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『NOA: Reincarnated for Revenge(復讐のための転生)』  作者: mikioneko


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38/52

王都へ

 屋根裏の黒猫を無事保護し、依頼主の老婆に感謝されてギルドへ戻る途中。

 夕暮れの街路に差し込む光が、ノア達の影を長く伸ばしていた。

「なんでネコ一匹捕まえるのにこんなに全力出さないといけないのよ!」

 リズが肩で息をしながら言う。

「ふふん・・・依頼は依頼だからね、お疲れさん」

 ノアが鼻歌交じりに言った。

「ほんとにノアはネコが好きなんだな」

 セリナが半ば呆れながら言うと、リズが「ほんとそれ!」と同調した。

「今日は平和だったね~」

 ナディアが伸びをしながら言ったその瞬間。


《ズバッ!》


 空気を裂く音とともに、ウキの体が吹き飛んだ。

「ウキーッ!」ノアが叫ぶ。

 ウキは壁に叩きつけられ、血を吐きながら崩れ落ちた。

「連邦国かっ!」セリナが叫び剣を抜き、周囲を警戒する。

 路地の奥から現れたのは、黒装束の男達の集団。

 顔を隠し、無言で剣を構える。


「ノアだな。貴様の存在は国家の障害、ここで消えてもらう」

 リーダー格の男が冷たく告げた。


 ノアはウキの元へ駆け寄る。

「ウキ…しっかりしろ!」

「す、すいま…せんっす…姐さん・・・」

 ウキの声は掠れていた。血に濡れた手がノアの袖を掴む。

 その瞬間――ノアの瞳が静かに燃え上がった。

「フィオナ!エリナ!回復魔法をお願い」

「わかった」「まかせて」フィオナとエリナがウキに駆け寄る。


 ――こいつら・・・許さん!!


