ハヤブサ君とハヤブサちゃん
「じゃあ早速」と言ってギルド長ザリオと共にカウンター奥の応接室に入って行った。
ザリオにこれまでのことを一通り説明した。ノアたちが連邦国側の刺客に襲撃されたこと、その際のリーダーの男から得た情報を基にナジムと言う男を追って、こちらにやってきたこと、そしてその男がノアの仇だと言うことを。
「そのナジムと言う男の足取りは、わかっているのか?」
「全く・・・」
「そうか・・・」
「こっちミレスタに立ち寄った形跡はない?」
「今のところは無いと思うが・・・どんな奴なのかがわからんからな」
「確かに・・・」ユウトが腕を組み何かを考えているようだった。
「おそらく顔も変わっているだろうし、まぁしばらくはここに滞在して情報を集めるよ」
「そうだな、わかった」
「ちょっといいか」とユウトが手を上げてノアに問う。
「なに?」
「全員がここにいても仕方ないだろう?これだけ人数がいるんだ、二手に分かれて情報収集したらどうだ?」
「それはいいけど、連絡はどうする?こっちにはスマホがないんだよ?離れたら連絡ができないよ」
「それはそうだが・・・」ん・・・とユウトが考え込んでしまう。
その時リアナが「あのぉ・・・それなんだけど、いい方法があるの」と遠慮がちに言う。
「ん?なに?」
「ちょっと窓開けていいですか?」と言いながら窓の傍に寄り、全開にして指笛をヒューと吹いた。
すると、どこからともなく二羽の鳥がリアナのもとへと飛んできて、腕に止まった。
「えっ?なになに?かっこいい・・・」それを見て興奮するノア。
「わぁ可愛いぃ・・・!」とオルフェリアも興奮していた。
「これは・・・鷹?」とエリナが聞くと「ううん、これは隼よ」と一羽をエリナの腕に移した。
「隼かぁマジでかっこいいなぁ・・・」とまじまじと、エリナの腕の上の隼を見つめるノア。
「こう見えてこの子たちは魔物なの」
「えぇぇぇーウソッ!こんなに可愛いのに・・・?」目を見開いて驚くエリナ。
「魔物って言ってもなにも暴れたりしない、ただメチャクチャ早く飛べるの」
鳥にえさを与えながら語り続けた。
「山に入って修行してた時、すごいスピードで飛んでるこの子たちを見つけたの。これは使えると思って餌付けして捕まえて、私の使い魔にしたのよ。そして、強化魔法をかけてさらにスピードアップしたわ」
フフンといった感じで自慢げに話すリアナに、オルフェリアが「ナツメ姉さま、その子たちにお名前はあるのですか?」とニコニコしながら話しかけられると、ナツメは舞い上がってしまった。
「い、いや、な、なま、なめ、あっ!な、なまえは、ハヤブサくんと、ハヤブサちゃん・・・」
「なんだその安直な名前は!」ノアがすかさずツッコみを入れる。
「あっ!ごめん・・・なにも浮かばなくて・・・」
「まぁ名前はいいや。それで?強化魔法でどれだけ速くなったの?」
「マッハ・・・」
「は?」「えっ?」
転生組のメンバーは目が点になっていた。
「マッハぁぁぁぁーーーーっ???」転生組の全員の声が揃った。
それ以外のメンバーは頭の上に?マークが付いている。
「なんで鳥がマッハで飛べるんだ?」
「もともとこの子たちはすごいスピードで飛んでたのよ。そこでちょっと強化魔法をかけてあげたら、とんでもないことになって・・・」
「あのぉ・・・すんません・・・まっは?ってなんすか?」
ウキが素朴な疑問を投げる。
転生者はもちろんわかっているのだが、ここ異世界ではそもそも速度の概念がない。
馬車か徒歩しか旅の手段がないので、歩くよりも馬車のほうが早く行けると、その程度の認識しかないのだった。
「ん・・・」ノアが腕を組んでうなる。
「簡単に言うと、音より早いってことだ」
「音より?」オルフェリアが首をかしげる。
ノアは指を立てた。
「雷ってピカっと光って、後からゴロゴロって鳴るよね?あれ、光のほうが早いから先に見えるの。マッハはあのゴロゴロより早いってこと。音が追い付けない速さってこと」
「はぁ?なんかよくわかんないっす・・・」ウキの口がポカァンとなっていた。
「えっと・・・バルデックからここミレスタまで馬車で3日かかるでしょ?」
「そうっすね・・・」
「この子達たら“あっ”という間に行けちゃうってことよ」
「なんか・・・想像できないっす・・・」
「まぁ実際に飛んでる姿を見ればわかるんじゃない?」
「そうっすかね・・・」
ウキはまだ納得というか、理解できないでいた。
ノアがパンと手を叩いて「よし、それじゃあこの子達に連絡係をやってもらうとして、リアナとどスケベは先に南へ向かって欲しい。私はここでできるだけ情報を集めたい」
「わかった、じゃあハヤブサ君を連れていく」
「あと、バルデックのギルドにもこの子達のこと知らせたいんだけど・・・」
その時ギルド長のザリオが「ああそれなら」と手を上げ「ギルドに任せてくれ、ちょうどバルデックに向かう荷があるんだ。それに手紙を持たせよう」
と提案した。
「おぉそれは助かる、ありがとうギルド長」
と軽く礼を言った後リアナに「この子達にどう指示すればいいの?」と聞いた。
「うん、この子達の脚に帰巣印と言うものを付けているの。それと同じものをノアさんにも渡すから持っていて。私が持っているのが1番、渡すのが2番ね、この帰巣印目指して飛ぶのよ」
「なるほど・・・じゃあ1番に行け!って言ったらいいの?」
「そうそう、この子達は知能が高いから、ある程度の言葉は理解できるの」
「すご!」ナディアが感嘆の声を上げた。
「この子達の力はこんなものじゃないよ。もし周りに敵がいたら上空で輪を描く、敵影がなければそのまま降りてくる」
「そんなこともできるの??」さらにナディアが感嘆の声。
「あのぉリアナ姉さま・・・このハヤブサ君とハヤブサちゃんはご夫婦ですの?」
「そうなのぉオルちゃん!だからこの子達の子供も期待できるのよ!」
「まぁ素敵♪」目をキラキラさせながらニコっとした。
「さでしょぉー!♪」満面の笑みのリアナ。
先ほどの緊張しまっくていた時と打って変わって、馴れ馴れしい態度に全員があっけにとられた。
「よ、よし、さあ行動に移そう!それじゃあリアナとどスケベユウト頼んだよ」
「どスケベ・・・まぁわかった、よし行こうかリアナ」
「うん、行こう!しっかりと掴んでくるよ」
「私たちも情報集めだ!絶対に追い詰めてやる!」
ギルドの前でユウトとリアナの二人と別れ、ノア達は再びギルドに戻りギルド長ザリオに許可をもらい、冒険者たちへの聞き込みを始めた。




