バルデックへ ⓶
ノア達を乗せた行商人の馬車の隊列は9台で、そのうちの3台はサリナ率いるローズスパイラルと、ノアのブレイズリンクそれぞれに貸してくれていた。
先頭にサリナとリズが、中間にフィオナとアイナが、そして最後尾にノア、ナディア、ウキが乗り込んでいる。
行商人達の馬車の隊列は一路バルデックに向かって走って行った。
「いよいよだね」
ノアが誰に言うわけでもなく声を発した。
「今後はバルデックを拠点にするんだよね?」ナディアがノアに向かって聞いた。
「うん、もう動く気はないよ。だからずっと宿屋に泊るって訳にはいかないから、どこか家を探さないとね。ところでナディアはどうしてたの?」
「私は部屋を借りているよ」
「そうなの?」
「うん、今は暫く帰れないってことにしてあるけどね」
「そうなんだ・・・どんなところ?」
「食堂の2階が空いてるからって、そこを貸してもらってるのよ」
「いいね、それ」
「ギルドの紹介で貸してもらえたから、聞けばあるんじゃないかな?」
「なるほど、んじゃあ聞いてみるよ」
「あっオイラも借りたいっす」ウキが手を挙げている。
「ていうかさぁ一軒家みたいなのはないのかな?そしたら別々で借りるよりいいでしょ」
「あっ!それいい!うん、そうしよう!!多分あると思うよ」
「よし!探してみるか!」ノアが拳を作った。
一方サリナ達は・・・。
「向こうは大きな町だから仕事も多いだろうね」
「もちろん、しっかり稼ごうじゃない」
馬車の隊列は順調に進み、昼近くになったところで馬を休めるため小休止することになった。
近くに小さな池があり、馬の水飲み場にちょうど良かった。
馬車から降りたウキは「オシッコっすー!」と言ってどこかに走って行った。
「そんなに我慢してたのか?あいつ、どうりでおとなしかったわけだ」やれやれといった顔をするノア。
「さてお昼にしよう」
そう言っていたら達がサリナがやって来た。
「いい所だな、のんびりするよ」と大きく伸びをした。
「ねぇあんた達は住むところどうするの?」
「ん?何も考えてないぞ?まぁ向こうに着いたら考えるよ」
「のん気だなぁ」
「ノア達はどうするの?」
「私らは一軒家でも借りようかと・・・」
「なるほどぉ・・・一軒家ねぇ・・・」
「ずっと宿に泊まるわけにはいかないでしょ」とノアが言うと、ナディアが「ギルドで紹介してもらえるよ」とサリナに言う。
「へぇそうなんだ。やっぱり大きなところは違うんだ」うんうんと感心したように納得した。
そうしていると、なにやら行商人達がざわめき始めた。
「なに?」ざわめいている方を見ると、8人の男たちが行商人に詰め寄っていた。
「あっ!あいつ・・・」と言うのと同時にノアは駆け出して行った。
「おくつろぎ中のところ申し訳ないが・・・あれ?あんたらどこかで見たような・・・」
行商隊のリーダーにナイフを突きつけながら言いかけた盗賊のボスは「そうかぁ前にも会ったな二度も巡り合うとか・・・ん?ということは…まさか!」
「おい!お前ら!!」そう言って近づいていくノア。
「えっ!あんたは・・・やっぱり・・・いらっしゃったのですね・・・へへへ」
と言って「おい!ここはダメだ!引き上げるぞ!!」と仲間に声をかけたのだが。
「どうしたんですボス?こんな女になにビビってんすかぁ!」とノアに殴りかかろうとした。
「おい!やめろっ!!」と叫んだものの遅かった。
ノアの華麗な回し蹴りが男の顔面に決まり、吹っ飛んでいった。
盗賊のボスに向き直り「お前らまだこんなことしてんのか!」
「す、すいません!も、もう二度と・・・二度としません!」
と言ったのと同時に全員が脱兎のごとく逃げて行った。
「なんなんだあいつら・・・」
「なに?ノアの知り合いなの?」
「以前にもこの行商隊が襲われたんよ、さっきの奴らに」
「そうだったの・・・その時もノアが助けたの?」
「ルーヴェル村を出るときに乗せてもらってたんだよ、ナディアと一緒に」
「なるほど」
「その時にぶっ飛ばしたのがウキだよ」
「へぇ~そんな因縁があるんだ」
「ところでウキは?」思い出したように辺りを見回すが、どこにもいなかった。
「オシッコっすって叫びながらどこかに走って行ったまま戻ってこない」
「なにそれ・・・?」とリズとフィオナが呆れた。
その時、こちらに向かって全速力で走って来るウキの姿が。
「あっ!ウキ」ナディアが見つけて指さした。
「姐さーーーん!」
息を切らせながらノアに近づき、ハアハア言いながらその場で跪いた。
「どうしたそんなに慌てて」
「ね、姐さん・・・、こ、この・・・い、池の…ハアハアハア・・・」
「落ち着けっ!」
「す、すいませ・・・ん・・・す」
「どうした?何があった?」
「さっき・・・その池の向こう側まで行って用を足してたんすけど、そこに洞窟があったんすよ」
「ほぉ、それで?」
「その洞窟の中に入ってみたんすけど、そこに記号というか文字というか・・・なんか書いてあったんすよ」
身振りを付けながら説明をしていると、他のメンバーたちが寄って来た。
「なになに・・・洞窟に記号だって?おもしろそうじゃない行ってみようよ」
リズが乗り気だ。
他のメンバーも「行こう行こう!」とすっかり盛り上がっていた。
「それじゃあ行ってみるか!」
半ば呆れ気味にノアは歩き出した。
池の反対側、小高い岩山になっている。
対岸からは、ちょうど影になったところにその洞窟はあった。
「ちょっと暗いな・・・」
「あっ!ちょっと待ってくださいっす、今灯り点けるっす」
そう言って指先をパチンと鳴らすと、ゆらっとした火の玉が現れ、辺りを微かに照らした。
「ウキ!お前そんなこともできるの?」
「ここまでなんすけどね、これ以上おっきいのは無理なんすよ」
奥へと入って行くと、そこにはっきりと文字が書かれていた。
「これは・・・・!」
ノアは驚愕した。




