新たな仲間、そして帰還。
控室でワイワイやっていると、王宮の案内役だという女性が現れ全員が控室を後にした。
最初に向かった先は、王宮の奥深くにある伝説の間。
重厚な扉を開けば、荘厳な雰囲気が漂う広間。壁には歴代の勇者の名が刻まれ、中央の台座には一本の刀が静かに祀られていた。
その時入口の扉が開き、王と王妃それと姫が入って来た。
「待たせてしまったかな」
王が前へ出ながら「これが代々勇者に託されてきた聖剣だ」と言い、ノアに「持ってみてくれ」と促す。
ノアは前に出て、剣を見つめた。
――完全に日本刀だ・・・鍔は黄金の衣装で飾られている。
ノアが震える手でそれを握り、そっと鞘から引き抜いた。
その瞬間、刀身が光を放ち、部屋全体が白く染まった。
「・・・これが・・・」
ノアの瞳に涙と怒りが宿り、強い決意が胸を満たしていった。
「すごい・・・」その場にいた誰もが感嘆の声を上げた。
「まさに真の勇者だ!」
国王アルデリオスが神聖な空気の中で前に出た。
その表情は、誇りと感慨に満ちている。
「これほどの光を放つとは・・・やはり、この聖剣はそなたを選んだのだ」
重々しい声が伝説の間に響き渡る。
「ノアよ、そなたこそ伝説の勇者の血を継ぎし者。この聖剣と共に再びこの大陸に希望をもたらせ」
「はい!」
ノアの瞳には再び涙が浮かんでいた――今度は、希望の光と共に。
その後、王宮のあちこちを案内された。
なぜか姫が一緒に回りたいと言って付いて来ていた。
図書館には膨大な魔導書や歴代の記録が収められ、ユウトは夢中になって書棚を眺めていた。
広大な庭園では異国の花々が咲き乱れオルフェリア姫がノアの袖を引いて「勇者様、あの花は国外から贈られたのです」と嬉しそうに説明する。
大広間や兵舎では貴族や兵士が敬礼し、ノアは居心地悪そうに頭を掻きながら「なんか落ちつかない・・」と小声で漏らしていた。
夜になり、王宮の大広間では盛大に晩餐会が催された。
豪華な灯がともり、長いテーブルには豪勢な料理が並べられている。
楽師たちが奏でる優雅な音楽の中、アルデリオス王が杯を掲げる。
「勇者ノア、そしてその仲間達よ今宵は歓迎の宴だ。存分に楽しんでくれ」
杯を交わす音と共に場が賑わい、冒険者と王宮の人々が入り混じって笑い声が広がる。
ノアは場違いそうに頭を掻きながらも、出された肉料理にかぶりつき「うん、うまい!」と呟く。
宴が最高潮に盛り上がっている頃、ノアは国王の付き人に呼び出された。
大広間の横にある控室に通され、暫く待っていると国王と姫が入って来た。
「お楽しみの所すまんな」そう言うと、ノアの向かいに姫と共に腰かけた。
「実はお前に頼みがある」
真剣な顔でそう切り出され、ノアは身構えた。
「はぁ・・・」
「このオルフェリアを冒険者にしてやってくれないか」
「はっ?冒険者に?姫様を??」
突然の言葉に驚きを隠せなかった。
「このアルフェリアは、以前から冒険者になりたいと言っておってな、その度にワシは反対してきたのだ。冒険者は危険と隣り合わせ、ましてや王族がやるとなると、色々とな・・・」
「はい…わかります・・・でもどうして今になって、ですか?」
「それは、お前だよ。ノアという冒険者の噂はここ王都にも伝わってきていた。その噂を聞くたびにオルフェリアの気持ちがどんどん強くなっていった。そんな時だ、ノアという冒険者こそが真の勇者だとわかったのだ」
この国王の言葉に少し違和感があった。勇者召喚をしたはずなのでは?と。
その事を尋ねてみると国王は「それはな」と言い、少し間があいた。
「召喚魔法は生きている者には有効だが、お前は向こうで殺害されたんだったな」
「そうですけど・・・」
「だからお前の場合は微妙だったようだ。完全に死亡した直後だった為に、どこに飛ばされたのかがわからなかったのだよ。通常なら王都に来るはずなんだ」
ここまでの話を聞いて、また一つ疑問が浮かんだ。
それならエリナは?彼女も召喚者のはず、それなのに王都ではなくなぜバルデックなのか?
「もう一つお聞きしますけど、エリナはどうしてバルデックに?」
「ん?エリナ君?従者はユウト君たち三人のはずなんだが・・・」
「はぁ・・・まぁ考えるのはやめます!それと姫様の件ですが、承知しました!頑張りましょうね姫様!!必ずお守りしますので」
「あっはい!こちらこそよろしくお願いします勇者様!」
「あの・・・その勇者様と言うのはやめてもらえませんかね・・・なんか体中が痒くなるんで・・・」
「わかりました、ではお姉さまとお呼びしても?」
「はっ!?お姉さま??」
「はい!それと私のことは姫ではなく、オルフェとお呼びください!」
オルフェリアはニコッとしてそう言った。
「では、オルフェ様・・・」
「様はいりません!」
プクッと膨れて見せた。
「わ、わかりました・・・ならば・・・オ、オルちゃんで!!」
恐る恐る言ってみた。
「わぁーーありがとうございますぅ♪」
意外な反応にホッとするノア。
満面の笑みで答えるオルフェリアだった。
その隣で国王も今までに見たこともないような笑顔になっていた。それはまさに父親の顔だった。
朝露の残る王都。王宮の前庭にはすでに出発の準備が整っていた。
馬車が五台並び騎士たちが手綱を握って準備している。
ノアたちは荷を積み込み終え、最後の確認をしていた。
「来るときは四台だったのに帰りは五台になってる・・・」
ナディアが荷物の確認をしながら呟いた。
「人が増えたからね・・・一気に四人増えた!」
「てか、なんでここに姫様がいるの!?」
「ん?あぁオルちゃんも仲間になったんだよ♪」
嬉しそうにノアが言うと「よろしくお願いしますねナディア姉さま!」とオルフェリアがニコっとした。
「ええええーーーーっ!」
思わず大きな声が出たナディアだった。
「てか、オルちゃんって失礼でしょ!」
「いいのですよナディア姉さま、私がお願いしたのですから」
困った顔をするナディアに「ぜひナディア姉さまも、オルちゃんとお呼びくださいませ♪」と言いウフッっと笑った。
「いやぁ・・・・オルちゃんって・・・・はぁ・・・」大きなため息を付くナディアだった。
その時、王宮の大扉が開き、アルデリオス王とセラフィーナ王妃、そしてアレクシオン王子が姿を現した。
オルフェリアはノアの隣で背筋を伸ばし、緊張気味に小さく深呼吸していた。
「ノア頼んだぞ」
アルデリオス王は穏やかな笑みを浮かべながら言った。
「はい、必ずお守りします」ノアは真剣な表情で応える。
領主のヴァルディスが国王一家と各大臣に挨拶し「よし出発しよう!」と号令をかけた。
出立の号令とともに馬車がゆっくりと動き出す。
王宮を離れていく中、オルフェリアは何度も振り返り、手を振る家族の姿を見つめていた。
その横顔は、もう守られるだけの姫ではなく、新しい旅に踏み出す冒険者の顔になりつつあった。




