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12話

 さて、夏休みが終わり学園祭の季節がやってきた。

 季節的には秋のはずだが、ここ数年の例に漏れず、真夏のように暑い。だが学校内の熱気も負けてはいない。

「凜々、どこ周る?」

「わたくしは一息入れられる喫茶店がいいです」

「あたしはどこでも」

 凜々と二人で楽しむつもりが、凍子と紅葉さんもついてきていた。

「……………」

 むすーと頬を膨らませている凜々。

 明らかに不機嫌だ。

「じゃあ紅葉さんのクラス行くかぁ」

「わたくしの、ですか?」

「はい、確かメイド喫茶でしたよね?」

「そう、ですね」

 歯切れが悪く、何故か目を泳がせている。

 何か悪いことでもあるのだろうか?

 というわけで俺たちは彼女のクラスへと向かったのだが。

「い、いらっしゃいませぇ……」

 男子生徒がメイド服を着ていた。

「紅葉さん?」

 ぎぎぎと紅葉さんの顔が背けられる。

「それがですね、メイド喫茶はメイド喫茶でも女装メイド喫茶なのです」

「どうしてこうなったの!?」

「さぁ、何故でしょうか?」

「どうでもいいけど、さっさと入るわよ」

 凍子が入店を促す。

「こちらの席へどうぞ」

 男子生徒が窓際の4人がけの席に案内する。

「「「……………」」」

「お前ら座らないのか?」

「「「健人(ちゃん)(さん)の隣がいい」」」

 凜々と凍子はまだわかるとして紅葉さんまでどういうつもりだ?

 とりあえず奥へと座る。

「「「最初はグー!」」」

 突然のじゃんけん大会。

「ふふふ」

 勝者は紅葉さん。

 凜々と凍子は渋々向いに座る。

「なぁ凍子?」

「何?」

「最近お前ら元気なくないか?」

「……………そんなことない……………」

 そんなことありそうだ。

「何か悩みがあるんなら話してくれないか?」

「話したところであたしに振り向いてくれないでしょ?」

「お前何言って……」

 ガタッ。凍子が立ち上がる。

「あんたたちで勝手に周ってて」

 スタスタと立ち去ってしまった。

「どうしたんだ?あいつ」

「さぁ?」

「………………」

 紅葉さんは立ち去った凍子をじっと見据えていた。

「良くないことが起きなければいいですが」

「何か言いました?」

「いいえ、何も」

 まぁ、1人になりたい時もあるよな。

 この時の俺は軽く考えていた。

「とりあえず、せっかくだし何か食うかぁ」

 メニューを開く。

 特性オムライス以上。

「あの、紅葉さん?どうしてオムライス限定なんですか?」

「さぁ?わたくしには分かりません」

「目が泳いでますよー?」

「健人ちゃん文句多いよ?」

「俺か?俺が悪いのか?」

 まぁ、他に択がないならしょうがない。


「強烈だったな……」

「うん……」

 食後、俺たちは気持ち悪さを抑えていた。

 だって強面で細マッチョの萌え萌えきゅんを頂いたんだもん。

 上手く表現できないけど、うん、やばかった。

 そして何故か凜々と紅葉さんは俺の腕に自身の腕を左右から絡めていた。

「お、健人ちゃん」

 3人でうげーとげんなりしていると聞きなれた声に呼ばれた。

「おー、雄一郎」

「どうした?3人とも気分悪そうだぞ」

「いや、その……うん、その……」

「あはは……紅葉のクラスにでも寄ったの?」

「そう、あれはやばかった」

「実は私たちも行ってきたんだよ」

 にしても平気そうだ。

「あれ?ところで凍子さんは?」

「一人でどっか行った」

「ふぅん、そっか。まぁ無理せずお互い楽しもうぜ」

「おう」

 そう言って明菜さんを連れて別れた。


 さて、学園祭といえばお化け屋敷だ。

 1-Cのプレートが掲げられた教室ではそれが催されていた。

 3人で扉をくぐると暗黒が支配していた。

 壁で通路が作られていて、その道に剃って進む。

「ひゃぁ!?」

 突然凜々が悲鳴をあげた。

「どうした?」

「今首筋にヒヤッとヌルッとしたものが当たった」

 バタン!

 不意に一部の壁が倒れて凝ったメイクをしたやつが現れた。

「ぎぃぃぃやぁぁぁぁ!」

 凜々が俺に抱きつくというかしがみついていた。

 そんなこんなでお化け屋敷を脱出した俺たち。

「紅葉さん平気そうでしたね」

「あれくらいなら平気です」

 カタカタと足と腕が震えていたことには触れない方がいいだろう。



「羊毛フェルト?」

 手芸部主催の出店では、ふわふわの羊毛フェルトが販売されていた。

 犬や猫などの動物が綺麗にもふもふで丸まっているデザインだ。

「可愛い」

「そうですわね」

 凜々はフクロウを気に入り、紅葉さんは馬を物欲しそうに眺めていた。

 値段はさほど高くない。

「2人分買ってやるよ」

「まぁ」

「いいの!?」

「その代わり後でジュース1本な」

「うん!」

「凜々さんがジュースならわたくしは何で代価を支払いましょうか?」

「別に深く考えなくていいよ」

 フクロウと馬、そして凍子用にライオンも購入。

「ありがとうございましたー」

 店番の生徒にお辞儀をして俺たちはその後も様々なところを回った。


 side???

「運命の選択が近づいています」

「運命の選択?」

「はい、選択次第で緑葉凜々さんが命を落とす可能性があります」

「なっ……!?」

「さて、星野雄一郎さん。あなたにできることは彼らの行く末を見守ることです。たとえ何があっても」

「それでも俺は………」

「許しません。あなたは既に工藤明菜さんを選びました。緑葉凜々さんを助けることは許しません。これは今村健人さんの物語です」

「………はい………」


 しっかし、凍子のやつどこいった?

「凍子が心配?」

 凜々が顔を覗き込んでくる。

 さすがにそろそろ探すかぁ。

「天野凍子さんなら屋上へ上がりましたよ」

 タイミングを見透かしたように神先生に声をかけられた。

「ありがとうございます」

「いえいえ気をつけてくださいね」

「?はい」

 なんのことか分からず頭に「?」マークがついた。

 だがなにか悩みがあるなら聞いてあげたい。

 それが友ってものだ。

 俺たちは屋上へと向かった。

「凍子!」

 屋上の柵に手をかけていた凍子を呼ぶ。

「何?」

「お前最近変だぞ」

「そりゃあそうよ。想い人は振り向いてくれないで、他にも女が増えているんですもの」

「わたくしのことですか?」

「そうよ!あたしは前世から健人が好きだったのに健人は凜々のことしか頭になかった!終いにはあたしを除け者にして!」

「弁論大会のことか?」

「そうよ、あたしにも声をかけて欲しかった………!」

「いや、そのことは謝るけど、そこまで怒ることか?」

「そう、健人は悪くない。悪いのはこいつらよ!」

「言いがかりはやめて貰えませんか?」

「その態度が腹立つのよ!」

 凍子はポケットから果物ナイフを取り出し、凜々へと襲いかかった。


 凍子を止める

 呆然と見守る

 凜々を助ける

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