第2部 連邦国
お待たせしました。
第2部開始します。
仇のナジムの首を跳ね、連邦国を潰す覚悟をするノア。
「セリナ!指揮官を探して!」
「了解!」
家族を殺害した憎き仇のナジムの首を撥ねたノアは、今回の襲撃兵団達の指揮官を捕らえるつもりでいた。
――次は連邦国だ・・・。
姉と両親を殺すよう指示したのは、連邦国だったとわかっている。
ナジム・・・そう、わたしの家族を抹殺するため、中嶋和也として甘い言葉で姉に近づきそして・・・。
思い出すと、ノアの全身が震えた。
だが、ひとつ疑問があった。なぜ姉玲奈なのか・・・。
そして家族。
絶対に許さない!
必ず滅ぼす。わたしの家族を襲ったこと、後悔させてやる。
ノアはまだ残っていた魔物を次々に斬り伏せながら、敵陣に入って行き指揮官を探した。
「指揮官はどこだぁ――っ!出て来ぉ――い!」
刀を片手に、叫びながらどんどん進んで行く。
ノアの放つ強大なオーラに、そこにいた兵士たちは遠巻きにし、ただ見つめることしかできないでいた。
「姐さぁーん!」
振り向くとウキとナディア、それにオルフェリアの三人が走って来た。
「どうした?オルちゃんまで」
「セリナさんたちが、向こうの森の奥で指揮官らしき男を見つけたって」
ナディアが指を差しながら言う。
「よし、行こう」
森の奥へ行ってみると、セリナのパーティー“ローズスパイラル”に捕らわれた男がいた。
「セリナありがとう。この男が指揮官?」
「あぁノア、恐らくね」
ノアという名前を聞いて男の身体が一瞬ピクッとした。
「ん?恐らくって?」
「まだ口を割らないんだ」
「そうか・・・」
捕らえられた男を見下ろしながら「あんたの名前は?」と聞いても、黙ったままだった。
「まあ何も言わないよね、じゃあ連れて行くか」
「そうね、ここでこんな事してても仕方ないし」
セリナはそう言いながら男を立ち上がらせた。
「逃げようなんて思うなよ、まあこれだけ囲まれていたら無理だろうけど」
男の両脇にセリナとノア、その後ろにウキとナディア、その周りを他のメンバーが囲んでいた。
男は足を引きずるように歩きながら、終始うつむいたままで視線を上げようとはしなかった。
「さっきから一言も喋らないっすね」
ウキが後ろから、少しだけ緊張をごまかすような軽い口調で言う。
「まぁ無理もないでしょ」
ナディアが肩を竦める。
「自分が誰に捕まったかわかってる顔だもん」
歩幅も呼吸も、恐怖でわずかに乱れているのがわかる。
森を抜け、街に戻って騎士団庁舎に連れて行った。
騎士団長に引き渡し、一旦ギルドに向かった。
セリナ達と一緒にギルドに入っていくと、そこにいた冒険者たちから思わず拍手が起こった。
「な、なに?」
いきなりのことでポカンとしていると、ギルド長のココネが奥から出てきた。
「おぅノア!よくやった!」
「ココネさん!これはなに?びっくりしたよぉ」
ノアに近づき肩をポンと叩き「あんたらがこの町バルデックを救ってくれたんだから」と言ったあと、ノアの手を取り大きく掲げた。
その瞬間再び大歓声が。
「だから恥ずかしいって!」
顔を真っ赤にして、本当に恥ずかしがっているノアを見てオルフェリアが「ノア姉さま可愛い・・・」とポッとした表情で見つめていた。
「ところでノア、みんなと奥へ来てくれる?」
「わかった」
ココネに促されメンバーとギルド奥の応接室に入った。
「さっき、どスケベいや、ユウトから聞いたが敵の指揮官を捕らえたんだって?」
「うん、捕まえて騎士団に渡してきた」
「そうか」
「何も話さないんだよね、黙ったままで」
「そりゃそうだろう、簡単に口を割るとは思えないよ」
