帰還
前回よりかなり間が空いてしまい申し訳ございません。
今回で第1部の終了です。
第2部は年明けの予定です。
引き続きお読みいただければ幸いです。
「魔物の数は?」
「確認できているだけで100くらいかと・・・恐らくそれ以上は・・・」
「100以上か。絶対に町に入れるな!何とか食い止めてくれ!」
騎士団庁舎に集まったギルド長ココネと、セリナ率いるローズスパイラル、それにカイ率いるブレイヴフォース、そして有力な冒険者が集まっていた。
騎士団長ゲイルの激が飛ぶ。
「ノア達はルーヴェル村にいるのよ。さっきあの例の鳥にメモを入れて送り返した。戻るまでに早くて3日はかかるだろう」
ココネがそう言うと、セリナが「わたしとカイがいれば大丈夫よ、まかせて!」
「ああ、任せてくれ!よし、みんな行こう!!」
カイがみんなに声を掛けると「おぉー!」と声を上げ、一斉にギルドを飛び出していった。
「なんなんだこの魔物の数は・・・!」
街の外れにある川の向う岸に魔物の集団が押し寄せていた。
その数、数百。
「ねえカイ、なんかおかしくない?魔物があんなにおとなしいはずがない」
「あぁ俺もそれは感じていた。何かに支配されているような・・・」
「うん、誰かが支配してるよ間違いない」
「ちょっと待て、あれは・・・」
「ん?あっ、誰かいる・・・」
魔物の群れの中に時折姿を見せる人影があった。
「やはり操られているようだ」
「どうする?このまま一気に攻め込むか?」
「そうね・・・まだおとなしいうちに叩いた方が・・・」
その時。
ゴォォォーン ギャーーーン 魔獣たちが突然一気に攻め込んできたのだった。
「くそぉー!行くぞ!!」
「絶対に街に入れるなー!」
「おぉーっ!!」冒険者たちは一斉に魔獣の群れの中に正面から突っ込んで行き、続けて騎士団も冒険者たちの両サイドから突っ込んで行く。
そして、魔獣の群れの後方からは連邦国の兵が押し寄せて来ていた。
後方から火の点いた矢が大量に打ち込まれて来て、騎士たちも冒険者たちも右往左往しながら、火の矢を叩き除けながら魔物に向かって行く。
ローズスパイラルのアイナが弓矢で魔物を打ち抜いていくと、フィオナが雷撃魔法を魔物に落とす。
カイとセリナがズバッズバッと魔物を切り裂いていくが、次から次へと湧いてくる魔物にイライラしていた。
「キリがねえな・・・」
「なんかどんどん湧いてくるんだけど・・・どうなってんの?」
「このままだと町に入られてしまうぞ」
城壁をよじ登って超えようとしている魔物に壁の上から弓矢で射ち落とす騎士。
フィオナがバキッバキッっと雷撃を落とすが全く追いつかない。
「この魔物たちを操っているやつを潰すしかないぞ」
「クソォー斬っても斬っても湧いてきやがる・・・」
「おいカイ!向うを見てみろ!」
セリナが指さす方を見ると、また新たな魔物の集団がこちらに向かってきていた。
「なんなんだ・・・っ!クソォー!このままでは突破されてしまう・・・」
その時、ボンッボンッという音と共に空から火球が降り注いできた。何発も何発も。
その火球は地上に着弾するとドンッと爆発し辺りを火の海にした。
ヒュンッと風を切る音が聞こえたかと思うと、二羽の鳥は急上昇しそのまま今度は急降下を開始し、平行飛行するとまたボンッボンッと火球を発射した。
辺り一面が火の海になり、魔物の焼け焦げた死体が転がっていた。
「あれは・・・ノアのハヤブサじゃない?」
セリナが呟くと「そうだ!ハヤブサ君とハヤブサちゃんだ!」とカイが叫んだ。
地上からハヤブサを落とそうと弓を引くが、あまりの速さのため全く当たらない。
ヒュンヒュンと飛び回り、上空から火球を撃ち込むので、見る見るうちに魔物が減っていく。
「すごい・・・こんな力があるなんて・・・」フィオナが空を見上げて呟いた。
連邦国側も攻めあぐねていた。
「なんなんだあの鳥はっ!先行させた魔物のほとんどがやられてしまったじゃないか!!」
グググ…と指揮官らしき男が苦り切った表情で叫んだ。
「はい・・・あの鳥のせいで軽はずみな行動ができなくなっています・・・」
「あの鳥を撃ち落とせんのか!」
「無理です!あまりにも速すぎて・・・それに、どこからともなく現れて火球弾を撃ち込んで、その後にすぐ姿を消す、そしてまた急に現れて・・・全く狙えません!」
「それなら何とか隙をついて、あの城壁を超えることはできないか?」
部下の顔を睨みつけながら言った。
「わかりました・・・難しいでしょうが、なんとかやってみます!」
「魔物をもっと増やせばあの鳥もそっちに掛かりきりになるだろう。その間に残った魔物と兵士であの壁を越えればいいだろ!なんとしてでもこの町、バルデックを潰すんだ!!」
「わかりました。夜のうちに集めておきます!」
