魔物退治
第2部の1話から少し間があいてしまい申し訳ありません。
2話目をお楽しみください。
「魔物はどれくらいいるの?」
「はっきりとはわかっていないが、数十はいるようだ」
「そんなに?」
「ああ、このままにはしておけないから、頼んだよ」
「じゃあローズスパイラルのみんなにも手伝ってもらおうかな」
「もちろんだよ」
リズが親指を立ててウィンクした。
「よし!それじゃあ行こうか!」
ユウトが先頭に立ち、ギルドを出て行ったノア達勇者パーティーの面々。
ナツメとウキが先に偵察に向かう為、外に出ると走って行った。
上空には二羽のハヤブサが旋回しながら付いてくる。
森の入り口に到着すると、ナツメが待っていた。
「どんな感じ?」
「まだ奥まで入ってないので、様子はわからないけど、気配は感じる」
「そうか、それじゃあ入っていくか。前衛はゴルドお願い、その後ろはどスケベ、セリナ、そしてわたし。セレスティアの三人はわたしから離れないで。あとの皆は後方よろしく」
周囲を警戒しながら奥へと進むと、異様な雰囲気がしていた。
複数の何かの鳴き声というか、呻き声というか変な声がする。
その時、ガサガサガサと何かが向かって来る音がした。
「来る!」
ゴルドが剣を抜き、盾を構えた。
「絶対にわたしから離れないで!」
「はい・・・」
ノアが刀を抜き構える。
セリナとユウトも左右に別れ、剣を構えた。
アイナとナディアは木の上から弓を構え、リアナ、エリナ、フィオナの魔導士トリオは後方を固める。
「姐さぁーん!」
ウキが全速力でこちらに走ってきた。
「えっ?」
「ウキ?あのヤロォーー」
走りながらこちらの雰囲気を察知したようで「違うっすぅー」と叫んでいた。
ぜえぜえ言いながら合流したウキは「魔物っす怪物っすぅ!!うじゃうじゃいるっす!!」
「なんだと?うじゃうじゃ?」
ユウトがウキの胸倉を掴んで、持ち上げながら「どんな魔獣だ!」と大声で迫った。
「ウグググ・・・い、痛い・・・痛いっす・・・よぉ」
「どんな魔物だ?どれだけいる?早く言え!」
「おいっ!どスケベ!手を放してやれ!」
「あっ!すまんすまん」
ノアに言われ、手を離すとドサッと地面に崩れ落ちた。
「痛ぇー」
ウキは半べそをかきながら、ズボンの汚れを掃っていた。
「で?その魔物はどれくらいいる?」
「かなりの数がいたっす。それはもううじゃうじゃと」
「どれくらい先にいる?」
ユウトの問いに少し考えてから「かなりの奥っすよ。すぐにこっちに来ることは無いと思うっす」
「そうか、よしそれじゃあこのまま進もう」
ノアの一言で、全員の空気が引き締まった。
誰一人として異を唱えない。
この森では、判断の遅れが命取りになると、全員が理解していた。
奥へと進むたび、木々は太く枝は低く垂れさがり、視界を遮っていた。
差し込む光は徐々に無くなってきて、昼間だというのに薄暗い。
足元には根が這い,苔に覆われた石が転がる。
一歩踏み外せば体制を崩し、そこを狙われる。
ゴルドは盾を前に構え、意識的に歩幅を落とした。
――ガサッ。
右手の茂みが揺れ、すぐに左でも同じ音がした。
「何かくる!」
ゴルドが正面、セリナが左ユウトが右へと別れ、剣を構えた。
姿はまだ見えない。
森の奥から、湿った呼吸音が混じり始めた。
「なんか方向がバラバラですね」
後方のオルフェリアが呟く。
「囲い込む気だ」
その瞬間前方の茂みが大きく揺れた。
影がひとつ、またひとつと木々の間を縫うように動く。
ノアは足を止め刀を構え直した。
「ゴルド、前に出すぎないで」
「了解」
「エリナ、この子たちを守ってね」
「任せて!」
「絶対にわたしから離れないで」
「は、はい」
三人は慌てて位置を詰め、ノアの背中を見失わないように必死に目を凝らす。
次の瞬間、森の静寂が完全に破れた。
低い咆哮と共に、黒い影が一斉に飛び出してくる。
血を蹴る音、枝を折る音、湿った吐息。
「来たっ!」
ノアのその一言が戦闘開始の合図だった。
茂みの奥から現れたのは、黒い獣だった。
四肢低く構え、影がそのまま形を取ったかのような姿。
夜でもないのに、体毛は夜の闇に溶け込み、輪郭だけが揺らいで見える。
「シャドウウルフだ」
セリナが低く告げた。
白く光る牙。
黄色がかった瞳が、こちらの動きをじっと窺っている。
一体だけではない。
前方、左右そして後方。木々の影の中で同じ光がいくつも瞬いた。
地面を蹴る音はほとんど聞こえなかった。
気づいた時には、すでに距離を詰められていた。
「数が多い」
ゴルドが盾を構え、歯を食いしばった。
シャドウウルフたちは一斉に飛びかかってこない。
距離を保ち、円を描くようにゆっくりと包囲を狭めてくる。
獲物が逃げ場を失うまで、待つ。
そんな知性を感じさせる動きだった。
「焦らないで」
ノアの声が静かに響く。
「こいつらは隙を待ってるだけ。
次の瞬間、一匹が地面を蹴った。




