ムーンシェル亭
「あっそうそうココネさん、住むところを紹介して欲しいんだけど・・・」
ノアがそう言うと、セリナも便乗して「私らもお願いしたい」と手を挙げた。
「住むところか・・・どんな所がいい?」
「できれば一軒家がいいかな?と思って」
「一軒家ねぇ・・・わかった、探しておくよ。とりあえず今夜は、ギルドと契約している宿があるからそこに行くといい」
「ありがとう・・・よろしくお願いします」
全員がココネに礼を言って、その場を後にした。
ギルドを出た一行は、町の観光に行くことにした。
「ギルドのあるこの辺りが都市の中心なのか?」
ノアがナディアに聞くと「そうだねこの辺りが中心になるかな?この町の役所?みたいなのが集まってるし」
そして、山の方を指さして「ほらあの山の中腹辺りに大きな屋敷があるでしょ?あれがこの町の領主の屋敷よ」
山の麓まで続くメインストリートのその先に、町を見渡すように領主の屋敷があった。
道の両側には香辛料を山積みにした店や金銀細工や宝石を使ったアクセサリー店、衣裳店や雑貨屋、レストランなどがズラッと並んでいる。一本中の通りに入ると、こちらは庶民的な店などがあり、濃厚なスープの香りが漂ってくる。
異世界だなと思わせる武器や防具の店、魔道具の店などもあった。
カフェに入ってゆっくりとお茶を飲み、まったりとした時間を過ごした。
「さてとそろそろ宿に行く?」
「なんて名前の宿だっけ?」
「え~っと、ムーンシェル亭だって」
ナディアがメモを見ながら「貝殻の形をした屋根が目印らしい」と。
「貝殻・・・この通りにあるの?」
「うん・・・」
「あっ!」ウキがいきなり大きな声を上げ、指をさしている。
「見つけた?」
ナディアがウキの指差す方をみると、確かに貝殻のように見える屋根の建物がある。
「あれかなぁ?ちょっとウキ、走ってみて来てよ」
「了解っす!」
そう言い残し一気に走り去った。
「早えぇぇぇ~」
リズが感心したように呟いた。
「姐さーん!ありましたぁ!!」
大声で叫びながら、走ってこちらへ戻って来ていた。
「早っ!」とまたリズが呟く。
「やっぱりあれらしい」サリナがそう言って、ゆっくりと歩き出した。
宿の正面に立ち、建物を見上げた。
「どこが貝殻・・・?」フィオネがぼそりと呟く。
三階建ての石造りの建物の屋根は丸みを帯びた青い瓦のような屋根。
入口はアーチ形をした木製の扉で、上には貝殻のレリーフが飾られている。
扉を開けるとカランカランと鐘の音がした。
木の香りが残る内装にあたたかいランプと炉の火で落ち着いた空間だった。
床は磨かれた木材で、冒険者たちのブーツの音が心地よい。
受付カウンターは冒険者たちで賑やかだった。
「ギルドの紹介で来たんですけど」
女将さんらしい女性が「ハイハイえぇと・・・ローズスパイラルさんとブレイズリンクさんの2パーティーで8人ね。部屋は3階の310と311よ。お風呂はいつでも入れるから使ってね、それと食堂もいつでも使えるけど、食材が無くなったら終わりだから早めにね」
「ハーイ」とみんなの声が揃ったところで、鍵を受け取り、部屋に向かった。
3階に上がり長い廊下を進むと、310と311と書かれた部屋を見つけ、それぞれのパーティーに分かれて中に入った。
部屋の中は素朴だが清潔で、木製の2段ベッドが両脇に置かれていた。
窓からはバルデックの町の夜景が見える。
「お腹空いたなぁ。ここの食堂でご飯食べてお風呂に行く?」
「食堂は早く行った方がいいかもよ」
「そうっすね先に食堂に行きましょうっす」
セリナ達を誘って1階の食堂に向かった。
食堂は数人の冒険者がいたが混んではいなかった。
「何があるんだろう?」
壁に貼ってあるメニューを見つめるリズとフィオナ。
「なかなかいい宿だな、気に入った」
「そうだね、確かにいい宿だ。女将さんもいい人そうだし」
ノアも頷く。
軽く食事をして、あとはみんなで大浴場に行った。
もちろんウキは男湯だが。




