ミレスタの町へ
ギルドの正面に行商隊の馬車が7台整列していた。
「リーダー、今回もよろしくね」
「おぉーノアちゃん、こっちこそだ。勇者様が護衛してくれるんだ、こんな名誉なことはないよ」
この行商隊はルーヴェル村を出る時に、乗せてもらった商人たちだ。
あれ以来ミレスタの町からバルデックに来る時にも帯同しているので、すっかり仲良くなっていて、何かにつけて協力してもらっていた。
商人たちの荷馬車は4台、ノア達には2台とセリナ達に1台の合計7台の大所帯になった。
ノアのパーティーは8人と大人数なので2台に別れていた。
「さてと、それじゃあそろそろ出発しようか」リーダーの一声にみんな頷く。
若い冒険者たちが見送りに出てきて「行ってらっしゃい!」と声を上げた。
馬車の隊列がゆっくりと動き出す。
車輪の音が石畳を鳴らしながら、南へと向かう旅が始まった。
“仇”を追う旅へ。
ギルドを出発して暫く走った頃。
「ノアお姉様、私弓使いになろうと思いまして、ナディア姉様に指導してもらっているのです」
「ん?弓使い?」
「はい、私だけいつも戦闘に参加していないのが気がひけて・・・」
「そんなの気にしなくていいのに」
「そうですよ、姫様がそんなことしなくても・・・」
南へと向かう馬車の隊列はバルデックの町を抜けて、川沿いの街道を走っていると田園風景が見えてきた。
「のどかな所ですね・・・」エリナが風景を眺めながらポツリと呟いた。
そんな時にオルフェリアが言い出したのが先ほどの言葉。
「私も冒険者になったのです!それに勇者パーティーの一員です!ただ守られているだけでは嫌なのです!!」
「なるほど・・・そんな風に思ってたんだ」
腕を組みながらウンウンと頷き「オルちゃんは光魔法が使えるよね?」と聞いた。
「ハイ!王族に伝わる魔法ですが、回復には使えますけど、攻撃には向いてないので、私も攻撃でお役に立ちたいのです!!」
「まぁ弓なら後方からだから、危険は少ないか・・・よし!決めた、頑張れオル!!」
「ありがとうございます!ノアお姉様♪」
「ナディア頼んだよ」
「うん、任せて!一流の弓使いにするから!」
「よろしくお願いしますね!ナディア姐様♪」
ニコッとするその無邪気な笑顔にノア、ナディア、エリナ、ナツメ、リアナは思わず魂を抜かれた。
一方ユウトたちは・・・。
「ユウトさんはノア姐さんを前から知ってたんすよね?」
「そうだよ。まぁ向こうはオレのことなんて知りもしないけどね」
「そうなんすね、それってねっとはいしんとかいうやつっすか?」
「そうそう、ノアちゃんはすごい人気があったんだぞ!日本で一番の配信者だったんだ。それはそれはメチャクチャ可愛かったんだから」
「ユウトさんって姐さんのこと好きなんすか?」
「えっ!?いや、好きってわけでは・・・ただのファンだよ・・・」
強く否定するユウトだったが、そんな姿を見てゴルドは「さすがどスケベ殿だ・・・」とボソリ。
途中で小さな村に立ち寄りながらこの三日間道中何事もなく、ミレスタの町が目前に迫っていた。
「ミレスタか・・・久しぶりだね・・・ねぇナディア」
「そうだねーノアさんが冒険者としてスタートしたところだもんね」
「そうなんだよね、なにもわからなくてナディアに色々教えてもらったんだよ」
「へぇ~ノアさんにもそんな時があったのね」
リアナが意外だという顔をしていた。
馬車の隊列はミレスタの町への入り口に差し掛かり、徐々に周囲が賑やかになってきた。
「やっと着いたね・・・」大きく伸びをするナディア。
