ギルドへの報告
――そして、ひとまず宿屋へと戻った。
宿屋の一階にある食堂は、香ばしい肉と焼き立てのパンの匂いで満ちていた。
疲れた体を椅子に預け、全員がどっと息をつく。
「うわー!いい匂い!」
ナディアが席につくや否やメニュー表を見る前に口をほころばせた。
「オイラ・・・もう食う前に寝そおっす・・・」
ウキはテーブルに突っ伏して弱々しくて手を振る。
「はいはい、まずは水分補給ね」
エリナが彼の前に水差しを置き、ゴルドは豪快に笑いながら背中を叩いた。
「飲めば元気になる!」
「ぐふっ!タンクの腕力で叩かないで欲しいっす!」
セリナは窓際の席に腰を下ろし、外の通りを眺めながら淡々とナイフを磨いている。
ノアはその姿を横目で見ながら、店員に「肉料理を全員分、それとパンとスープを多めに」と注文した。
運ばれてきた料理を前に、全員の目が輝く。
ナディアは骨付き肉にかぶりつき、ウキはス-プにパンを浸して頬張る。
ゴルドは一皿平らげるたびに「次!」と手を上げ、エリナが呆れ顔で「落ち着いて食べなさいよ」とたしなめる。
ノアはスープを口に運びながら、ふと仲間たちの顔を見渡した。
土と汗と戦いの匂いが残る中、それでも笑い声が絶えないーそんな光景に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
--こういう時間も悪くないな・・・
食後、軽く休憩を取ってから改めてギルドに向かうことにした。
そして、再びギルドの扉を押し開けるーー。
ギルドの重い扉を押し開けると、昼時にも関わらず中はざわめきで満ちていた。
入り口近くにいた新人冒険者たちが、泥と血で汚れたノアたちを見て息を呑む。
「お、おい・・・あれ、ローズスパイラルとブレイズリンクだろ?」
「黒い霧の森に行ったんじゃ・・・全滅したんじゃなかったのか?」
噂話がさざ波のように広がって行く。
カウンターの奥で帳簿をつけていたココネが顔を上げ、安堵の息を漏らした。
「戻ったんだね」
彼女は足早にカウンターを出て、真っすぐノアの前に立った。
「ケガは?」
「大したことないよ」
「そうよかった・・・それじゃあどうだったか聞かせてもらおうか」
ノアはココネに、黒い霧の正体と魔獣との交戦、そして最後に現れた謎の女の事を報告した。
ココネは黙って聞き終えると、眉間に皺を寄せた。
「その魔獣・・・王都にも報告しなきゃならないね。それにその女の存在も・・・」
「敵じゃないと思う。でもあの力は・・・」
「わかった。こっちでも調べる。ただ・・・」
ココネの視線が鋭くなる。
「しばらくは単独での森の調査は禁止だよ。あの結界持ちが複数いるなら、次は戻れないかもしれない」
ギルド内の空気が重くなる中、ノアは小さく頷いた。




