最終話:二つの世界の調和
それから何年が過ぎたのだろう。
永遠の森には、美しい館が建てられた。そこには私とハインが暮らし、二つの国からの訪問者も時々訪れる。
森の魔力と共に生きる私たちは、普通の人間よりも長く生きることになるだろう。それは祝福でもあり、責任でもある。
「物語は続いているわ」
ある日の夕暮れ時、湖のほとりで私はつぶやいた。ハインは黙って頷き、私の肩に腕を回した。
「このまま永遠に、二つの世界の均衡を守っていける?」
「永遠に…か」
彼は空を見上げ、静かに言った。
「永遠という言葉は、簡単に口にすべきではない。だが、私たちの場合は違う」
「そうね。私たちは約束したもの」
「永遠の約束を」
私たちの胸元から、かすかに赤い光が漏れる。永遠の約束の証だ。創造主と被造物の境界を超え、二つの世界を繋ぐ絆。
「時には思うの…これは全て夢なのかって」
「夢だとしても構わない。永遠に覚めない夢なら」
そう言って、彼は私にキスをした。温かく、優しく、そして確かな現実感のあるキス。
私は目を閉じ、この瞬間を永遠に記憶にとどめようとした。
藤堂美咲は死んだ。でもクラリス・フォンティーヌとして生き続ける。その中には美咲の記憶、想い、魂が息づいている。二つの人生が一つになったように。
「ハイン…ありがとう」
「どういたしまして、私の創造主」
彼のからかうような口調に、私は微笑んだ。もはや創造主と被造物という関係ではない。私たちは対等な魂同士。永遠の約束によって結ばれた魂。
湖面に映る夕陽が、赤く輝いていた。まるで私たちの胸の中の永遠の約束の石のように。
「新しい物語の始まりね」
「ああ、そしてその物語は、永遠に続く」
私たちの物語は、ここからが本当の始まり。
創造主と被造物、二つの世界、そして永遠の約束。
それは単なるゲームのタイトルではなく、私たちの運命そのものだった。
## エピローグ:もう一つの現実
とある世界の病室。
モニターの音だけが静かに鳴り響く中、長い間眠っていた女性が、ゆっくりと目を開いた。
「…目を覚ましましたか?藤堂さん」
看護師の驚いた声が聞こえる。
「まさか…三年も昏睡状態だった方が…」
私…藤堂美咲は、混乱した。ここはどこ?私はクラリスではなかったのか?ハインは?
記憶が錯綜する。病室の天井を見つめながら、私はもう一つの世界での記憶を必死で思い出そうとした。
「藤堂さん、わかりますか?あなたは三年前に倒れて…」
三年?あれから三年経ったの?
私の意識は再び薄れていき、別の光景が浮かび上がる。湖のほとり、ハインとの別れの場面。
《私の魂の一部は元の世界に戻らなければならない》
《だが心配するな。私たちの約束は永遠だ》
《どちらの世界にいても、私たちは繋がっている》
ゆっくりと現実世界に意識を戻す。私の体は弱っているが、心は確かな希望で満ちていた。
看護師が呼んだ医師が駆けつける。彼らは私の状態を確認し、驚きの声を上げている。「奇跡的な回復」と。
病室の窓から見える空は、夕暮れで赤く染まっていた。そして窓辺に置かれた花瓶の中に、一輪の見たこともない青い花が活けられている。
誰が持ってきたのか尋ねると、看護師は首を傾げた。
「昨日から咲いていましたが…誰が持ってきたのかは…」
私は微笑んだ。答えはわかっていた。
ベッドに横たわりながら、私はポケットの中に手を入れた。そこには小さな赤い石があった。温かく、鼓動を打つような石。
「永遠の約束…」
唇から漏れた言葉は、夕暮れの病室に静かに響いた。
二つの世界で生きる一つの魂。それが私の運命。
そして、どちらの世界でも、永遠の約束は生き続ける。
創造主と被造物の愛の物語は、これからも続いていく——永遠に。
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