第2話 ねぇ、人間界に行かない?
あの後とりあえずライラを家で匿うことにして、もう夜だったからそのまま寝た。
翌朝目を覚ますと隣でライラが寝てた、髪も明るいところで見てもしっかり黒かった。こうして、もしかしたら夢オチかもしれないという私の淡い期待は打ち砕かれたのだった。
ものすごく嫌だがこうなった以上現実を見るしかない。
まず、堕天使というのは基本的に神の敵として認識されている。つまり他の天使に見つかったら普通に殺される。なのでライラを見捨てるなんて選択肢は無い以上、私はライラの存在を隠し通さなくてはいけない。
考えただけで胃が痛くなりそうだ。
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と、まぁこういうことがあって現在外に出れないライラは暇を持て余して私に絡んでくる、こっちは暇じゃ無いのに。
というかこの子は自分の立場を理解してるのだろうか?しおらしい態度だったのは最初の1日、いや、あの日は夜だったから実質数時間だけだし、寝て起きたらいつものライラに戻ってた。まあいいんだけど、おとなしいライラとか逆に心配になるし。
「ねぇ、セレナちゃん」
そんなことを考えているとまたライラが話しかけてきた。そして
「人間界に行かない?」
唐突にそんなことを言った。
人間界…人間界?いや、いったん落ち着こう、うん。
人間界とは私たちが暮らす国のはるか下にある人間たちの暮らす世界のことだ。これはわかる。何なら神の使いとして何度か行ったこともある。でも人間界への干渉は神様の許可がない限り認められていない。
軽々しく行ける場所ではないのだ。
そう思う一方で、私はライラの提案に心を惹かれていた。今の暮らしに大きな不満があるわけではない。でも神によって完璧な調和の保たれたこの国は平和だが、退屈だった。パズルの最後に足りないピースがちょうど見つかったかのような気持ちになる。
私の顔には自然と笑みが浮かび気づけばうなずいていた。
「行こう、人間界」そう返事をすると、ライラは一瞬驚いたような顔をした後嬉しそうに笑った。