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1話

この作品は「まるでアドベンチャーゲームですね」の続編となります。

まだお読みになっていない方はそちらからご覧下さい

 

「被告、天野冬子さん。あなたの裁判を始めます」

「いや、ここどこですか?真っ暗で何も無い。けど、あなたと私の姿は認識できる。それにあなたは何者ですか?」

「申し遅れました。私は全知全能の神。気軽に全ちゃんとお呼びください」

「電池専用の神?」

「誰がレトロケータイゲーム機ですか」

「アド○ンスやゲーム○ーイがレトロゲームって呼ばれるって複雑ですね」

「さて、被告人、あなたに質問があります」

「質問?」

「あなたは叢雲健人さんのことをどう想っていましたか?」

「……え?それ答えないとダメ?」

「はい。あなたは死刑になり、この空間に導かれました。返答次第では、あなたを転生されられます。今度こそ叢雲健人さんと共に人生を歩みたくないですか?」

「……好きでした。最初はあいつの幸せを奪えた。それだけで満足でした。

 けど、記憶を塗り替えられても彼は私に優しく接してくれました。本当はあの時告白した相手は私じゃない。そう気づいていたはず。

 でも恋人としてたくさんの幸せを与えてくれたのは事実です。

 あの両親との生活は精神的にすごく辛くて、でも彼といる時間はすごく幸せでした。刺し殺したこともすごく後悔しています。

 もしもう一度彼と時間を過ごせるなら、今度こそ2人で幸せになりたい」

「分かりました。あなたの想い、しかと受け取りました。次の生では彼らを手にかけないと約束してくださるできますか」

「もしまた殺したら?」

「あなたの頭をボーンと吹き飛ばします」

「怖っ!」

「それでは彼らと同じ次元、同じ時間軸での第2の人生に幸あれ」

 パーッと光が私を包むと同時に意識が途切れた。

「あなたも、彼らのこと頼みましたよ」

「はい」

 意識が途切れる直前に神様と誰かの声が聞こえたのは気のせいかどうかは定かではない。



「けーんっと、おはよう♪」

「おう、おはよう」

 朝、登校中に幼なじみの従姉妹である天野凍子(あまのとうこ)が俺に背後から挨拶をする。

 短い髪はボブカット。

 アホ毛がぴょこんと飛び出て犬のしっぽの如くフリフリと揺れる。

 季節は春。

 ゴールデンウィークが終わった辺り。俺たちは高校生になったばかりだ。

 連休が終わり、大型連休のテンションが抜けずにみんなだるそうにしている。

 あ、10歩くらい前を歩いてる人大きなあくびだな。

 春のはずだが、太陽君は張り切ってさんさんと空を照らしている。

 俺の首元がじんわり汗が滲んている感覚がする。

「でねでね、うちの犬が」

 身体に抱きつくほどじゃないが、密着される。

 柑橘系の匂いが鼻をくすぐり、思わずドキッとしてしまう。

 凍子がスマホの画面を見せて飼っている犬の写真を見せてくる。

「ふーん可愛いじゃん」

 平然を装っての返答。

「でしょでしょ♪」

 画面には大型犬とそれに抱きつく凍子の姿があった。

 2人で並んで通学路を歩きつつ、連休中何をしていたか報告しあっていた。

 たったった。

 背後から小走りで近づいてくる足音が鳴り響いた。

「健人ちゃーん!おっはっよーうっ!」

 その声に俺は笑顔で振り向く。

 彼女も満面の笑みを浮かべていた。ぴょこぴょこと跳ねるアホ毛。

 小走りで寄ってくるので腰まで届く長い髪がファサファサと踊っている

「おっ!凜々、おはよう!」

 緑葉凜々(みどりはりり)。俺の幼なじみだ。

「ねぇねぇ、連休中何してたの?」

「ゲームとアニメ三昧」

「相変わらずだねぇ」

「私も人の事言えないんだけどね」

「やっぱりか」

「やっぱりね」

 凜々が来て話は大いに盛り上がる。

 こいつと話してると思わず笑みがこぼれる。

 まるで年齢以上、共に過ごしていた感覚だ。

 でもこれ、長くは続かないんだよなぁ……。

「ちょっと、あんた!健人と先に話してたのはあたし!割り込みしないでくれる!?」

「はぁ!?健人ちゃんと話すのにあんたの許可が必要なの!?」

「そうよ!私が先に話してたんだから順番を守りなさい!」

 この2人は従姉妹なのだが、このように仲が悪く、顔を合わせるとすぐ喧嘩する。

「はぁ……」

 女子2人に板挟みにされてキーキー喚くこいつらは俺には止められない。

 もう諦めていた。



「健人、おはよう」

「おう、おはよう」

「健人ちゃん、おはよう」

「おう、おはようさん」

 教室に着くとクラスメイト達が俺に挨拶をする。

 横にくっついている2人はと言うと。

「だいたいあんた料理出来ないんだから、でしゃばらないでよ!」

「料理以外ならあんたよりできますー!」

「今は今度の親戚の集まりの時の料理の話してるの!話しそらさないで!」

「聞こえませーん」

「くっ……!」

 まだ喧嘩をしていた。

 いつの間にか論争は俺から、身内に集まりにシフトされていた。

「お前ら」

 少し怒気を含む。

「「はっはい!」」

 ビクッと2人は肩を震わす。

「喧嘩はこれまで。そしてクラスメイト諸君に挨拶」

「「あれ?もう教室?」」

 周りが見えてなかったらしい。

「みんなおはよーう」

「うん、おはよう」

 同じクラスで勉学に励む仲間たちと挨拶を交わす二人。

 よし、次だ。

「ちなみにお前ら、靴履き替えてないからな」