「後でまた行ってみる」
「ああそれがいい。お前がいた方が威圧になるからね」
「何それ」
「お前ほどの恐ろしい奴は、傍にいるだけで恐怖を感じるだろ。特に敵にはな」
その言葉に周りのメンバーたちは、ウンウンと頷いていた。
「なに?そんなに怖い?」
「怖いっす!絶対敵にしたくないっすぅー!」
ウキが叫ぶように言うと、ナディアも同意した。
「だって初めて会ったときに、オイラボコボコにされたっすから」
「まぁでも仲間にはメチャクチャ優しいけどね」
と付け加えた。
「わたしはただ悪い奴が許せないだけ。みんなの平和な暮らしを邪魔する連邦国が許せない。だから絶対に叩き潰す!」
拳を握りしめ強く言い放つ。
「いいねぇ、ギルドも全面的にあんたらの力になる。まぁこのままでは終わらないだろうからね」
「ありがと」
軽く何かを食べたかったが、今日のこの騒ぎでギルドも町もごった返していて、食事どころではなかった。
ナディアとギルドを出て街を歩いていると、全ての店が閉まったままだ。
街を見て回ってから、騎士団庁舎へと入って行った。
騎士団長ゲイルに連れられ、捕らえた指揮官がいる部屋に入った。
「相変わらず何も喋らないの?」
「見ての通り、ずっとダンマリだ」
男は俯いたままで、顔を上げようともしなかった。
「ふぅん・・・。ねえあんた、いつまで黙ってるつもり?」
男の顎に手を添え、顔を上げさせた。
ノアの顔を見た瞬間、明らかに男の目に怯えがあった。
ノアは何も言わず、ただじっと男の目を見つめた。
顎に手を添えたまま、ずっと・・・。
静寂だけが部屋の中を支配し、時間が止まったかのような感覚に陥った。
ゴクっと唾液を飲み込む音が響き、次第に男の表情が怯えから恐怖へと変わった。
男が思わず目を逸らし「わ、わかった・・・言うよ、全部言う」と額に汗を滲ませ、慌てて言った。
「よし、じゃあ喋ってもらおうか」
そう言うと、テーブルの反対側に回り、向かいに腰かけた。
騎士団長のゲイルがノアの隣に座ったところで、ドアをノックする音がした。
「ん?」
ガチャリとドアが開き、ギルド長のココネが入って来た。
「わたしも同席させてもらうわ」
「うん、もちろん」
男はポツリポツリと語り始めた。
やはり今回の襲撃兵団の指揮官だった。
「・・・実は、こんなに早く戻ってくるとは思わなかった・・・」
「ん?なにが?」
「あんた・・・だ。想定外だった」
「じゃあやっぱりわたしがいない間に、このバルデックを落とそうと?」
「そうだ」
「目的はなんなの?」ココネが聞いた。
「この国を潰すこと・・・だ」
「なるほどね・・・」
連邦国の狙いは、経済的にも一番発展しているバルデックを攻略すれば、後の都市は簡単に落とせるだろうというものだった。
そこでネックになるのが、ノアの存在だった。
だからノアをバルデックから遠ざけ、その間に襲撃するというものだった。
だが、それだけではなかった。
ノアを南へ追いやったのは、そこで亡き者にするためだった。
しかし、南の小国に着く前に戻って来てしまったのが、誤算だったようだ。
「わたしのこと舐めすぎだよ。そんな簡単に殺せるとでも?」
「そうだな、あんたのことを甘く見ていたようだ。あんたの強さを見た時、とんでもない奴を怒らせたと・・・今だって怖くて仕方ない・・・」
そこまで言うと、項垂れてしまった。
「まあそうだな、お前たちは絶対に怒らせてはならん相手を怒らせた。この代償は高いぞ」
ゲイルがノアの顔を見てニヤリとした。
「あんたら連邦国の連中に、わたしを敵に回したこと後悔させてあげる」
ノアは男の目をじっと見つめ“これ以上なにかするならわかってるよな”とでも言うような目付きだった。
