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『NOA: Reincarnated for Revenge(復讐のための転生)』  作者: mikioneko


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33/52

ネコ探しのノア

 薄暗い酒場の奥、普段は物置として使われている小部屋。


 湿った木の匂いが漂う中、元トップパーティー《グランザイル》の残党三人が、粗末なテーブルを囲んで座っていた。

 扉が静かに開き、黒い外套を纏った男が入って来る。


「来たな・・・」

 リーダーのグレンが低く呟く。

 男はフードを取らず、そのまま椅子に腰を下ろした。

「お前たち、ノアという女を知っているか」


 その声には感情というものがほとんどなく、ただ冷たい。

「知っているも何も・・・あの女のせいで俺たちは恥をかかされたんだ」

 グレンが唇を歪める。

「そうか、なら話が早い。――あの女・・・ノアを抹殺しろ」


 テーブルに置かれたのは、小さな袋。じゃらりと金属音が響く。

「これは前金だ。成功すれば、残りと連邦国でそれなりの地位と保証を約束する」

「連邦国ねぇ・・・」

 隣のメンバー、細身の魔術師カーレンガ目を細める。

「詳しい話は聞かない方がいい。お前たちはただ依頼をこなしてくれれば、それでいい」


「やる価値はあるさ」とグレン。

「ただし」男は低くくぎを刺した。

「あの女を甘く見れば命を落とす。油断するな、必ず計画を立てろ」

 部屋の隅で腕を組んでいたゴツイ男バルゴが不敵に笑った。

「心配すんな。俺たちがあいつを必ず仕留める」

 黒外套の男は何も言わず、椅子を引いて立ち上がる。

 去り際、ほんの一瞬だけ覗いた口元は、笑っているようにも見えた。





 バルデックの朝は、今日も賑やかだった。

 パン屋からは焼き立ての香りが漂い、通りの屋台では果物や野菜を並べる声が響く。

 そんな中、ノアは花歌交じりでギルドに向かっていた。

「今日はあるかな~・・・、あ、あった!」

 掲示板の端っこ、金峰と同じ位置に貼られた『迷いネコを探して』

 ノアは迷わずそれを剥がし、受付に差し出す。

「これやります!」

「またですか・・・」

 受付嬢が呆れた顔をしたが、笑って依頼書を受け取った。

 ナディアとエリナ、そしてウキが後ろから近づいてくる。

 ゴルドは今日は、ローズスパイラルの害獣退治に同行している。


「ノアさんホント好きだよね」

「まあ、趣味みたいなもんやし」

「趣味で依頼受けるなよ」

 ナディアは肩をすくめる。

 それでも三人は並んで歩き出す。


 道中、行商の馬車が通り過ぎ、荷台の上から顔馴染みの商人が手を振った。

「おう、ネコ探しのノア!今日も頑張れよ!」

「任せとき!」

 笑顔で返すノア。


 ・・・その笑顔の奥に、ほんの一瞬だけ鋭い光が宿ったことに気づく者はいない。


 探すのは白と茶のぶちネコ。

 子供たちが道端で絵を描きながら「ノア姉ちゃん!」と手を振る。

「またネコ探し?」

「そだよ。みつけたら連れて帰るからね」

 小さな頭を撫で、ノアはのんびりと町の裏道へと入って行く。


 陽だまりの匂い、石畳の温かさ、そして・・・。

 ――ここから港まで行く商隊、最近やけに人が多い。

 ネコ探しの足どりはあくまでも軽やかだった。


 探し始めて三十分。

「いないね・・・」

 ノアは腰に手を当て、路地裏を見渡した。

「普通迷子の子ネコってもっと近くにいるんじゃないの?」

 エリナが首をかしげる。

「ネコさんは自由だから、気分次第でどこにでも行くよ」


「いや、自由にも限度ってもんが・・・」

 ナディアが呆れかけたその時。

「姐さん!見つけたっす!」

 ウキが建物の屋根の上を指差す。

 そこにはしっぽをふわりと揺らしながら寛ぐぶちネコがいた。


「おーい、こっちにおいで~」

 ノアが両手を差し伸べるが、ネコはぴょんと反対方向へ飛び降りた。

「うおっ、逃げた!」」

「追えーっ!」

 そこからが大騒ぎだった。

 裏通りを全力で駆け抜けるノア、屋根を飛び移るウキ、角から角へ先回りするナディア、そして途中で魚屋の桶に落ちてずぶ濡れになるエリナ。


 最終的に魚の匂いをぷんぷんさせながら、エリナがネコを抱き上げてゴール。

「はい、任務完了」

 ネコを依頼主に渡し、報酬を受け取った後、ノアは「ちょっと先に帰っといて」と仲間に言い残した。


 路地裏に入ると、ウキが壁にもたれて待っていた。

「例の行商の件、調べたっす」

「で?」

「港の向こうで、連邦国の奴らがちょろちょろしてるんすよ。町の商人の中にも怪しい取引をしてるのがいるみたいっす」

「そうか・・・もうちょい探れ。くれぐれもバレんように」

「了解っす、姐さん」

 次の瞬間、ギルドへ戻るノアの顔は、またあのほんわかとした笑顔に戻っていた。


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