ココネとエリナ
「さて、さっさと登録だけ済ませようか」
ノア達は堂々とギルドのドアを開け、活気ある内部に足を踏み入れた。
床は黒い石材、壁は重厚な木と鉄の装飾。
奥には依頼掲示板と賑やかな受付カウンター。
冒険者たちの怒号、笑い声、食器のぶつかる音。
ギルドらしい喧騒が広がっていた。
「さすがにでっかいだけあって冒険者の数も桁違いだな」
リズが口笛を吹く。
―――その時。
5人組の男たちがノア達を見つけ、ニヤつきながら近づいてきた。
「おっ!なんだなんだ?可愛い女の子ばっかりじゃねえか!」
その中でも一番でかいスキンヘッドの男が酒臭い息を吐きながら話しかける。
「お嬢ちゃんたち、最近来たんだろ?よかったら俺たちとちょっと楽しいこと、し・な・いか?」
ベタすぎるセリフにナディアが即座に顔をしかめた。
「はぁ・・・異世界というのはテンプレ展開しないと気が済まないのか?」
ノアが呆れた顔をしてそう言うと、スキンヘッドの男に近づきさらに「消えろ!」と言い放った。
「なんだとぉー!小娘がっ!イキんなや!!」
とノアの胸倉を掴んできた。
「触るな!このブタやろー!」
「なっ!このガキがぁーーーー!」
殴りかかってきた腕を掴み、そのまま一本背負いで投げ飛ばし、顔面に蹴りを入れた。
ウグっ!と声が漏れたまま意識を失った。
ギルド内がざわつきだした時、パンッ!と空気を切るような手拍子の音が鳴り響いた。
「はーいそこまで!もうやめときな、あんたらが相手できるような子達じゃないよ」
声がした方を向くと、カウンターの奥から鋭い目をした女性が悠々と歩いてくる。
腰まで伸びるワインレッドのの髪、深紅のロングコートを纏い、背筋をピンと伸ばしたまま、誰にもひるまず貫く鋭さ。
その存在感だけで周囲の冒険者が一斉に黙り込む。
「こ、ココネさん・・・」
誰かが小声で呟くと、残っていた男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。
女ギルド長ココネはその様子に眉一つ動かさず、まっすぐにノア達のもとに歩み寄る。
「ふふ、なかなかの歓迎ぶりだったね、うちのバカどもが」
「別に慣れてます・・・」
ノアが静かに応じると、ココネはクイッと口角を上げた。
「聞いてるよミレスタのギルド長ザリオからね」
そう言ってから両手を広げて、
「ようこそバルデックへ、ローズスパイラル!そしてブレイズリング!」
そう言ってノアとセリナを見回し、最後にウキを見てニヤッと笑った。
「ウ、ウキっす」
緊張しているのか、直立不動になっていた。
「これからよろしく!」
セリナ、ノアと握手していき、続けてメンバー全員と握手を交わした。
「ナディアだけはここで登録してるから問題ないけど、他の子達はミレスタで登録してるのよ、そして私だけはまだ仮登録なんだ」
「そう・・・じゃあ本登録しちゃいましょう、それと登録証はそのままでもいいけど、うちの登録証に変えてもいいよ?どうする?」
「じゃあこっちのに変えようか」
セリナがお願いしますと言うと、ほかの皆も頷いた。
「じゃあ登録証を預かるよ、適当にそこら辺に座って待ってて」
ちょうどテーブル席が二つ空いていたので、そこに座った。
他の冒険者たちが、遠巻きにこちらを見ながらひそひそと話している。
そんな時一人の女性が近づいてきた。
「あのぉ・・・」
ん?と全員が注目した。
ノアの前に立つと「えっと・・・ノアさんですか?」と問いかける。
「そうだけど・・・あなたは?」
「えっと・・・なんて言えばいいんだろう・・・」
なぜかモジモジとしていたのだが、意を決したのか一気に捲し立てた。
「私、ノアさんと同じでこっちに転生してきたんです!」
「えっ!?」
全員が絶句した。
「ちょっと待って!私が転生者だって誰に聞いたの?」
「ここのギルド長のココネさん・・・」
「なるほど・・・ギルド長は私達のこと全部知ってるんだ・・・」
「ところであなた名前は?」
「あぁ、えっと・・・エリナです」
肩までのストレートヘアでセンター分けの、艶のある黒髪がきれいだ。
どことなく色っぽくて、男なら一発で惚れてしまうかもしれない美人だ。
案の定ウキの目が輝いて、ソワソワしている。
そこへギルド長のココネがやって来た。
「お待たせ、登録証ができたよ。これでうちのギルドの所属だ」
名前を読み上げ、それぞれに登録証を渡し「期待しているからね!」と。
「それと、このエリナだけど、あんたらのパーティーに加えてやってくれないか?」
「それはいいけど、何ができるの?」
「魔法攻撃です」きっぱりと言った。
「おぉ~それはいい!それじゃあうちに入ってもらおうか。いいよねセリナ」
「あぁもちろん、うちには魔法使いがいるからね。ノアの所ならバランスが取れてちょうどいいじゃん」
「よし決まりだ!」
ギルド長のココネがそう宣言すると、パーティーメンバー表にエリナを追加した。
「さっき転生者って言ってたけどどうしたの?」
「えっと正確には転生じゃなくて、転移?って言うんですか?こっちに飛ばされたみたいで・・・」
「それって今王都で噂されてる召喚されたってことかな?」
サリナが聞く。
「えっと・・・それとどう関係してるのかはわからないんですけど、ほぼ同じ時期みたいなんですよ。私だけ王都じゃなくてこっちに・・・って感じで」
「ふぅぅん、やっぱり関係ありそうだよね」
リズが考えるように言った。
「エリナって完全に日本人だよね?」
「はい、そうです!大阪です」
「えっ?」
「えっ?」
ノアとエリナが見つめ合った。
「私も大阪だよ」
「えぇぇぇぇーーーーーーーー!そうなんですか!」
「なに?同郷?」
ナディアが驚いた表情をしていた。
「そうか・・・それはうれしいなぁ・・・」
「はいわたしもです!よろしくお願いします!」
こうしてノアのパーティーに参加が決まったエリナ、これでメンバーが4人になり攻撃の幅が広がった。
ウキが喜びを爆発しそうになっていたのは、誰が見てもわかっていた。




