表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/22

第5話:不思議な夢

あの日以来、私の夢にはハインが頻繁に現れるようになった。


現実では会っていないのに、夢の中では彼と長い会話を交わしている。まるで昔からの知り合いのように、自然な笑い声を交わし、お互いの考えを打ち明ける——そんな不思議な夢だ。


「クラリス様、お目覚めですか?」


朝の光と共に侍女長の声が部屋に響く。目を開けると、夢の余韻がまだ胸に残っていた。何を話していたのか、具体的な内容は思い出せない。けれど温かい感覚だけが心に残っている。


「ええ、起きるわ」


ベッドから体を起こしながら、私は思い返していた。あれから一週間。禁忌の森での魔王との奇妙な出会いは、まるで幻のようだった。


しかし、あの出会いは確かに現実だ。手の甲に触れた彼の唇の感触は、今でも鮮明に覚えている。


「何を考えているのですか?頬が赤いですよ」


鏡の前で髪を整えながら、侍女が私の顔を覗き込んでくる。


「なんでもないわ」


顔を背けながら答えたが、心の中ではもう決めていた。今日、また禁忌の森へ行くと。


朝食を済ませた後、書斎で公爵領の政務に目を通していると、執事がやってきた。


「クラリス様、エリザベス王女様から招待状が届いております」


受け取った手紙には、明後日の夜会への招待が記されていた。いつもより丁寧な言葉遣いで、何か重要な話があると匂わせる内容だ。


原作ではこの夜会で、エリザベスがクラリスの悪行を暴露する場面があった。でも今の私は原作のクラリスとは違う行動を取っている。だから大丈夫…のはずだ。


「返事を書いておいて」


心配を押し殺し、いつもの調子で執事に命じた。王女からの招待を断ることはできない。行くしかないのだ。


午後、私は馬車に乗り込み、またしても禁忌の森の近くまで足を運んだ。今回は誰にも気づかれないよう、使用人には別の用事があると告げている。


森の入り口に立つと、風の音だけが耳に入ってくる。不思議と恐怖は感じない。むしろ懐かしさを覚える場所だった。


「来ると思っていたよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