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幕間の時間

作者: 白野彩
掲載日:2025/10/13

処女作です。

読みにくい文章かもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします!!

ある日、彼から「劇を見に行こう」とお誘いがあった。学生時代の友人が出演しているものらしく、前回会った時にチケットをくれたのだとか。


観劇が大好きな私はもちろん即決だった。何より、今まで私が率先して誘っていたデートに、彼から誘ってくれたのが嬉しかったからだ。


劇は今週の土曜日だったので、あと3日。帰ったその日にネットで劇の内容を軽く確認し、着ていく服を探した。手持ちの服でも良かったけど、どうせなら劇の内容に相応しいものが良かった。それが私の観劇の楽しみの一つでもある。


前回はキュート系の洋服だったけど、今回は劇が大人向けの内容だからモノトーンでまとめようかな。暑いし、シースルーの生地がいいんじゃない?でも、万が一、彼の友達に会うとなったら、釣り合った格好でいたいし…。


そうやって考えてたら三日間なんてあっという間だった。



劇当日、待ち合わせは会場前にした。家に来てもらうのはなんだか恐れ多かったから。


結局、仕事中も家に帰ってからも悩んだ結果、服をモノトーンにまとめ、メイクやアクセサリーに薄いピンクを入れることで、大人っぽく、でもどこか可愛らしい印象になったのではないだろうか。

彼の周りの女性はいつも綺麗な人が多いから、その人たちの雰囲気も意識してしまった。


劇場は劇団が所有しているものらしく、座席の構造が少し面白かった。舞台に近い前列ゾーンは1席づつ区切りがある席、中間部分はカップルシートのような2−3人用の席、後列はベンチシート型の席だった。しかし、どれも長時間の着席を快適にするためにクッション性は抜群だった。単純に肘掛けの位置が違うだけのようだ。それぞれの席の間には細かく通路がある。これは劇中に役者さんが通路まで降りて来て、観客の近くで芝居をしてくれるという演出のためだった。


(ベンチシートならまだしも、2−3人用の席なんて…。知らない人が隣に来たら気まずくない?)


そんなどうでもいいことを考えながら自分たちの席を確認したら、なんとカップルシート席だった。これだと遮るものがなしに彼の隣を陣取れるため、私はチケットをくれたご友人に心の中で手を合わせた。しかし同時に隣が気になって劇に集中できなかたったらどうしようという不安も発生してしまった。でも、せっかくの劇だし、集中しなければもったいないと思い、事前にロビーで買ったパンフレットを広げた。


劇の舞台は中世ヨーロッパ。元貴族の少女が実家の没落のために娼婦になる。しかしそこは裏社会と紙一重の世界。ある日、裏社会の組員1人が殺されるところからヒロインは事件に巻き込まれていく。ヒーローはそんな事件を解決すべく調査に乗り出したある高位貴族の嫡男で、娼婦街で彼女を見初め、事件解決後に彼女を助け出し、2人は結ばれるという、いわゆるシンデレラストーリーだった。


舞台が娼婦街ということもあり、男女のあれこれや夜の営みについて赤裸々に出てくる。そのためこの舞台は12歳以下の観劇を推奨していない。


正直、普段は酷く現実主義な彼がこのような劇を見るなんて思ったが、友人が出る以上、見ないわけにはいかないのだろう。意外と情に熱い点も、私が彼を好きな理由の一つだった。


「ご友人はどの役なんですか?」

「あいつは確か娼婦役だったかな。悪役らしい。」


なんと、チケットをくれたご友人は女性だったようだ。

私が軽い衝撃を受けている間にも、彼はキャスト一覧から彼女を探してくれている。


「あった、コイツだよ。」


示された写真にはやはり綺麗な女性がいた。劇の衣装とメイクを纏っているが、それでもその下に美人な素顔があると分かるし、娼婦役をするだけのことはある素晴らしい身体のラインだった。


普段はあまり他人を友人などと呼ぶことはない彼が友人と呼ぶのだから、彼と話が通じるくらい頭がよく、性格もいいんだろうと察してしまった。ふと我に帰り、彼女と自分を見比べ劣等感に襲われた。特筆して優れた点はなく、彼女のように綺麗系というより可愛いタイプに落ち着いてしまう私は、私の一方的な猛アタックだけで彼の隣に居座っていいのだろうか。


