悩むナディア
ギルドに戻って依頼完了報告をし、報酬を受け取って次のクエスト探しをしていた。
そんな時、カウンターの奥からギルド長のココネが出てきた。
ノア達を見つけると「やあ!あんたら来てたんだ。ちょうどよかった、受けて欲しいクエストあるんだよ」と声を掛けた。
「どんなクエストなの?」
「あんたらブレイズリンクとローズスパイラルで森の調査をして欲しいんだ」
「森の調査?」
「これはかなり危険になると思う」
「危険?そんなに強力な魔物がいるの?」
「いや、全くわからないんだ」
「わからない?」
「森の奥から黒い霧が発生して動物が狂暴化して、植物を枯らしているのさ。それに何人かの冒険者が行方不明になっている」
「なにそれ?」
「なので普通の冒険者を行かせるわけにはいかない。そこで君たちのような実力のあるパーティーに調査に行って欲しいのよ」
「それは構わないけど、いつ行くの?」
「明日の朝から行ってほしい」
「わかったよ。ところでセリナ達はまだ帰ってないの?」
「いや、私はわからない、受付で聞いたらどう?」
「そう・・・まぁいいや、それじゃあ」
そういうとココネと別れ、飲食スペースのテーブルに座り、先ほどの報酬をみんなに分けた。
「この後どうする?武器屋にでも行ってみる?」
ナディアがそう言うとノアは、
「うん、そうしよう。その前に何か飲もうよ」
とノアが立ち上がり「何にする」とみんなの注文を聞き、厨房に声をかけた。
そしてみんなの飲み物をお盆に乗せ「ハイどうぞ」とそれぞれの前に置いた。
「結局みんなビールじゃん!」ハハハとみんなで大笑いした。
たらふくビールを飲んだ4人は、少しふらふらしながら武器屋に向かった。
ギルドから歩いて20分程の所に武器屋はあった。
大通りから一本中に入った所にその店はあった。
通りの角に構える大きな石造りの建物。
屋根は黒鉄で覆われ、煙突からはもくもくと煙が上がっている。
入り口には重厚な鉄の看板がぶら下がり、そこには“グランフォージ鍛冶店”の文字と、交差した剣とハンマーの刻印。
扉は分厚いオーク材で作られ、鉄の鋲が無数に打ち込まれており、何度も戦場を潜ったかのような風格が漂う。
近づくと金属を打つカンカンという音が響いており、職人の息吹が感じられる。
中に入ると意外に広く、中央には大きな鍛冶台が構えられており、また熱を帯びた鉄の匂いが立ち込めていた。
壁際には剣・斧・槍・弓・鎧などが美しく陳列され、どれも量産品などではなく一点物の気配がする。
床は土でなく、石で舗装されており、足音がコツンと響く硬質な音が心地いい。
奥の壁には”特急鍛冶認定証“や”王国指定職人“などの証書が掲げられており、腕前の確かさがうかがえた。
「すごいなぁ・・・」
ノアは剣を見ながら呟いた。
ふと見るとナディアが弓に見惚れていた。
「これ・・・」
「どうしたの?ナディア?」
ナディアはショーケースに入れられた弓から目が離せないでいた。
その表情は普段の軽やかさとは違い、まるで何かを探し当てたような、いや、呼びかけられたような不思議な面持ちだった。
「きれい・・・」
その弓は、細身で滑らかな弓身には青白い星の紋章が浮かび、光っているように見える。
「嬢ちゃんそれが気に入ったのか?触ってみるかい?」
「えっ?いいですか?」
「ああいいぜ」
ナディアが指を触れた瞬間、星の紋章が小さく瞬いた。
「えっ!?今光った?」
ナディアは自分の胸元に手を当てていた。鼓動が早い。
「なにこれ・・・なんで、こんなに・・・」
ノアが驚いたように眉をひそめる。
まるで弓が彼女を受け入れたように思えたのだ。
「親父さん!これもらう!いくら?」
「おうありがとよ。その弓も嬢ちゃんに持たれたがってるみたいだしな」
「うん、すごくしっくりくるのよ」
「ただし、メチャクチャ高いぞ」
「えっ??い、いくらなの・・・?なんか怖いんですけど・・・」
「10万だ」
「じゅ・・・10万・・・!」
金額を聞いて愕然とするナディア。
「さすがに高いなぁ・・・この刀の倍じゃない」
「ん・・・・・・」
完全に考え込んでしまったナディア。全く買えない金額ではないはずなのだが、何をそんなに迷っているのか。




