯爵候補になった為、両親は私にも自分たちの様に恋愛結婚をして貰いたいと、積極的に私の結婚相手を探すのをやめてしまった。


その上、王立学校ではお兄様のシスコンぶりが有名すぎて、私に話しかけて来る男子生徒はいなかったので、婚約者がいないまま卒業が近づいて来た。


こんなに可愛く生まれ変わったのに、モテないってどういう事???


唯一近くにいる家族以外の男性はロバート様だが。


私が大きくなるに従って、彼は私に対して素っ気なくなってきた。話しかけても、質問に答えるだけで、話が続かない。ロバート様が怪我をした時に、薬を塗ろうとしたら。

「自分でできます」と薬を奪って走っていってしまった。

そんなに触られるのが嫌なのだろうか?


第三騎士団の団長になってからは、ますます会う機会がなくなってしまったが、討伐後にウサギ魔獣の肉と毛皮を送ってくださるので、嫌われてはいないと思う。


王立学校では私はもちろん魔法薬剤師科で勉強し、今では魔力が上がったので病気の人のステータスを見て調剤する事もできる様になった。


卒業後は伯爵領で領主としての勉強をしようとしてたのだけど、リアムがいる今、それも必要がなくなった。


となれば。。。王宮に勤めて魔法薬剤師となるか。そうなると、騎士団と連携して働く事になる。


そこら辺はお父様とお兄様に相談するとして。


目下の問題は、卒業パーティーに誰にエスコートしてもらうか。

私には婚約者がいないので、この場合は家族となるのだが。

あまりにも有名なシスコンの兄にエスコートをしてもらうと、将来の結婚がますます遠のく感じがする。リアムはまだ小さいし。


ここはやはりロバート様か。

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