バルデックへ
家族を殺され自身も殺されたノア。自身の運命を知り、仲間達と冒険の旅に出る。
その後、真実を知ったノアは復讐の鬼と化す。
※「カクヨム」でも投稿しています。
次の日の朝ギルドに行くと、ローズスパイラルの連中がいた。
「おはよぉ。お疲れ」セリナが声を掛けてきた。
「ああおはよ。ちょうどいい所にいた。バルデック行き明日の朝出発だって」
「おぉありがとう!じゃあ準備しなきゃだね。みんな聞いたね、明日の朝行くよ」
メンバー達は「おーー!」と声を上げた。
受付の女性に報酬を受け取りに来た事を告げると、ギルド長のザリオに繋いでくれた。
「おっ!ローズスパイラルとブレイズリンクか!」
奥から出てくるなり大きな声で言った。
「みんな奥に来てくれ、すぐに用意するから」
カウンターの奥の応接室に入り、みんなソファーに座って待っていた。
ウキ以外はみんな女の子なので、気まずそうに小さくなっていた。
「ウキどうした?やけにおとなしいじゃない」
「えっ!いやぁ・・・これだけ女性に囲まれてると、なんか・・・落ち着かないんす」
その瞬間あはははと一斉に笑いが起こった。
「そりゃそうだ!これだけ美人に囲まれたらそりゃ緊張するよ」
ギャル風のリズが楽しそうに笑いながら言った。
その時ギルド長のザリオが入って来た。
「なんだ?やけに楽しそうだな」
「ウッキーが美人に囲まれて舞い上がってんですよ」
「確かに美人ばかりだよなぁ・・・この2パーティーは」
あはははと豪快に笑うザリオだった。
「さて報酬を渡そうか」
お盆に乗せて持ってきた二つの巾着袋を、それぞれのパーティーのリーダー、セリナとノアの前に置いた。
「今回の討伐の報酬は、一人6000リルだ」
「6000!?」素っ頓狂な声を上げたのはウキだった。
「今回は予想外の大物がいたからな。全滅していてもおかしくなかった」
「確かに・・・みんな命懸けだった」セリナが神妙な面持ちをしていた。
「それで?ノア達はバルデックに向かうんだろ?」
「うん、明日の朝発つよ」
「そうか・・・世話になったな・・・」少し寂しそうな表情をした。
その言葉を聞いてセリナが追い打ちをかける。
「それと我々ローズスパイラルもバルデックに拠点を移すよ」
「えっ!!お前たちも行くのか!?」驚愕の表情で叫んだ。
「ああノア達と暴れたくなったんだ」
「そうか・・・、まぁお前達ならバルデックのような大きな町で活躍したほうがいいのかもな」
「うん、ありがとう。また今回のような討伐とかあったら呼んでよ、すぐに駆け付けるから」
「ありがとうよ。じゃあな!」
ギルド長ザリオは軽く手を上げそのまま踵を返し、奥へと入って行った。
セリナ達と一緒にギルドを出たノアとナディアとウキ。
「お金も入った事だし、何か食べに行く?」
「そうしよう」となり、全員でギルド近くの店に入り軽く食事をすることになった。
「明日出発だな、新天地で頑張らないとな!」
セリナがビールのジョッキーを掲げて、ウキの首に腕を絡ませて引き寄せた。
「なあウキ」
「ちょっとセリナさん!絡み酒なんすか?」と言いながら嬉しそうだ。
「ウキ、お前はノアに何度もしばかれたんだろ?それなのになんで一緒にいるんだ?そういうのが好きなのか?」
「なんすかそれ?変態みたいじゃないっすか!違いますよ!オイラはただ姐さんが、この人は只者じゃあないって感じたからっすよ」
「おっ!ウキもそう感じたのか?」
「そうっすよ、だからこの人に付いて行こうと決めたんす!」
「なるほどねぇ・・・まぁ私もノアにはただならぬものを感じたからね。こいつはとんでもない事になるぞ!って」
「なんなの二人とも!私は普通の女の子だよ」
「普通じゃないでしょ」
ナディアが葡萄酒を飲みながら赤い顔で突っ込みを入れる。
「ナディア!あんたお酒飲んでるの!?未成年でしょ!」
「なに?みせいねん?みせいねんってなに?」
「まだお酒を飲んでいい歳じゃないでしょって事!」
「何言ってるの?この国は15歳で一人前だよ。18歳の私はもう立派な大人って事」
「そうなの?」
「それってもしかして前の世界ではそうだったの?」
「ん?」みんなの視線がナディアに注目する。
「おいナディア!前の世界ってなんだ?」ギャルのリズが肉に齧りつきながら言った。
「あっ!」しまったという顔をしながらノアに手を合わせた。
「何かあるのか?隠し事はやめてくれよ。仲間だろ?」
