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紅葉ルート最終話

「「おぎゃー!おぎゃー!」」

「おめでとうございます、双子の女の子ですよ」

看護師さんが、産まれたばかりの赤子抱えて俺たちに祝福の言葉をかける。

あれから約5年後、俺と紅葉はあのまま付き合い始めて結婚し、今に至る。

丁寧に清潔なタオルで包まれる赤ちゃん。

さすがに2人は同時に抱けないので、先にお腹から出てきた我が子を両腕で抱き寄せる。

赤めの肌。くしゃくしゃの顔。

髪など、毛はまだ1本も生えていない。

本当に愛おしい俺の、俺たちの子ども。

「お疲れ様。ありがとう、紅葉」

泣きそうになりながらも妻に労いの言葉と感謝の言葉を伝える。

「ありがとうございます、健人さん」

まだ少し苦しそうだ。

「お名前は決められてるんですか?」

看護師さんの質問。

「姉は凍子、妹は凜々です」

「ぷっ」

「なぜ笑う?」

「想像通りだと思いまして」

二人であははと笑い合う。


出産から数週間後、紅葉と凍子と凜々は無事退院した。

検査の結果、健康良児だそうだ。

ミルクを飲ませたり、排泄物の処理、夜泣き。

たくさんの苦労があったが、俺たちは幸せだ。

2人が昼寝している時、俺と紅葉はリビングのソファに寄り添って座っていた。

「健人さん」

「うん?」

「子どもたちにはどう育って欲しいですか?」

「まず凍子は、相手の痛みを理解してもらいたい。いじめなんて決して許さない。逆にいじめられてる子がいたら、真っ先に助けに行く子になってもらいたい」

「凜々は?」

「凜々は、家族の愛情をめいっぱい注いであげたい。毎日が楽しくて、産まれてきて良かったと心の底から思ってもらいたい」

「凜々だけですか?愛情は」

「もちろん凍子にも愛情は注ぐさ。春川凜々と天野冬子が姉妹だったって話はしたよな?」

「はい」

「あの子たちが、あの二人の生まれ変わりかどうかは分からない。けど、天野冬子は贔屓されて育って、春川凜々は蔑ろに育てられたらしい」

「………そうですか……」

「だから!」

「「おぎゃー!おぎゃー!」」

思わず、大声を出してしまう。

その声に反応してか、赤ちゃん用のベットから2人の泣き声が響いた。

「ごめんねー、びっくりしたねー」

猫なで声で2人に謝る。

一通り、あやして落ち着いてから話を再開する。

「だからさ。俺はこの子達を差別しない。平等に叱って、平等に褒めて、平等に幸せになって欲しい」

「わたくしも賛成です。この子達にたくさんの愛情を注ぎましょう」

「おう、よろしくな」

「こちらこそ」

春川凜々が俺に託したたんぽぽの押し花は今でも大事に持ち歩いている。

いつかこの子達が大きくなって、これに興味を持ったら、家族間の差別のことを話して、お互いがお互いを大事な家族だって認識してもらいたい。

春川凜々。

お前は安心して空から見守っててくれ。

お前の分まで、大事な家族を幸せにしてみせるから。


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