討伐隊 ⓶
日が暮れかかった頃。
冒険者パーティー達を乗せた各馬車が、とある小さな村に差し掛かり、ここで少し休憩をとることになった。
立ち寄ったサンヴェル村は、小さな農村だった
馬車からみんなが降りてきて、村の広場に集まった。
「この村で暫く休憩をとる。馬も休ませないとな」とギルド長が全員の前で叫んだ。
--ルーヴェル村と似た感じか?
村の雰囲気はやはり、のどかな田舎という言葉で片付くが、どことなく緊張感が漂っているように感じられた。
ギルド長とリーダーのカイの所に一人の人物が駆け寄ってきた。
なにやら三人で話し合っているが、その顔には驚きの表情があった。
各パーティーのメンバーが勢ぞろいし、リーダーのカイが前に出て叫んだ。
「みんな聞いてくれ!この村を急遽、拠点にして活動することになった」カイの隣には、先ほどの人物が立っていた。
その人物が一歩前に出て「私は村長のゾットといいます。みなさんを歓迎します」と言った後「この村は最近魔物が頻繁に現れて、村人も襲われております。冒険者に依頼をしたりしていますが、全く追いつきません。村にやって来た商人も行方不明になったままで・・・」そこまで言うと、項垂れてしまった。
「今村長から聞いた通り、この村の先にある森の辺りに、魔物が大量に発生しているようなのだ、一刻の猶予もない、早速だが今から調査に入る」ギルド長のザリオが厳しい顔をしながら叫ぶ。
「休憩」なんて言葉はすでに誰の頭にもなかった。
カイの通達と、ザリオの声が広場に響き渡った瞬間、各パーティーの空気がピリリと引き締まった。
ノアは剣の柄をそっと握る。
ナディアは周囲の様子を確認しながら、フィオナの近くで魔力の流れを察知。
アイナは既に広場の屋根上に目をやって、狙撃位置を確保できそうなポイントを探していた。
ギルド長のザリオが再び叫ぶ。
「ブレイヴフォース、ローズスパイラル、ブレイズリンク!先行調査としてすぐに出発してくれ!」
「了解!」
全員の声が重なった瞬間、討伐の幕が静かに上がる。
村人たちが遠巻きにしながら、期待と不安の表情を浮かべていた。
カイたちブレイヴフォース、セリナ率いるローズスパイラルそして、ノア・ナディア・ウキのブレイズリンクは、森へと入って行った。
「ウッキー、先に森の奥に行って」
「了解っす!」
ウキはサッと身を屈めそのまま走って行った。
――ほぉ・・やるなぁあいつ・・・。
「この辺りから魔物が増えると思う、気を引き締めて行こう!」カイが叫ぶ。
森の中は想像以上に暗く、樹々の隙間から差し込む光が不規則に揺れていた。
湿った空気の中にどこか鉄のようなにおいが混じっている。
三つのパーティーはそれぞれ右方向、正面、左方向へと分かれた。
「姐さん」
先行していたウキが木の上からひらりと姿を現した。
「来たっす。三体、多分ブラッドファングっすよ」
「もう来たか・・・!」
ノアが剣に手をかける。
その直後、ガサリと草を踏み占める音が響いた。
―――グルルル・・・。
目の前の茂みから現れたのは、二足で立ち上がった狼のような魔物。
血に濡れたような毛並みとギラついた目、牙には黒い液体が滴っている。
三体の魔物が“獲物を見つけた”という目でこちらにその視線を向けた。
「ブラッドファング・・・本当にいたんだな」ナディアが弓を構えた。
その一体がセリナ達にロックオンした。
「リズ!回り込んで!!」セリナの声が飛ぶ。
「りょうーかい!」
リズの双剣が銀色の弧を描き、敵の脚部を削ぐ。
セリナが透かさず首に斬りつける。
「フィオナ!援護を!!」
「火炎裂波!ラグナヴェイン!」
魔法陣から噴き出す紅蓮の魔流、前方のグールごとブラッドファングを包む!
アイナの矢が焼け残った敵の心臓を射抜いた。
ズドンッ!!
胸から黒い血液を噴き出しながら倒れた。
「リアード!前を!!」カイが叫ぶ。
もう一体がブレイヴフォースに襲いかかる
「任せろ!」
ランスが地面を抉りながら突き刺さる。
爪を受け止める金属音――ギギギギッ!!
「ゼイン!右から来てるわ!」
「見えてる!」
風のような動きからの一矢!
牙を開いた瞬間の口内に、光の矢が突き刺さった。
「ウッキーは右!ナディアは左から!」
「了解!」
ナディアが放った矢がブラッドファングの右目に突き刺さる。
錯乱状態になったブラッドファングがノアに襲いかかった。
「姐さんっ!!」
刀の柄に手を掛け、強く握った瞬間、ヒュン!と風を切る音だけが残った。
その場に立ったままのブラッドファングの首が、ドサッと落ちた。
「姐さん・・・・・・・・・スゲェーーーーーーーーッす!!!」
目を見開いて驚愕の声を上げたウキ。
「噂通りあんたすげぇな・・・」カイが近寄って来てノアの肩に手を掛ける。
カイは、メンバーたちを集め「気を緩めるなよぉー」と喝を入れた。
ノア達と他のパーティ―を含めた3パーティーは、さらに森の奥へと進んで行った。