「そうだね・・・知っておいてもらった方がいいかもね。でもちょっとショック受けるかも」
そう前置きをして、これまでのことを滔々と語った。
メンバー達は、特に驚くわけでもなく静かに聞いていただけだった。
「なるほど・・・ノアは異世界人ということか」
「しかし・・・顔面にって・・・」リズが呆れた顔をしていた。
「やっぱりこっちでは異世界から来たってのは当たり前なのか?」
あまりにも普通の反応だったので、逆にノアが驚いてしまった。
「実際に会ったのはノアが初めてだけど、よく聞いてはいたよ。最近王都で召喚者がいるという噂も聞いた」
「王都で?」
「あぁ3人召喚されたらしい。聞いた話だと、連邦国あたりが不穏な動きをしているとかで、それに対応する為とかなんとか・・・」
「連邦国?なにそれ?そこと敵対でもしてるの?」
「長年敵対してるといえばそうだな。そのために過去には勇者という存在もあったらしい」
「勇者?」
「そう。実は勇者も召喚されるんだよ」
「えっ!?」その場にいたみんなは驚いた。
「私、文献で読んだことがあるわ。勇者は位階から来る者って」
フィオナが静かに告げる。
「ってことは、ノアさんがその勇者ってこと?」
リズがまだ肉に齧りつきながら尋ねた。
「そんなわけない!」とすぐに否定し、そして「その召喚された3人っていうのが勇者なんじゃないの?」
「そうなのかなぁ・・・私はノアさんだと思うけど・・・」
ナディアがポツリと呟いた。
「まぁ確かにノアは強い、その可能性も無くはない」
サリナの言葉に全員が頷く。
「その召喚者ってのは王都に呼ばれたんでしょ?私は遠く離れた小さな村の森の中だし、それに死んでるし。まぁでも今は生きてるけど・・・」
家族を殺され自身も殺されて、気づけば異世界に来ていた。
確かに身体能力は格段に上がっている。元々格闘技をやっていたとはいえ、比べ物にならないほど強くはなっていた。まだまだ分からない事だらけだ。
「そう言えば・・・」突然アイナが発言しだした。
一斉にアイナに視線が集中する。
「ちょっと知り合いの冒険者に聞いたんだけど、バルデックにも転生者がいるって・・・」
「転生者ってことは、私と同じように向こうの世界で死んだってことよね?」
「そうだね」
「やっぱりそういう人って多いんだね。実はこっちの世界に来ても違和感がないのよ」
「どういうこと?」ナディアも肉を齧りながら言う。
――この二人さっきから肉ばかり食ってるな・・・。
「前の世界と同じものがこっちにもあるの。例えばそのビール、呼び方も同じだしワインもあるでしょ?それに私のこの刀、これは日本刀なのよ。前の世界の私の国の武器なんだ」
脇に差していた刀を取り出し、みんなに見せた。
「想像以上にその異世界人って多いのかもな・・・。それにそのビールとかも昔からあったわけじゃないんだよ。ここ数年って感じかな?たぶん異世界人がもたらしたモノなんだろう」
「そうなんだ・・・」
やはり相当の数の転生者や転移者がいるようだ。ということは召喚とやらは、日常的に行われているということなのか・・・。
「その歴代の勇者は選ばれたっていうか、代々勇者を輩出している、とある家系があるらしいよ」
「なにそれ?勇者家ってのがあるってこと?」
「まぁそんな感じ?」アイナがおどけて見せた。
あははは・・・!とみんなが大笑いした。
「さてそろそろお開きにして、明日に備えて準備しよう!」
サリナが立ち上がりながら声を掛けた。
それに合わせてみんなも立ち上がり、解散した。
翌朝、ミレスタの町の門前。
朝霧が晴れ、行商隊の馬車に荷物が積み込まれていく中、ノア達のパーティーとローズスパイラルが揃っていた。
「さあ!いよいよだな」
セリナが決意に満ちた顔をして目を輝かせていた。
「なんかやる気まんまんだねサリナさん」
ナディアは、荷物を纏めた袋を確認し終わると最後にバンッと叩いたサリナを見て、クスっと笑った。
「ふふん、旅のスタートは気合が命でしょ?気持ちが負けてたらいいことも寄ってこないだろ」
サリナは胸を張ってウインクしてみせる。
「うわあこの人朝からテンション高い・・・」
アイナが半ば呆れ顔でぼやくと、リズが横から肩を組みながら笑う。
「ま、うるさいのが元気って証拠だな」
ノアが肩をすくめながら前を向いた。
「さあお嬢さんたち、馬車に乗ってくれ!行くぞー!!」
行商隊のリーダーが大声で叫ぶ。
軽やかに朝の風が吹き抜ける中、一行は出発の時を迎えた。




