第7話:永遠の約束
勇気を出して尋ねると、彼は静かに頷いた。
「ああ。君は二つの人生を生きている。クラリス・フォンティーヌとしての今と、藤堂美咲としての過去を」
「じゃあ、これは本当に転生なのね。でも、どうして私があなたを知っていて、あなたも私を知っているの?」
湖面に映る二人の姿を見つめながら、ハインはゆっくりと口を開いた。
「永遠の約束——君は覚えていないが、私たちはかつて約束を交わした。その約束が、私たちを再び引き合わせた」
「どんな約束?」
「今はまだ言えない。全てを知れば、君は大きな選択を迫られることになる。今はただ…」
彼は言葉を切り、私の方を向いた。深紅の瞳が、まっすぐに私を見つめる。
「今は、クラリスとしての生を守ることだけを考えてほしい。王宮での立場を危うくしないように」
「でも、原作では私——クラリスは処刑されるわ」
「原作?」
「あなたたちの世界は、私が前世で作ったゲームの中の物語なの。その中で、クラリスは悪役として最後に処刑される運命だった」
ハインは少し考え込むように目を閉じた後、静かに言った。
「物語は、語り手が望むままに変えられる。君はこの世界に来た。それだけで、もう運命は変わり始めている」
「でも、どうすれば…」
「私が守る」
断言するような彼の声に、心臓が高鳴った。
「どうして私のためにそこまで?」
「君が特別だからだ」
彼の言葉は単純だったが、その瞳に宿る感情は複雑で深いものだった。長い時を経た想いが、そこには詰まっているように見えた。
「信じられないわ…」
「信じられなくても構わない。ただ、私の言うことだけは聞いてほしい。明後日の夜会は危険だ」
私は驚いて彼を見つめた。彼はどうして夜会のことを知っているのだろう?
「エリザベス王女に招待されたのでしょう?」
「…ええ」
「罠だ。彼女は君を陥れようとしている」
罠?エリザベス王女がなぜ私を陥れる?でも原作での展開を考えると、確かに夜会は危険かもしれない。このまま参加すれば、私を待っているのは——