「もう何もできないさ・・・」
「そこでだ、あんたに相談なんだが」
ゲイルが切り出すと、男は少し驚いた顔をして「なんだ?」と聞いた。
「簡単なことだ。俺たちが連邦国に攻め入る時の手引きをして欲しい」
「なんだと!俺に裏切れと言っているのかっ!」
男は少しイラっとした口調で大きな声が出た。
「こっちにはこのノアがいるんだぞ?これでもう連邦国の終わりは見えてると思わないか?」
「確かに・・・彼女の強さは本物だよ・・・絶対に勝てないと思った・・・」
「強いのは私だけじゃないよ、ユウトだって下手したらわたしより強いかも。それにリアナなんかも凄い魔導士だし、この三人だけで一国くらい潰せるよ」
ふふんと自慢気に語るノアの姿を見て、男は一層の恐怖を覚えたのだった。
「わかった・・・あんたらに協力するよ。ただし俺の身の安全は保障してくれるか?」
「もちろん、このわたしが必ず守る。でも逆の事をしたら容赦しない。その首が胴体から離れるよ」
「あぁわかってる、そんなバカな真似はしない」
「よし!決まりだね。後はこのゲイルと話して。わたしはギルドに戻るから」
そう言ってココネとともに騎士団庁舎を出て、ギルドに向かった。
――連邦国・・・ぶっ潰してやる!
決意を新たにギルドに戻って来たノアは、今後を話し合うためメンバー全員を集めた。
ノアのブレイズリンク、セリナのローズスパイラルそして、新人冒険者パーティーのセレスティアも集まっていた。
会議室に全メンバーが集まったところで、ノアが前に立ちみんなに言い放った。
「わたしたちは連邦国を滅ぼすため攻めに行く。みんな来てくれる?」
「もちろん!」
「オイラはどこまでも姐さんについて行くっす!」
ナディアとウキが真っ先に声を上げた。
他のメンバーも続けて「よしっ!」と拳を握った。
「セレスティアのみんなは?」
一番奥で静かにしていたセレスティアの三人に声を掛けた。
「あっ、わたしたちも行きたいのですが、まだまだ実力不足ですので足手まといになるかと・・・」
「なら実力を付ければいい」
「えっ?」
三人は、目をパチパチさせながら何を言っているの?という表情をした。
「出発まではまだ時間がある。情報を集めないといけないからね。それまでにわたしが鍛えてあげる」
「ノアさんが?直接?」
「そう。覚悟してね」
ニッとしたノアに恐怖を覚えたセレスティアの三人だった。
「連邦国がこのままおとなしくするとは思えない。いつ何時ちょっかいを掛けてくるかもわからない。ここバルデックの襲撃に失敗した奴らは次はどこを狙ってくるかもわからない。だからしっかりと準備しておく必要がある」
ノアの言葉にみんな頷く。
そこへギルド長のココネが入って来た。
「勇者パーティーとローズスパイラルに、おぉ!新人ちゃんたちもいるじゃない、いいねぇ」
「ココネさん、この新人たちを鍛えるために適当なクエストはない?」
「あるよ」
「即答!!!」
新人三人の声が揃った。
「実は、この近くの森で連邦国の奴らが連れて来た魔物がまだまだいるんだ」
「なるほど、あれかぁ。よしそいつを片づけに行こうか」
「えええぇぇーーっ!それって大丈夫なんですか?」
「あんたたちの実力を上げるには、ちょうどいいと思うよ?」
「わかりました。頑張りますっ!ちょっと心配ですけど・・・」
セレスティアのエルナが下を剥き指を絡ませ、イジイジしていた。
「わたしらがいるから心配ないよ。この世界の最強パーティーだぞ!その仲間になるんだから頑張れ!」
「ハイッ!!!」
決意に満ちた表情をして、ノアの目を見つめるエルナ・フェリナ・ティリアの三人だった。




