ネズミはネコさんに食われろ―!
「近いうちに王都から呼び出しがあるかもしれないから、そのつもりでいて欲しい」
領主ヴァルディスがノアに向かって言った。
「王都?私だけ?」
「そうだね、パーティーメンバーで行ってもらうことになるよ」
「わかりました」
「この私も王都に同行するので、よろしくねノア君」
ニコリとほほ笑むヴァルディスのその目には、どこか言い淀んだ色が宿っていた。
ギルドを出た二つのパーティ―、女子が多いチームなのでワイワイ言いながら歩いていた。
「王都に呼ばれるってことは、国王にも会うってことなのかな?」
ナディアが誰に言うでもなく声を発した。
それに反応したのはセリナだった。
「まあ事情が事情だからね。王様も出てくるんじゃない?」
「なんか大事になってきたな・・・」
「まあ王都に行けるんだったら楽しみにしとこう!王様ってどんな人?」
「いやぁ、誰も王様に会った事ないよ」
「そりゃそうだよね、まあ呼び出しが来るのを楽しみにしとくよ。さぁ!明日もネコさん探しだ!!」
「懲りないやつだな・・・」
翌朝、ギルドに顔を出したブレイズリンクのメンバー達。
依頼掲示板の前に立ち、物色していたら背後から声を掛けられた。
「ちょっと!そこのネコ探し専門さん!」
くるりと振り向くと、セリナが腰に手を当てて立っていた。
後ろにはフィオナ、リズ、アイナの姿もある。
「ネコ探し専門って・・・」
ノアは肩をすくめる。
「図星だろ?」リズがニヤリと笑う。
「ん・・・間違ってはない!」
セリナは,くいっと依頼書を掲げて見せた。
「今日は害獣退治、あんたらも手伝いなさい」
「えっ?私らはネコさんを・・・」
「バカ!今度の害獣退治は数が多すぎるのよ。私らだけではキツい。ギルド長もノア達を連れて行けって言われてんの」
「おぉー、ココネさんが?」
ナディアが驚いて目を丸くしている。
「たまにはネコ探し以外もしろってことっすね」とウキ。
「仕方ない、行くか…どんな害獣?」
「森に住み着いたデカネズミよ。最近繁殖して農家が悲鳴を上げているのよ」
フィオナが地図を広げて説明する。
「よし、今日はネズミ退治して、ネコ探しの名誉挽回といこうか。
「違う意味でネコ探しのノアが広まりそうだな」とリズが小声で呟いた。
森の奥へ進む一行。
木々の間から差し込む薄明かりの中、耳を澄ませばカサカサと落ち葉を掻き分ける音が響く。
「気配多いな」
ナディアが弓を構える。
「ふん、ただのネズミでしょ?」
リズが軽口をたたく。だが、その声の奥には緊張が混じっていた。
次の瞬間。
茂みから赤黒い毛並みの巨大なネズミがぞろぞろと現れた。
牙を剥きギギギと耳障りな鳴き声を上げる。
「デカっ!これがネズミっすか!?」ウキが尻餅をついた。
その大きさは人間の腰の辺りまであった。
「デカネズミって言ったでしょ!」セリナが叫び剣を構える。
《ドォォォォン》火球が前列の数匹を吹き飛ばす。
後方からフィオナとエリナが魔法を飛ばしていた。
さらに木の上からはナディアとアイナが弓を放つ。
だが、森の奥からは次々にデカネズミが迫って来る。まるで湧いてくるように。
《ドォォォォン》《ヒュン、ヒュン》《ズバッ》攻撃の音が止まない。
「なんだこの数!追いつかないっ!」セリナが叫ぶ。
ノアが日本刀を抜き、ネズミの大群に向かって走り出した。
「ネズミはネコさんに食われろっ!」
ヒュンヒュンヒュンと空気を切り裂く音だけが辺りに響き、次々とデカネズミの頭が落ちていく。
「まだまだいるじゃん!エリナ!フィオナ!この奥に魔法をぶち込んでっ!」
「了解っ!!」
《フレイム・ショット!》
ドンドンドンと火球を打ち込む。
デカネズミ達が炎に包まれ、逃げ惑いながら倒れていく。
さらにノアとセリナが突っ込んでいき、残りのデカネズミを次々に斬って行った。
その時、ノアの日本刀が光り輝いていたのを、セリナがしっかりと見ていた。




