黒い霧の森 ➀
ギルドの中庭に、朝の柔らかな光が差し込んでいた。
バルデックのギルド本部、その一角に集まった二つのパーティー。
「さて、準備は整ったかしら?」
セリナが腰に手を当て、まっすぐノアを見た。
「うむ、こっちは万全。ナディアもゴルドも、エリナもウキも気合入ってる!」
「ウキはちょっとビビってるけど?」
ナディアが肩をすくめて笑うと、ウキは「そ、そんなことないっすよぉ!」と慌てて手を振った。
「おはよ、みんな揃ってるな。さて今日の調査だが、北の森林地帯にて黒い霧が数日前から発生しており、魔物の活動が異常化している。ギルドでも一時的に危険指定区域となりつつ場所だ」
ギルド長のココネがみんなの前に出て、今回の調査の件を説明した。
「この調査は王国の上層部にも報告が行く。下手すれば戦争の火種かもしれないから、決して油断しないように!」
とココネが続けた。
全員の顔に緊張が走る。
「よし、行こうみんな」とノアが歩き出す。
「おっ、気合入ってるねぇノア」
セリナが近づき声を掛けた。
「当たり前、これで名前を上げてやる!」
「いいねぇ」
と互いに笑いながら、冒険者たちはギルドを後にした。
彼女たちの目指す先――。
それは、黒い霧が覆う不気味な静けさに包まれた森林地帯。
ノアとセリナ。最強女子チームが、闇の真相に迫る。
ギルドを出て暫く馬車道を歩く一行。
朝の陽ざしは優しく、時折吹く風が頬を撫でる。
けれど進むにつれて少しづつ空気が変わってきた。
「なんかちょっとひんやりしてきたね」
ナディアが自分の腕をさすりながら呟いた。
「黒い霧っていうぐらいだから、霧の魔力がじわじわ漏れてるのかも」
ノアが前を見つめながら言う。
「霧って…髪が広がるから嫌い」
フィオナがぼやくと、リズが笑いながら肩をすくめる。
「それが気になるとか、あんた本当の戦場しらないねぇ」
「うるさい!美しさは女の武器なの!」
二人の会話にアイナが小さく笑った。
「和やかでいいですね、ローズスパイラルは」
エリナが少し羨ましそうに呟くと、セリナが振り向いてウィンクする。
「そっちは仲悪いの?それともイジメられてるの?」
リズが少し心配そうにエリナに聞いた。
「いえいえいえ、そんな事は全然ないです!」
エリナは全力で否定した。
「エリナをイジメるわけないだろ、代わりにウッキーをイジメてるからな」
ハハハと大声で笑うと「ひどい・・・」とウキがイジケた。
「うん、仲良さそうだ・・・」リズがニタッとした。
「うちは仲いいよ。ゴルドに聞いてみなよ」とノア。
「そだね、聞いてみよう!ゴルドさん!」
ニタニタしながらゴルドに向かって、どうなの?と聞いた。
「えっ!いや・・・きのう参加したばっかりなので、まだよくわかってないというか・・・」
「まあそうだよね、まだ誰とも話してないの?」
「そうだね・・・まだまともに話はしてないな…この4人の関係性も知らないし・・・」
「ん?私たちの関係性?」
ノアは振り向いて立ち止まり、ゴルドの前に立ちはだかった。
「ナディアは私を助けてくれた人の娘で、冒険者に誘ってくれたんだよ。そしてウキは私たちを襲ってきた元強盗で、ぶっ飛ばしたやつだし、エリナは前の世界で私と同郷者なんだよ、そして縁があって仲間になった。そんな感じだな」
「前の世界?」
ゴルドは少し驚いた顔をした。
「そう、私とエリナは、こっちの世界に飛ばされた転生者なんだよ」
「転生者!そうだったのか!!・・・あっ・・・」
思わず大きな声が出て恥ずかしかったのか、顔が赤くなっていた。
「ゴルド可愛い・・・♪」
ナディアにいたずらっぽい目で言われ、さらに真っ赤になるゴルドだった。




