迷いネコ探して。
ノアの声に促され、宿を出たブレイズリンクとローズスパイラルのメンバーたちは、朝の賑わいの中をギルドに向かう。
到着したギルドは相変わらず活気に満ちていた。冒険者たちの怒号や笑い声が響き、掲示板の前にはすでに何人かが集まっていた。
ノアが張り出された依頼の一覧を目で追っていく。討伐、素材採取、護衛・・・。
その中に一際目を引く依頼があった。
『急募 迷いネコを探して』
ノアが「これやろう!」と指さした掲示板を見たナディアとウキは「はぁ?」と呆れた顔をした。
「迷いネコ?なんでそんな子供の使いみたいなのを・・・」
「とにかく話を聞いてみようよ」
そういってその依頼表を剥がし、受付カウンターに持って行った。
「この依頼受けたいんですけど」
受付のお姉さんは丁寧に説明してくれた。
「この依頼主はアミュレットっていうお菓子屋さんの方です。詳しくはこちらに書いてありますので、ご覧下さいね」
「了解です!」
「なんかノアさん嬉しそうね」
エリナがニコニコしているノアに言った。
「うん!わたし・・・ネコさん好き♪」
「えっ?そのためにこの依頼を受けたの?」
「うん♪」
「なんて奴だ・・・」ナディアが呆れながら呟く。
「文句ある?」と刀に手を掛けながらナディアを睨んだ。
「あーわかったから!やりますよ!」
「早速この店に行って話を聞いて来よう。早くしないと、今頃迷子になって泣いてるよ」
とノアはさっさと出て行ってしまった。
「まったくもぉ・・・」
呆れるナディアと反対にエリナは「ふふふ」とどこか楽しそうだ。
ウキはただ付いて行くだけだった。
「セリナさん!私らはネコの捜索をしてくるけど、そっちは?」
まだ掲示板を見ていたセリナにナディアが声を掛ける。
「はぁ?ネコの捜索?何それ?」
「ノアさんが、わたしネコさん大好きだからこれやる!って」
「ノアってそんなだったの?まあいいか、私らは別のクエストをするけど」
「そうなんだ、それじゃあ頑張って」
ノア達はバルデックの中心通りにある可愛らしいお菓子屋「アミュレット」にやって来た。
店の外観は白とピンクを基調にした建物で窓際にはカラフルなマカロンが並んでいる。
「きゃわ・・・ッ」ノアが素で漏らした。
「こんなとこに依頼主がいるんやな」
ナディアが眉をひそめたが、ノアはもう扉に手をかけていた。
カランコロン♪と鈴の音が鳴ると、ふわっと甘いバニラと焼き菓子の香りが広がる。
「いらっしゃいませ~あら、冒険者の方ね?」
カウンターの奥から出てきたのは、小柄でふわふわした雰囲気の女性だった。
パッチリした瞳に、瞳に紅茶色の巻き髪をツインテールに結んでいる。
エプロンには“アミュレット”と刺繡が入っていた。
「迷いネコの件で来ました!」
ノアが勢いよく前に出ると「ありがとうございます」とほっと胸を撫で下ろした。
「うちの看板ネコのシュシュが昨日からいなくなって・・・」
「シュシュ!」ノアが即座に食いつく。
「白くてふわふわで、首にリボン付けてて、ちょっと臆病なんですけど、人懐っこくて」
ノアの既に勝ちの表情になっていた。
「よし、絶対に見つけ出す!!」
「お、おう・・・」ナディアがまた呆れたように言う。
その後ノア達は町中を歩き回り「シュシュの目撃情報」を集め始める。
「さっき屋根の上に白い何かがいたぞ」
「さっき市場で見かけたような気がする」
「うちの倉庫で鳴き声がしたんよ」
情報を元に走り回るノア、その姿はもう完全に“ネコ探偵”だった。
薄暗い路地の木箱の上で、震えるシュシュがいた。
「シュシュ見つけたっ!」
ノアはしゃがみ込みゆっくり手を差し出す。
「大丈夫よ、怖くないよ・・・帰ろ・・・」
一瞬警戒したシュシュだったが、ノアの手にすり寄って来た。
アミュレットに帰って来たノアの腕の中には無事なシュシュが。
アミュは涙ぐみながらシュシュを抱きしめた。
「本当にありがとうございました!」
「うん、よかった・・・」
ノアは満足げににっこり笑った。
「まさかあのノアさんがネコ一匹にあんなに必死になるとは・・・」
「可愛いとこあるんすねぇ姐さん・・・」
「やかましいっ!叩っ切るぞ!」刀に手をかけながらウキを睨んだ。
「な、なにもないっす・・・」ウキは震えていた




