策略
「これは旅を急いだほうがよさそうだ・・・」
刀を背中の鞘に納め、行商隊のリーダーに「急ごう!」と声を掛けた。
――嫌な予感しかしない。
「ノア姉さま私・・・不安しかありません・・・」
「心配しなくていい・・・わたしがこの国もみんなも必ず守る!なんたって、わたしは勇者だからね」
翌日レナークに到着したノア達一行は、早速聞き込みを開始した。
しかし、ここでも何も情報は得られなかった。
「やっぱり何も出ませんね・・・」
エリナがはぁ~と大きく息を吐くと、項垂れた。
「さてどこかで何か食べようか」
「そうですね、お腹がすきました」
小さな食堂を見つけ、そこに入り食事をしながら今後の話をした。
「これだけ聞きまわっても一切情報が無いなんて・・・本当に動いてるのかな?」
運ばれてきた肉巻きを齧りながら、ナディアが誰に言うでもなく呟いた。
テーブルの上には、肉巻き、野菜と魚を煮たもの、それとなにやら得体のしれないスープ。
「まずいなここ・・・」ぼそっとゴルドが呟く。
「でもこの肉巻きはうまいっすよ、何の肉かわからんっすけど・・・」
スープを飲んでいたエリナがブッと吹き出した。
「まぁ食事はともかく、ルーヴェル村行きは急いだほうがいいだろうね。どスケベの話を早く聞きたい」
それを聞いていたフェルナがそっと手を上げる。
「どうしたの?」
「あのぉ・・・どスケベって名前なんですか?」
「そうだよ」
ノアが即答する。
「いや違うだろ!」とゴルドが突っ込みを入れた。
「まぁとりあえずこの後すぐに発つからそのつもりで」
「うん」「わかった」「わかりました」「了解っす」
行商隊と一緒にミレスタの町を発ち、一路ルーヴェル村へと向かった。
翌日、懐かしいルーヴェル村に到着したノア達を乗せた行商隊の一行は、村長の家の前で馬車を停め、村長の家の中に入って行った。
「村長さんお久しぶりです!」
「おぉぉぉノア!いやあちょっと見ない間に立派になったなぁ・・・やっぱりお前さんは勇者だったんだなぁ」
「なんかそうみたいです・・・」と言って笑った。
その時、ナディアの母グレタがやって来た。
「ノア!ナディア!元気だったかい」
「お母さん!ただいま!」
「グレタさん!ご無沙汰してすいません・・・」
「いいよそんなの!それより、なんかすごい大人数だね・・・みんなあんたらのお仲間かい?」
「そうだよみんな私の仲間なの。まだあと二人いるけど、実はこの村で落ち合う予定なんだよね」
「そうなのかい、まぁとりあえずみんなうちにおいで」
村長の家の前でワイワイガヤガヤやっていたら、ほとんどの村人たちが集まっていた。
「おぉ~勇者様だぁ~」「あのメチャクチャ可愛い嬢ちゃんはだれだ?」「凛々しいねぇ・・・」
などと口々に呟いていた。
グレタの家に全員で行き、中に入ってお茶を振るまってもらった。
そうやっていると、玄関ドアをドンドンドンドンと強く叩く音が。
「ん?誰だ??ナディア出ておくれ!」
「はーい」
そう言ってドアを開けると、そこにはユウトとリアナが立っていた。
「おっ!どスケベじゃない!」
「おぉーーーーっ!どスケベ!リアナ!よくここが分かったな」
「ノアッ!大変なことになったっ!!」
ドアが開くなりいきなり押し入ってきた。
「どうしたの?」
「バルデックが襲撃されてる!」
「えっ!?」
その場の全員がユウトに注目した。
「恐らくノアの留守を狙っての襲撃だろう」
「ノアお姉様どう・・・」
そこまで言って、オルフェリアは言葉をやめた・
ノアの顔が次第に険しくなる。
怒りに満ちた表情になり、その目が光った。
「嵌められた・・・」
「今なんと?」
「私たちは嵌められたんだっ!」
「くっ!」
ゴルドが拳を握りしめた。
「あのやろぉぉぉーーーっ!!絶対にぶっ殺してやるっ!!」
怒りが頂点に達し、テーブルをドンッと叩いた。
「急いでバルデックに戻ろう!」
「よしっ!」「おぉー!」
「グレタさん、やっと会えたのにごめんなさい・・・」
「落ち着いたらまたゆっくり来ればいいさ。それよりもこの国を守っておくれ」
「もちろん!必ずまた帰ってきます」
「あぁ待ってるよ。ナディア!しっかりノアを支えるんだよ」
「任せてよ!じゃあ行ってくる!」
「よしっ!みんな行こう!」
行商隊から馬車2台を借り、馬に強化魔法をかけバルデックへ急行した。
その間、バルデックのギルドへハヤブサを飛ばし、情報を集めていた。
それによると、先に魔獣を差し向け町を混乱させ、その後に数千の兵士で攻め入って来るようだとのことだった。
「今も魔獣に襲われているってことだよね?くそぉーこの移動時間がもどかしい・・・」
「そうよね・・・転移魔法でも使えればいいのだけれど・・・あっ!」
「ん?どうした?」
何かを思いついたのか思い出したのか、リアナが「ハヤブサくんたちっ!」と大声で言うと、ヒューッと指笛を鳴らし二羽を呼んだ。
バサバサバサと馬車の中まで入って来た二羽のハヤブサ、リアナの腕に止まりお互いの嘴を合わせ合うハヤブサたち。
「この子たちを呼んでどうするのですか?」
オルフェリアが心配そうな顔をしながら聞いた。
「この子たちも魔物だってこと忘れてない?」
「リアナ、まさか・・・」
ノアは理解した。リアナが考えていることを。
この二羽のハヤブサは普通の鳥ではない。
紛れもなく魔物なのだ。
「それでどうする?」
ノアはリアナがハヤブサたちに何をさせようとしているのかは、何となくわかっていた。
「攻撃させる」毅然と言い放った。
「できるの?」
「できる!」
「なるほど、私たちが着くまでの間このハヤブサに 足止めさせるのね」
「そう、この子たちは火炎魔法が使えるのよ。だから空から火炎弾をぶち込む!」
「ほう・・・それは凄い!早速飛ばしてくれ!」
「わかった」
リアナはハヤブサ二羽に火炎の強化魔法をかけ、バルデックに向け空に放った。
「頼んだよハヤブサ君ハヤブサちゃん」空を見あげノアは呟いた。
ボンッ!ボンッ!と空気を叩く音を残し、二羽は飛び去った。
残り1話で第1部の終了です。
12月からは第2部の始まりです。
いよいよここからが「ノアリベ」の核心に入ります。




