第3話 旅支度
前回までのあらすじ
ライラと一緒に人間界に行くことに決めた。
ぶっちゃけ早まったかなと思う部分はある。勝手に人間界に下りるのは重罪だし、もう戻っては来れないだろう。
でもそれ以上にここしばらく感じていなかったワクワクした気持ちのほうが大きかった。というわけで私達は早速準備に取り掛かかる。
「何持ってけばいいと思う?とりあえず服と錫杖と換金できそうなものと、どこに下りることになるかわからないし寝袋とかもいるか?」
「私は服と枕と剣持ったよ」
「いや、それだけ?」
「だってこれだけしか持ってきてないもん」
「あーそうだった。逆になんで枕持ってきたんだよ」
「私この枕じゃなきゃ寝れないんだよね」
「嘘つけさんざん学校で机に突っ伏して寝てただろ」
そんな会話をしながら荷造りをする。とはいっても私達天使は人間と違って食べる必要もないし、大体のことは魔法でなんとかなるのでそんなに持つものは無い。
「さて、荷造りはこれくらいでいいとして問題はどうやって下りるかだな」
そう、これが最大の問題だ。
というのも人間界と私達の暮らす天界の間にはとんでもない勢いで風が吹きすさぶ層がある。いかに羽を持っていて魔法の扱いにも長けた天使でも一瞬で吹っ飛ばされてもみくちゃにされるだろう。
神の使いとして行くときは神様が道を作ってくれるんだが、ここを自力で抜けようと思うと・・・
・・・
・・・
・・・どうしようやっぱり無理な気がしてきた
ちらりとライラの方を見ると彼女も難しい顔をして考え込んでいたが、やがていいこと思いついた!と言いたげな表情になる。
ちなみにライラがこういう顔をするときは7割くらいの確率で碌でもないことを言い出す。
若干警戒しつつも良いアイデアもないので「何かいい案ある?」と聞いてみると。「うん!」とドヤ顔で答えてくれる。
どうしよう、すごい不安になってきた。
そんな私の心中とは逆にライラは自信満々に話し始めた。
「風に飛ばされないようにするにはどうすればいいか、考えてみれば簡単なことだよ」
したり顔で諭すように言われイラッとする。落ち着け、落ち着け。怒るのはライラの案を聞いてからでも遅くはない。
「で、どうすればいいんだよ」
「それは・・・ズバリ、風に飛ばされないくらい重くなれば良い!」
それからライラは土魔術で大きな岩を作って身体にくくりつけて飛び降りれば暴風地帯は抜けれるはずだとドヤ顔で語ってくれた。
話し終わったライラは「どう?すごくない?」と言いたげにこっちを見てくるが私はため息をつきたくなる。
なんか聞いてただけなのにどっと疲れた。いや、碌でもないことなのは予想出来てたはず。それに発想自体は結構まともだし、もうひと工夫したら使えそうだ。
そんなことを考えつつ口を開く
「あのなライラ、それで暴風地帯を抜けたとしてそのあと岩をどうするつもりだ?」
「ん?普通に切り離せばいいんじゃないの?」
「もし落ちた先に人がいたらどうするんだ?」
そう言うとライラはハッとした顔になる。
「ごめん、そこまで考えてなかった」
「うん、そんなことだろうと思ってたしいいよ。それよりさ、安全に下に下りる方法を思いついたかもしれない」
とは言ってもそんなに難しい話じゃない。ライラの案を聞いて思いついたことだ。魔術で大きな岩を作り出すとこまではライラと一緒、ただそこで終わりではなく作った岩を限界まで圧縮する。
そしたら質量は変わらないままで小さくできるはずだ。
小さくしても重さは変わらないから下に人がいたら落ちた時に危ないが、小さくすれば魔法袋に入れることができる。
魔法袋、マジックアイテムの一種で見た目の数十倍から数百倍のものを入れることができる鞄だ。しかも中に入れたらものの重さも気にならなくなる。
1つ欠点があるとしたら鞄の口より大きなものは入れられないことだ。
どれくらいまで圧縮できるかは分からないが成功したら安全に人間界に降りることができる。
このことを話すとライラは目をキラキラさせて「すごい!すごい!」とはしゃいでた。
ライラの案のパクリみたいなものだかそんなに持ち上げられると嬉し・・・
「それにしても私の発想のおかげってことだよねっ、私ってば天才かも!」
・・・うん、ライラはこういう奴だって知ってた