「みんな下がってて」

 ノアが立ち上がり、ゆっくりと日本刀を抜いた。

 刀身がまるで、意志を持つかのように赤く光り始める。


「お前ら・・・私を怒らせたな・・・」

 刀を構えたその瞬間・・・。

 ノアが駆け出し、ヒュンと空気を切り裂く音だけがその場に残り、襲撃者8人の男達の胴体が真っ二つに切り裂かれ、地面に転がる。

「な、なんだこの速さ・・・!」セリナが目を見開く。

「一瞬で8人を・・・・」呆然と立ち尽くすゴルド。

 全員がただ呆然としていた。


 静寂が戻った路地。

 血の匂いとノアの怒りだけが残っていた。

 ノアは黙って刀を鞘に。

 その刀身は静かに光を収めていた。


 ――ふぅぅぅ・・・ 静かに息を吐く。


「ウキ大丈夫?」

「もう大丈夫っす、すぐにヒールを掛けてもらったっすから・・・でもまだ歩けそうにないっすけど・・・」

「よかった・・・」

「それよか・・・姐さん・・・メッチャかっこよかったっす・・・」

「当たり前だ!私はネコさん探しのノアだ!」

 全員がホッとしたように微笑んでいた。


 セリナがそっと近づき、ノアの肩に手を置いた。

「今のあんた・・・まるで”真の勇者“だったよ」


 急いでギルドへ行き、ギルド長のココネに会い、後始末をお願いするのと、事の顛末を説明した。

「完全に頭にきた!なんなんだよ、あの連邦国ってのは!攻めてくる前にこっちから滅ぼしに行ってやろうか!!」

 怒りが収まらない様子で捲し立てるノアだったが、ココネは静かに腕を組んだまま、ノアを見つめていた。


「あんたの気持ちはわかる。でも勝手に動いてダメだよ」

「わかってるよ。でもこう何度もちょっかい出されたらいい加減切れるよ。ハッキリ私が邪魔だって言ってたよね?」

「まぁ確かに・・・」セリナが頷く。


「それに今回は仲間が傷つけられたんだよ?許せると思う?許せないでしょ」

「その気持ちはわかるよ、でも今は軽率なことはするなよ。あんたが動けば国も動くことになるんだよ。それこそ全面戦争になってしまう。もうノア個人の問題ではないんだ」

「わかったよ・・・、とにかく王都に行けばいいんでしょ?」

「あぁ、まぁどんな話をされるかはわからんが、向こうにも召喚者がいるらしいから、多分その連中と組んで何かするんだと思うけどね」

「でも王都に住めとは言われないよね?イヤだよ?」

「いや、それはわからんが・・・なんで嫌なんだ?王都だぞ?」

「だってネコさん探しできないじゃん」


「さっきまであんなに怒ってたのに、やっぱりネコか・・・」

 セリナを始めここにいたメンバー全員が呆れていた。

「ま、まぁ王都行きの準備はしていろよ」ココネも呆れていた。

ノアは黙って頷いた。

 その瞳には怒りだけではなく、決意の光が宿っていた。




 二日後の朝。


 朝焼けが街の屋根を赤く染める頃、ギルド前には四台の馬車が並んでいた。

 先頭は金縁の装飾が施された豪華な馬車。領主ヴァルディスが乗り込むそれは、まるで移動する王座のような威厳を放っていた。

 馬車の周囲には、銀鎧を纏った騎士たちが配置され、街の人々も思わず足を止めて見入っていた。

 その後ろにはノア達ブレイズリンクが乗り込む乗合馬車。

 木製の質素な車体に、ギルドの紋章が小さく刻まれている。


 窓から顔を出したウキが「姐さん、王都ってネコさん多いっすかね?」と聞くと、

ノアは「いたら全部保護する!」と胸を張った。

さらにその後ろには荷物を積んだ馬車が二台。


 食料、装備、予備の魔道具、などがぎっしりと積まれ、騎士団の従者が手綱を握っていた。

 ギルドの前にはセリナとローズスパイラルのメンバーが見送る。

「しっかりやってきなよ。王様にネコの話はするなよ!」

「それは無理だな!」ノアが笑いながら返す。

ヴァルディスが馬車の窓から顔を出し、静かに言った。

「王都までの道は長い。だが、皆さんと一緒なら心強い旅になるでしょう」

「じゃあ行くよ!」

 ノアが手を振ると、馬車がゆっくりと動き出す。


 石畳を軋ませながら、四台の馬車は街を抜け、王都ゼルフェリアへと向かって行った。

 その背に朝の光が静かに降り注いでいた。


 王都へ向かう隊列は、街道を外れて山間部に入って行った。

 先頭には護衛の騎士たち、その後ろに領主ヴァルディスの馬車、ノアたちの馬車、最後尾に荷物を積んだ二台の馬車が続く。


 御車を務める騎士たちが手綱を握り、執事とメイド二人はヴァルディスの馬車に控えていた。

「静かだな・・・逆に嫌な感じがする」

 ゴルドが周囲を見渡す。

「うん・・・草木の音しか聞こえない」

 エリナも落ち着かない様子で肩を竦めた。


 その瞬間――。


 カシュッと乾いた音。

 次いで雨のような矢が一斉に降り注いだ。

「防げっ!!」

 護衛の騎士たちが叫び、盾を構えて馬車を守る。


 上から飛び出して来たのは盗賊団。だが、その装備は妙に整っていた。

「ただの山賊じゃないな・・・」ノアが刀を抜く。

「連邦国か・・・!」

 前方を塞ぐ盗賊たちにノアとゴルドが前に出る。

 ゴルドが槍で突進を止め、ノアが左右から迫る敵を一閃に斬り伏せた。

 ナディアが矢を放ち、エリナの魔法が爆発する。

「退けぇぇっ!」


 最後の盗賊を叩き伏せ、短い戦闘は終わった。

 転がった死体の一部には、王国の兵と見まがう鎧片が混じっていた。

「やっぱりな・・・連邦国の差し金か・・・」

 ノアが低く呟く。



 その夜、一行は近くの小さな村に逗留することになった。

 村人たちは領主ヴァルディス伯を迎えるため、家々に灯りをともして出迎える。

 子供たちは駆け寄り、ノア達を囲んで目を輝かせた。

「すごい!お姉ちゃん剣士なの!?」

「ねえねえお話きかせて!」


 エリナは笑って子供にパンを分け与え、ナディアは村の少年たちに剣の構えを教えてやる。

「こういうの久しぶりね」

 エリナがポツリと呟いた。

「普通に人と笑いあえる時間って・・・」

 ノアはその横顔を見て、何も言わずに頷いた。



 その夜。


 村の近くで野営した一行。

 焚き火の傍で見張りに立っていたノアは、ふと鋭い視線を感じた。

「誰かに見られてる・・・」

 闇の中、木々の間に赤い光が一瞬だけ揺らめいた。

「誰だっ!」ノアは刀を抜き、飛び込む。


 しかし、そこには誰もいない。

 ただ冷たい風が木々を揺らすだけだった。

「気のせいじゃない、間違いなく誰かがいた・・・」

 ノアの胸に、妙な既視感が残った。

 ――またあの女か・・・?



 村を発って二日目の昼過ぎ、道の両端は深い森に入り、視界が悪くなる。

 馬車を操る騎士が「妙だな・・・。鳥の鳴き声が消えている」と呟く。

 その直後、茂みを割って飛び出してきたのは、黒毛の魔獣ダイアウルフの群れだった。

 護衛の騎士たちが慌てて剣を構えるが、数で押されて隊列が乱れそうになる。

「こ、こいつら数が多すぎる!」


「領主様を守れっ!」

 必死に防戦する騎士たち。だが、ノアがスッと立ち上がる。

 馬車を降りスッと刀を抜いた。


 次の瞬間。

 ヒュンと刀を振ると、狼の首が宙を舞う。


「ひっ!」

「一撃で・・・!」

 恐れと驚きで声を失う騎士たちをよそに、ノアは群れへと歩み寄る。

 群れが牙を剝いて飛びかかるが、刀が舞うたびに血しぶきと断末魔が。

 彼女の動きは流れるようで、まるで舞を舞っているかのようだった。

 やがて、残った魔獣は二頭。

 怯えて逃げようと背を向けたその瞬間、ノアは疾風のごとく駆け抜け、斬撃が光を残す。

 振り返った時には、すべてが沈黙していた。


 森に静寂が戻る。

 ヴァルディスは馬車の窓越しに、その姿を見つめ低く呟く。

「・・・やはり、彼女は只者ではないな」

 騎士たちはただ茫然と、ノアの背中を見つめるしかなかった。


そして、森を抜けた先、青空に映える白き城壁と尖塔が現れる。


 ――王都。


 ついに辿り着いたその光景に、一行の胸は高鳴った。

 旅路はまだ始まりに過ぎない。

 その門の先に、運命の出会いと試練が待っている・・・。


 石畳の道が緩やかに傾斜を描きながら、遠くの城壁へと続いていた。

 その先にそびえる王都の外壁は、まるで時代そのものが積み重なったかのように、灰色の層を重ねていた。


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