第21話:永遠の愛
「それにしても、魔王…いえ、ハイン様との関係は驚きだったわ」
エリザベスの言葉に、頬が熱くなるのを感じた。和平条約には、禁忌の森との共存の条項も含まれている。ハインは魔王としてではなく、森の守護者として公式に認められた。そして私は…彼の婚約者として。
「そうね…驚きだった」
「でも、幸せそうね」
エリザベスの笑顔は純粋だった。彼女からプレイヤーの意識が消え、本来の彼女が戻ってきたのだ。
「ええ、幸せよ」
式典の後、私は禁忌の森へと向かった。今では「禁忌」という名前も変わり、「永遠の森」と呼ばれるようになっていた。
森の中央にある青い湖のほとりで、ハインが待っていた。
「無事に終わったか?」
「ええ。これで正式に平和が訪れるわ」
彼の隣に座り、湖面に映る二人の姿を見つめた。
「まだ慣れないわ…全てが変わってしまって」
「後悔しているか?」
「いいえ。ただ…不思議な感覚なの」
ハインは静かに頷いた。
「二つの世界、二つの人生。それを抱えるのは簡単ではない」
「でも、それが私なの。藤堂美咲でありクラリス・フォンティーヌでもある私」
彼は優しく微笑み、私の手を取った。
「それが『永遠の約束』の真の意味だ。二つの世界を繋ぐ存在として、永遠に共にある約束」
「ハイン…あなたは後悔してない?魔王ではなくなって、力も弱まって…」
「後悔などない。私は君に出会うために生きてきた」
彼の言葉は純粋で、嘘偽りがなかった。
「『永遠の約束』は、ただの物語ではなかったのね」
「ただの物語などない。全ての物語は、どこかで現実になる」
彼の言葉に、心から共感した。シナリオライターだった私は、物語の力を信じていた。それが現実を変える力になると。
「これからどうなるのかしら?」
「それは君次第だ。この世界の創造主なのだから」
「もう、一人で決めたくないわ。これからは二人で決めましょう」
ハインは嬉しそうに頷き、私をそっと抱きしめた。
「では、一緒に新しい物語を紡いでいこう」
湖面に映る二人の姿が、水面の揺らめきと共に溶け合うように見えた。




