ブレイズリンク ➀
「それじゃあお金も入った事だし、武器を見に行こうよ」
ナディアに言うと、それがいいとなったので、武器屋に向かった。
「ところでいくらくれたんだろう」と渡された巾着袋を開いてみると、300リル入っていた。
「あのハチを倒した報酬がこれってどうなの?高いの?安いの?」
「う~ん、高い方じゃあないかなぁ?だってあのナイトスティンガーって結構危険な魔物だよ」
「そうなんだ・・・まあ臨時収入ってことで武器屋に行って、それから何か食べよ」
「そうだね!」
――まあこの300リルというのがいくら位なのか、まだ分かってないのだけど。
二人が歩き出した直後、後方から「姐さん!」と声を掛けられた。
「この声・・・まさか!」
振り向くと、見覚えのある顔が・・・あった。
「お前―!またぶっ倒されたいのかぁー!」
「ち、違いますぅぅ・・ちょっ、ちょっと、は、話を聞いてくださいぃぃ!!」
「しょうもない話だったら首から下を切り離すからな」
ノアが鋭く睨むと、男はビクっと震えながら口を開いた。
「あのぉ、オ、オレは、ウ、ウキというです・・・。」
「うき?浮き?雨季?うっきー?あっ!ウッキキーか!猿か!そうかお前は、お猿だったのか!」
「違います!ウキです!!」
「わかってるよ、それで話ってなんだ?さっさと言え!」
「そんな・・・理不尽な・・・」ぼそっと呟いた。
「なんだ!」
「いえ・・・あのぉ、オ、オレを仲間にして欲しいっす!」その場で土下座した。
「仲間?なぜ?お前は盗賊だろうが!」
「盗賊はもう足を洗ったっす!それで、冒険者になったんすよ。姐さんの仲間になりたくて」
「なんで私の仲間になりたいんだ?」
「あの時姐さんにぶっ飛ばされて、気づいたんすよ、この人はただ者じゃあない!って。それで、この人に付いて行こうって!」
「それで、もう改心したのか?」ナディアが聞く。
「ハイ!お願いしますっす!仲間にしてください!」
「お前は何ができるんだ?」
「こう見えて簡単な魔法が使えるんすよ。ヒーラーとして使ってもらえれば・・・。あと、
諜報活動は得意っす」
「・・・ほぉ、役に立ちそうだな」
ノアは少し口角を上げて言った。
「わかった。仲間にしてやるよ、ウキ」
「ありがとうございますっ!!」
ウキは土下座をして地面に頭を擦り付けた。
「それじゃあノアさん、私たちのチーム名決めない?」
「チーム名かぁ・・・何かいいのある?」
ノアが二人に聞いてみたが、二人とも何も無いようで考え込んでいた。
なにか閃いたようにノアが「ねぇブレイズリンクってどう?」というと。
「それはどんな意味なの?」
「炎で繋がる絆かな?」
「ブレイズリンク・・・いいねぇ♪」とナディアは親指を立てた。
「姐さん!オ、オレ感激っす!!新しいチームの立ち上げに参加できて、もう泣きそうっす」
と言いながら本当に、わーわー泣いていた。
「さあ!武器を見に行くよ!」
とウキを蹴り飛ばし、武器屋に向かって歩き出した。
「ひ、ひどい・・・」ウキは道端で蹲っていた。
しばらく歩くと、賑やかな酒場があり、その横の細い路地の奥にその店はあった。
“ベルド鍛冶工房”かなり年季の入った木造の建物だった。今にも倒れてしまいそうな雰囲気の店だが、ギルドの受付で聞いてきたので、間違いはないだろう。かなり腕のいい職人気質のおじさんが一人でやっているそうで、期待して来てみたのだが、この建物を見て「大丈夫か?」と思ってしまったのも事実だ。
ギギギギギィィ――と錆びついた金属の音をさせる扉を開けると、むわっとした熱気を含んだ空気が頬を撫で、金属のにおいが鼻をついた。
――暑っ!
分厚い腕をしたおやじが、上半身裸で火花を散らしていた。
カーン、カーン・・・!
鋼鉄を叩く音が、リズムよく響く。
炉の中では真っ赤に熱せられた鉄が、じりじりと音を立てて燃えている。
おやじは火箸で鉄を取り出すと、真剣な目で形を見極めながら、ハンマーを振り下ろす。
汗が滴り、皮のエプロンに沁み込んでいく。
壁には大小様々な剣や槍、斧などがずらりと並び、どれも磨かれた重厚な存在感を放っている。
「・・・いらっしゃい」
おやじは手を止めず、ちらりとこちらを見ると渋い声で言った。
――ガンコそうなおっさんだな・・・。
「今手が離せねぇから適当に見といてくれ」
そう言われたので、見て回っていると一つの剣に目が留まった。
――これは・・・。
そっと手に取ってみる。
鞘から抜き刀身を掲げてみた。キラリと光るその刀身の美しさに見惚れた。
――これは紛れもなく、日本刀だ!
「おっさん!これいくら?」
「ん?あぁそれか、それは600リルだ」
「600・・・わかった、もらうよ」
あまりの決断の速さにナディアもウキも驚いた顔をしていた。
「早っ!」
ナディアは、もっと見なくていいの?という顔をしていたが、迷いはない。
「これしかない」
「ほぉ・・・嬢ちゃん、あんたなかなかいい目をしてるなぁ、それは東の大陸にある国から持ち込まれたものだ」
「東の大陸?他にも大陸があるの?」
「なんだ知らねぇのか?この国のある大陸とは別に、東にも大陸がある」
「そうなのか。じゃあそこの国の職人がこれを作ったのか?」
「そうだ」ぶっきらぼうに答えるおやじ。
――なるほど・・・それは興味がある。
「その剣は使うものを選ぶぞ」作業の手を止めずに言う。
「ん?どういうこと?」
「“力”の無い者が使おうとしても全く切れない、だが“力”ある者が使うと、素晴らしい切れ味になる。その剣を使えるってことは選ばれし者ってことだ」
と一気に言い、さらに、
「試しにそこにある枝を切ってみな」
ウキに直径10センチほど、長さは1メートルちょっとの枝を持たせ立たせた。
「しっかり持ってろよ!」ノアが声を掛ける。
ウキのゴクッと唾をのみ込む音が聞こえた。
鞘から抜き、構えて「ふぅ・・・」と息を吐き、一気に振り抜いた。
ヒュンと風を切る音と共に、枝は真っ二つになった。
「凄い・・・・!」ナディアが目を見開いて呟く。
「驚いた!・・・なんてこったぁ・・・!!」
おやじは目を見開いて、近づいてきた。
ノアは刀身を丁寧に見て、鞘にしまう。
「ね、姐さん・・・」ウキは茫然と立ち尽くしていた・
「今まで切った奴なんていなかったんだぞ!それよりもなにより、なんだこの見事に綺麗な切り口は!!」
枝を拾い上げ、まじまじと切り口を見ていた。
「嬢ちゃん・・・あんた・・・何者だ・・・!」
「いや・・・普通の女の子だけど・・・」
「姐さん!やっぱり凄い人だったんすね!なんか違うと思ってたっす!」
跪きながら泣いていた。
「嬢ちゃん、名前を教えてくれ!なんてぇんだ?」
「私は、ノア」