「「えっ!?嘘!?」」

 慌てて自分たちの足元に目線を落とす。

 足を包む靴は綺麗な上履きだ。

「健人ちゃんの嘘つき!」

「この甲斐性なし!」

「お前らが俺を挟んで喧嘩してたお返しだ。あと甲斐性なしは使う場面じゃないからな?」

「もーう、健人ちゃんのバカバカバカ!」

 ポスポスと肩を叩いてくる凜々。

 次の瞬間足の関節がカクンと折れた。

 不意なことで床に膝を着く。

「これぞ奥義、足カックン」

 ドヤ顔で凍子がつぶやく。

「はいはい、嘘ついて悪かったよ」

 すくっと立ち上がる。

 クスクス。

 クラス中から笑い声が俺たちに集中する。

 バカにしたものでは無い。微笑ましいものを見る笑いだ。

「ほんと、3人とも仲良いよねー」

「オレモオンナノコトイチャイチャシタイ……!」

「小さい頃から仲がいいんだよね?」

「コノウラミハラサズベキカ……!」

 なんか呪詛が混ざって聞こえるんですが、気のせいですか?

「「こいつと仲がいいとかありえない」」

 お互いが相手に人差し指を向ける。

 見事にハモってる辺り、息は合うんだよなぁ。

 俺の席は最後尾の入口から入って2番目。

 そして凜々は右側。つまり入口側だ。

 そして凍子は俺の左側。つまり3列目だ。

 なんで挟まれてるんでしょうねぇ……?

 ガラッとドアが勢いよく開く。

「皆の衆おっはよーうございまーす!」

 声高らかに挨拶をして教室に入室する。男が現れた。

「雄一郎君おはよう!」

「おっはよーう!工藤さん今日も綺麗だね」

「もう、褒めても何も出ないよ」

 照れくさそうに応対する工藤。まぁ、このクラスのひとりだ。

「雄一郎、おはよう。連休前に貸したアニメのブルーレイ見たか?」

「ああ!めちゃくちゃ面白かった!昼休みにでも語り合おうぜ!」

 みんなが雄一郎に話しかけてくる。

 星野雄一郎。

 このクラスの1番の人気者だ。

 親しみやすく、気が利く。そして口が上手い。

 さらにそこそこのイケメンだ。

 この要素で既にモテる。なんなら学校中のほとんどの女子男子問わず声をかけられる。

「緑葉さんおはよう」

「うん、雄一郎君おはよう」

「健人ちゃんもおはよう」

「お、おう、おは…よう」

 俺たち4人は小学生から一緒だった。のだが、俺は何故か雄一郎が苦手だ。

 何故だか分からないが。

「そして凍子さーん!おはようございます!」

「キモイ」

 雄一郎は昔から凍子に気があり、アタックを続けているが当の相手は、俺達には見せない凍えた視線を送る。

「健人ちゃん、振られた」

「まだ諦めるな」

「いい加減諦めて欲しい」

 応援する俺と対比で突っぱねる凍子。

「あたしは健人以外の男に興味無いの。あんたは工藤さんにでも乗り換えなさい」

「わ、私!?私は雄一郎君さえよければ……」

 俺を見る雄一郎。

 ササッと近づき耳打ちをする。

「なぁなぁ健人ちゃん、もしかしてフラグ立ってる?」

「もしかしなくても立ってるな。あんだけ褒めてれば向こうもその気になるだろ」

「そっかそっかー」

 ニマァと気持ち悪い笑みを浮かべる。

「けど俺には凍子さんがいるからなぁ」

「工藤さーん、こいつ浮気性なんでやめた方いいっすよー!」

「あはは……。私もよければって感じだから」

 苦笑で俺たちを見やる。

「けーんとちゃーん!?」

「実際凍子が好きなら凍子に振り向いて貰えるように努力しろ」

「あたしの気持ちは変わらないから」

 俺たちを見ずに答える雄一郎の想い人。

「恋って言うのは苦難があるから燃えるんだ!」

 両目から火がつき叫ぶ。

「工藤さーん、こいつあげる」

 いつの間にか取り出したスマホをポチポチいじりながら犠牲になる工藤さん。

「あはは……」

 何も言えなくなった犠牲者。

 キーンコーンカーンコーン。

 タイミングよく予鈴が学校中に鳴り響く。

 みんな自分の席に着く。

 テキトーに1限目の準備するかー。

「ところでさ」

「なんだよ」

 俺たちの2つ前の列の男子二人が会話を始める。

「田中先生今日から産休だろ?」

「まぁ、正式には連休始まってからだと思うが」

「俺さ、ここ来る前職員室寄ってどんな人か見てきたんだよ」

「ふーん。で?」

「めっちゃ美人でめっちゃ胸でかかった」

「「「マジか!?」」」

 クラス中のほとんどの男子がいっせいに叫ぶ。

 ちなみにほとんどというのは俺以外だ。

 つまり雄一郎も乗っかっていた。

 こいつ女好きだよなー。

「男子サイテー」

 女生徒の1人が毒を吐く。

「はい皆さん、静かにしなさい」

 ワイワイ盛り上がる男子たち。

 程なくして教頭先生がやってきた。

「さて、皆さんご存知だと思うが、今日からこのクラスの担任の田中先生は休みだ。新任の先生がしばらくこのクラスを受け持つことになる」

 ゴクリ。

 男子たちの喉が鳴る気がした。

「入りたまえ」

「失礼します」

 件の女先生が扉を開いて入ってくる。

 ビシッと着こなした黒いスーツに蒼白色の長い髪が特徴の女性。

 あれ?この先生どこかで見覚えが……。

「あー!」

 叫んだのは凍子だった。

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― 新着の感想 ―
簡潔な字の文でテンポが良いですね。 引き続き楽しませていただきます!
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