さっきまでの楽しみだった気持ちが一気に急降下して、さっきまでの自信は急に萎み眉間に皺が寄ってしまった。でも仕方がないのだ、恋とはそれだけで人を一喜一憂させてしまうのだから。


そんなことを考えて、写真をじっと見つめながら黙ってしまった私を彼は不思議に思ったようだが、どちらが言葉を発する間も無く、上演の時間になった。



結果から言うと劇はものすごく面白かった。元々シンデレラストーリーも好きだったし、ミステリーやサスペンスのお話も大好きだからこの劇を楽しめないはずがないのだ。


ただ、第一幕の終了間際に悪役の俳優さんたちが通路に降りて芝居をしてくれたのだが、それがあまりにも怖くて彼の腕にしがみついてしまった。怖いものは苦手で、いつもは1人で手を握ったり顔を覆ったりして耐えていた。しかし今回は自分でも知らないうちに彼に甘えていたようで、思わず腕を掴み、身体を寄せてしまった。でもその行動すら無意識だった。気づいた時には彼のため息が聞こえ、そこでハッとした。


「ごめんなさい、でも怖いのが苦手で…。」


彼は何も言わなかった。私は彼に顔を向けられなかった。


降りて来てくれた役者の中には娼婦役の彼女もいて、彼に気づいたのか特別に私たちの目の前で長めにお芝居をしてくれた。しかしそれは私の恐怖心を助長させ、結果的に長く彼の腕を拘束することとなった。


第一幕終了後、ようやく腕を解放した私に彼はまたため息をついた。気まずさに耐えられなかった私はお手洗いに立ち頭を冷やすことに。


(どうしよう、呆れられちゃったかな。)


化粧直しにリップを引きながら鏡の中の私を見つめる。


(普段はベタベタ触ってくる女性を嫌そうにしているのに…。しかもご友人の前で引っ付くなんて。彼が嫌がる接触はなるべく避けてきたのに、こんなところでしてしまうなんて不覚だわ。)


私は熱烈に彼に対する好意をアピールしてきたけど、でもそれは言葉だけ。基本的に人と距離を保ちたい彼を尊重して、いつもは人とゼロ距離は私は彼に対してだけ身体的な接触は控えてきた。


(今まであんなに頑張って抱きつきたいのも、手を繋ぎたいのも我慢したのに…!次からは耐えるように意識しないと…。)


そう決意して赤いリップを引きなおし、席に戻っていった。


第二幕にも所々怖い場面があった。何度も彼を頼ろうとしてしまいそうになったが、それでも先ほどの失態を思い出して自制心を強く持った。その度に彼の視線を感じないでもなかったが、怖いシーンはこちらも必死なので構っていられなかった。それ以上に、これ以上不必要な接触で彼に嫌われるのが怖かったと言うのもある。



劇が終わった後、「友人に挨拶してくる」と、私が問いかける間もなく彼は早足で行ってしまった。この後の予定は何も決めておらず、終わった後でいいやと思っていた自分の能天気さに腹が立つ。


この後、彼はどうするのだろうか。観劇したのは夜の部だったため、ご友人とそのまま飲みに行ってしまうかもしれない。その場合自分は一緒に行っていいのだろうか?それとも邪魔になるからやはり帰ってしまおうか。


1人で帰ることに寂しさがないわけではないが、彼は友人関係に口出しされるのを嫌うため、私はそのまま帰るることに。そう考えるや否や彼にメッセージを送った。


(私はお先に失礼しますので、ご友人と楽しんでください。今日は本当にありがとうございました!っと。)


彼に嫌われないためにはこれがきっと正解で、こうして私は今日も彼の近くにいることができる。

そうやって自分を鼓舞しながら今日も1人で帰路に着いた。

お読みいただきありがとうございました!未熟で拙い文を読んでいただき恥ずかしい部分もありますが、良かったら高評価をいただけますと嬉しいです…。皆さまのご感想もお待ちしております!今後もどうぞよろしくお願いいたします^ ^

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