その頃、バルデック側では・・・。
「よし、夜明けとともに一斉に仕掛ける!」
騎士団長ゲイルが力を込めて叫ぶ。
膠着状態のまま夜が明けた。
「連邦国の動きが気になりますが、行きますか?」
周りの騎士たち、そして冒険者たちも今にも飛び出して行きそうな勢いだった。
「よし行くか!」騎士団長が声を掛ける。
「行きましょうっ!」血気盛んな騎士たちが、拳を振り上げ気勢を上げた。
「行け―――っ!!」騎士団長ゲイルが大きく手を振り叫んだ。
「おぉぉぉーーーーーっ!!!」
騎士団、冒険者が一斉に駆け出して行った。
「指令!奴らが突っ込んできます!」
監視をしていた部下が司令官の下に駆け込んできた。
「なんだと!?この状況でかっ!よし、迎え撃て!」
「はっ!」部下の兵士は敬礼して走って行った。
なんとしてでもバルデックを落としたい、いや落とさねばならんのだ・・・。
バルデックの兵士、冒険者たちが一斉に連邦国側の陣地に突っ込んで行った。
空からはハヤブサの二羽が旋回を繰り返し、いつでも攻撃するぞといった様子だった。
これで完全に守り切ったと思ったその瞬間、森の奥からドーンという地響きが鳴り響いた。
「なんだ!?」
「あっあれっ!!」
騎士団の一人が森の奥を指差したそこに見えたのは・・・。
「なんだあれはっ!!」
巨大な“なにか”がこちらに近づいてくる。
ドーン・・・ ドーン・・・
森の木々を薙ぎ倒し“それ”は近づいてきた。
「なんなんだあれはっ!バケモノか!!」
森の奥から姿を現したそれを見て、誰もが言葉を失った。
“それ”は・・・人の形をしていた。
体長30メートルほど。
岩と金属で作られた巨人が、二本の脚で大地を踏みしめている。
一歩、一歩。
それだけで地面が沈み、森が砕けた。
「ゴ、ゴーレム!?」
「違う・・・」
誰かが、掠れた声で呟いた。
「あれは・・・ディザスター・クラス(災厄種)だ!」
「お待たせして申し訳ない司令官殿」
「おぉーこれはナジム殿、待ちましたぞ。これで我々の勝利ですな」
静かに司令官の背後に近づくと、落ち着いた声で話しかけた。
「これは壮観ですなぁ・・・」
司令官は目を細め、満足そうに頷いた。
「これぞ連邦国が誇る切り札。《災厄種》が出た以上もはや勝敗は決しましたな」
ナジムは何も言わず、ただ前方を見つめていた。
黒い巨影がゆっくりと歩みを進める。
その進路の先にあるのは、バルデックの街だった。
ハヤブサたちが空から攻撃を仕掛けるが、全く歯が立たない。
翼に宿した火炎が赤い軌跡を描いて災厄種へと降り注ぐ。
爆炎。
だが止まらない。
災厄種が燃え上がる装甲に意を介さず、一歩また一歩と前進した。
その巨椀が城壁に触れた瞬間。
ドォォォォン!!
バルデックの城壁が大きく崩れ落ちた。
「まずい!街に入られるぞ!!」
兵士たちの叫びに交錯する。
冒険者たちが前に出るが、その影はあまりにも巨大だった。
――その時。
遠くから風を切る音が聞こえた。
馬車の隊列が止まるのが見え、飛び出して来た人物がいた。
地面を蹴り、一直線に駆け込んでくる影。
「遅れてごめん・・・!」
聞き慣れた声だった。
「ノア!!」
振り返る間もなく、彼女は前に出る。
迷いはない。
「リアナ!」
「うん任せて!」
リアナが杖を振り上げた瞬間、空気が歪む。
「爆撃弾魔法―――全力!!」
災厄種の足元で、幾重にも連続して爆発が起きた。
巨体が揺れ、ついに巨体が止まる。
「今だ!!」
次に前に出たのはエリナだった。
「雷よ・・・!」
空が裂け、稲妻が一直線に落ちる。
ガァァァァァン!!
雷撃が災厄種の上半身を貫き、装甲が大きく剝がれ落ちた。
そこへ、ノアが一歩踏み込む。
勇者の剣が静かに光を放った。
「・・・終わりだ」
一閃。
光が走り、巨大な人型兵器は、真っ二つに切り裂かれた。
上半身がゆっくりと崩れ落ちる。
地面を揺らしながら、災厄種は完全に沈黙した。
戦場に静寂が戻った。
ノアは剣を下ろすと、振り返らずに言った。
「次は・・・向こうだね」
視線の先には連邦国の陣地。
「行こうみんな!」
「おぉーーーー!」
ノアの一声に呼応するように一斉に掛け声が上がった。
混乱する兵士の中、一人だけ動かずに立つ男がいた。
「ナジム・・・」
名を呼ばれ、男はゆっくりと顔を上げた。
「まさかここまで来るとはな・・・」
二人は戦場の只中で向き合う。
言葉はいらなかった。
次の瞬間ノアは踏み込むと、ヒュンと空気を切り裂く音がして、光と影が交錯し・・・。
首が宙を舞った。
ナジムの身体が力なく倒れる。
ノアは剣を納め、ただ一言だけ呟いた。
「これで一つ」
戦争はまだ終わらない。
だが・・・。
復讐は確かに進んだ。
第1部 完
第2部開始までの間、恋愛モノを書きますので、ぜひ読んでください。




