バルデックへの道中。
王都を出発してからかなりの時間が経ち、昼近くになっていた。
馬を休ませる場所を探していたところ、川べりにちょうど良い広場っぽい所に出たので、そこに寄ることにした。
みんなが一斉に馬車から降り、早速昼食の準備を始める。
騎士たちが馬を川へ連れて行った。
「あぁ~腹減ったっす!」と馬車から降りたウキは、ニコニコしているオルフェリアに見つめられ、それに気づくと一瞬で固まってしまった。
「あっ、は、あっ・・・お、お腹す、す・・き・・・ま・・・す・・・」
あたふたしているウキを見て「お前なに言ってんの?」と頭をパシッとはたいた。
「痛っ!っす」
そんなやり取りを見てオルフェリアは爆笑していた。
「ウキさんって面白い方ですね・・・ウフ♪」
その笑顔にまた固まってしまうウキだった。
食事の用意は、ナディアとエリナがやってくれていた。
領主の食事はお付のメイドと執事が準備して、騎士は騎士で準備をしていた。
ゴルドとユウトは周囲を警戒し、リアナとナツメもまた少し離れて警戒をしていた。
「用意できたよぉー」とナディアの声がかかり、みんな集まって来た。
そこでノアは「食べる前にちょっと聞いて欲しい」と言い、オルフェリアを紹介する。
「今度メンバーになったオルちゃん、前から冒険者に憧れていたんだって。仲良くしてあげて」
「みなさんよろしくお願いします。あのぉ気を使わないでくださいね。ノア姉さまのようにオルちゃんと呼んでくださいまし」
「オルちゃんって・・・」
ユウトが呟くとすかさずノアが「おい!どスケベ!変な目で見るなよ!おかしなことしたら打ち首だからな!」
「するわけない!オレを何だと思ってるんだ?」
「あの・・・ノアお姉さま、どすけべとは?」
「ブッ!」その場にいた全員が吹き出した。
「ギャハハハ・・・あぁぁぁお腹痛い・・・ハハハハハっ」一番笑っていたのはノアだった。
「こいつは異常性欲者の変態なんだ」
「間違いねぇ!」ゴルドも同調する。
「はぁぁぁ・・・このパーティーでのオレの立場が・・・」
ユウトが涙目になっていた。
ワイワイ言いながら食事をしていると、領主がやってきて「楽しそうですね」と笑顔で声をかけてきた。
「そろそろ出発するよ。オルフェリア様大丈夫ですか?疲れていませんか?」
「はい大丈夫ですよ。すごく楽しいです」
と笑顔で応える。
「それは良かった。旅はまだまだ続きますから、あまり気負わないでくださいね」
「ありがとうございます」
馬が繋がれ一行は出発した。
旅は調に続き、これまで道中なにも問題はなかった。
馬車の中でもワイワイと騒いでいた。それによって、新規メンバーと旧メンバーの仲が急接近し、オルフェリアとも”姫“という感覚がなくなり、完全に仲間となっていた。
姫様扱いもなくなり、オルちゃん呼びに変わっていて、ユウトは“どスケベ”呼びに固定された。
「ところで、ゴルドさんって年齢は?」
唐突にユウトが聞いた。
「オレは29だが・・・」
「えっ!?年下?なんでそんなに貫禄あるの?」
「そうでしたかオレのほうが年下ですか。いや、貫禄と言われても・・・」
「どスケベは何歳?」ノアが興味なさそうに聞く。
「オレは34歳だ」
「へえ~」素っ気ない返事を返す。
「興味ないなら聞くな!」
「ところで、この三人の中で誰が一番好きなのさ」ニタ付きながらノアがユウトに振る。
「はぁ?誰でもない!ただ楽しかったから通っただけだ!」
「それなのにわざわざ遠い金沢や川越に?新幹線を使って?」
「あのぉノアさん、その前の世界の話の中で、かなざわとかわごえとか言うのは地名だなとなんとなくわかるのだが、そのしんかんせんと言うのは?」
ゴルドが真剣な顔で聞いてきた。
「時速300キロ近い速度で走る乗り物だよ」
「は?じそく300きろとは?」
「ああ新幹線というのは、高速鉄道だよって言ってもわからないよね?」
「まったく・・・」
「そうだね・・・この馬車の走ってる速度が、そうだな・・・10キロ位かな?つまり、この馬車の速さの30倍の速さで走る乗り物だよ」
「30倍!?」
「そうそう、だから王都からバルデックまで、この馬車で5日も掛かるよね?休み休みだけど。でも新幹線なら休みなしで、朝王都を出発してお昼前には、バルデックについてるのよ。もっと言うと、昼前にはバルデックの家でのんびりしているよ」
「なんと!」驚愕の表情を浮かべるゴルド、ナディア、ウキ、オルフェリアだった。
「そんなすごい世界から来ていたのですね・・・信じられん」
目を丸くしながらゴルドが呟く。
「それならこちらの世界なんて退屈でしょう」
「そうでもないよ、こっちはこっちで楽しいし」
「ね?」っと召喚された四人に同意を求めた。
「そうだな、それなりに楽しんでるかな?」とユウトが言うと他の三人もうんうんと頷く。
そうこうしているうちに日も傾き、空が茜色に染まった頃、小さな村に到着した。
一行は馬車を降りると、一軒の宿屋に向かった。
宿屋に入るや否や、宿屋の娘がオルフェリアを見て声を張り上げた。
「ひ、姫様ぁぁぁぁーー!!」
その大きな声に村人が次々と集まり、宿の前はたちまち人だかりに。
「姫様がお越しに?」「王都の姫様が・・・なんと光栄な!!」
オルフェリアは顔を赤くして「えっ・・・その・・・こんばんは・・・」と慌てふためく。
ノアは頭を抱えながら「オルちゃん・・・あかん・・・バレバレや・・・」と思わず関西弁でぼやいた。
その時、ヴァルディス領主が一歩前へ出た。
「静まれ!皆の者!」
低く響く声に場が一瞬で静まる。
「確かに姫様はご同行なされている。だが、これは国の大事でもある。騒ぎ立ててはならん」
村人たちは顔を見合わせ、やがて深々と頭を下げた。
「さすが領主様だな」
ノアがポツリと呟き、オルフェリアは安堵したように微笑んだ。
その夜は村人たちが食材を持ち寄り、ささやかながら温かい歓迎の宴が開かれた。
オルフェリアは緊張しながらも、ノアの隣で「お姉さま・・・これも冒険者のひとつなのですね」と目を輝かせていた。




