1.ある女の独白
あの女、
まだ生きているわ。
処刑されるはずの時期はもうとっくに過ぎている。
机の上に広げたノートを睨みつける。
あの女が消えて、ようやく始まるはずだった。
私と彼の恋が。
なのに、何?
処刑どころか、今や社交界の中心。
「悪女」と呼ばれて、笑い者になって、
彼の手を二度と取れなくなる。
そう決まっていたはずでしょう?
顔を伏せ、ノートにぐっと爪を立てる。
ページが破ける音が、部屋の中に響いた。
どうして、壊れるの。
どうして、原作通りに動かないの。
──私が、やっと手に入れた世界なのに。
静かに立ち上がる。
月の光が差し込む窓辺に近づき、あの女の顔を思い浮かべる。
月明かりに浮かぶ、あの女の赤い瞳。
お前は、消えるべき存在なのよ。
彼の心は、私のもの。
……そうじゃなきゃ、この世界を生きる意味がないのよ。
彼は、もう壊れてしまった。
私が救ってあげるまで、まだ少し時間がかかる。
なら──
「私が消してあげる」
静かな囁きが、月明かりの下で溶けていく。
炎に呑まれるのは──お前の方。
「綺麗に燃えてね、ロザリア・ヴァレンティーノ」
ここから第二章「ブランド誕生編」がはじまります!
一章で婚約破棄されたロザリアが、ソレイユやダミアンと共に新しい挑戦を始めます。
……だけど、スタートからなんだか不穏な気配。
ロザリアとソレイユの奮闘、そして「ある女」の暗躍。
噂と陰謀が入り乱れる社交界で、彼女たちはどう戦うのか──。
ぜひ見届けてください!
今日、もう一本更新します!