「馬車の旅は何度やっても慣れない・・・あぁ新幹線に乗りたい!」
ノアがそう言うとエリナも「確かに!」と強く同意した。
ノアたちだけミレスタで常宿にしていた「風車亭」の前で降り、馬車の隊列はそのまま商人ギルドへと走っていった。
宿屋の入り口を開け中に入り「女将さぁ~ん!ご無沙汰してますぅ!またお世話になりますよぉ~!」と大声で叫んでみた。
奥から女将がでてきて「あらぁノアちゃんじゃない!元気そうね」にこやかな笑顔で迎えてくれた。
「またお世話になりますね」ペコリと頭を下げたノアに倣って、他のメンバーも慌てて頭を下げていた。
「ていうか、いきなり来て申し訳ないんですけど、部屋はあります?」
「ええと・・・前より人が増えてるねぇ・・・3部屋いるかな?」
「うん、3人ずつで3部屋だね。空いてるかな?」
「もちろん大丈夫だよ!」
「ありがとう!さて、みんな荷物を置いたらギルドに顔をだすよ」
「了解!」全員が一斉に返事した。
まずギルドに出向いて情報を集めなければならない。
冒険者たちにも直接話を聞かないといけないし、とにかく今はどんな情報でも欲しい。
絶対に見つけ出してやる!
メンバー全員がギルドの扉を開けて、中に入っていくとその場にいた冒険者たちの視線が一斉にノア達に注がれた。
「なんだあの団体さんは・・・」
ノアを先頭にギルドの中央を通りカウンターへと進む。
自然とその場にいた冒険者たちが脇により、通り道ができていた。
「おいおいおい!あれってノアじゃないのか!?」
「えっ!ノアってあの勇者の・・・・?」
「ああ・・・そのノアの・・・勇者パーティーだ!」
羨望の眼差しで見つめるもの、あんな女に何ができる!と蔑むもの、古参の冒険者はノアを知っているが、新参者や他国からやって来たものなどは、ノアの実力を知らない。
中には、ギルドのトップパーティーであるカイ率いる、ブレイヴフォースが留守であることをいいことに、我らこそがトップで最強だ!と息巻いている連中もいる。
そういうやつらに限ってちょっかいを掛けてくるものだ。
ノアたちを完全に舐め腐っていた。
ノア達の前に立ち塞がり「おいおいおいおい、勇者様だか何だか知らないが、このギルドでは俺たちがトップだ。そのトップの俺たちになんの挨拶もないのかよ」
――なんだ?このテンプレどおりの展開は!あぁめんどくせえ・・・。
そう思いながらもノアは、怒りに満ちた顔で一歩前に出たユウトを制し、
「あぁ・・・そうなんですね・・・私らはブレイズリンクです・・・よろしくお願いしますね」
と満面の笑みで応えた。
「それならちょっとあっちで酒の酌でもしてくれや」
グヒヒヒと卑しい顔をノアの顔に近づけ「なあお嬢ちゃん!」と腕を捕ろうとした時、カウンターの奥からこのギルドの長、ザリオが現れた。
「やめとけやめとけ・・・ノアに指一本でも触れてみろ、その頭が胴体とさよならするぞ」
と言ったあと「やあノア!元気そうだな!」と手を上げながら近づいてきた。
「あぁギルド長、ご無沙汰してます」とペコリとした。
「まぁお前達、命拾いしたな。このノアに勝てる奴は、この国にはいないよ・・・」
「まさか・・・」そんなわけないといった顔をしていた。
「まぁそういうわけだから、私たちには手出ししない方がいいよ。そうでないと・・・マジでぶっ殺すぞてめぇー!!」
一喝すると、ヒィィィーと慌てて逃げて行った。
あはははとギルド中で笑いが起こった。
「こんなこと前にもあったような・・・」フム・・・と考えていると、
「あぁそれはオレ達とのことだな・・・」とゴルドがボソリと呟いた。




